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第一部 妖精姫と忠犬従者
覚えることがたくさんあります
しおりを挟む香木の湯船の中でフランシスは姫を膝に乗せ、温かなお湯に浸かった。
姫はフランシスの胸にもたれ、目を瞑っている。
言葉がなくても睦み合った後の二人には、これまでにないような親密な雰囲気が流れていた。
「喉が渇いたでしょう?」
彼は浴室の壁に備え付けられた棚の上にある、小ぶりの水差しと杯に手を伸ばした。
冷たく冷やされた水には、柑橘系の果実のスライスが浮かべてある。
フランシスは杯に水を注ぐと、姫に渡さず自分の口に入れた。
(わたくしも、飲みたい。喉がカラカラなの)
いつもはユーリアを一番に優先している従者の、思いがけない行動に戸惑いながらじっと見つめる。
すると、フランシスは姫の唇に自身のそれを重ね、口移しで水を与えた。
親鳥から餌をもらう小鳥のように姫は喉を鳴らし、ほのかに柑橘系の果実の味がする冷たい水を飲み干す。
乾いた身体に沁みわたるような美味しい水を、二度、三度と与えられ、すっかり満足したユーリアは甘えるようにフランシスの胸に頭を擦りつけた。
「姫さま、お身体の具合はいかがですか?」
「だるいの。それに、脚の間に棒が挟まっているみたい」
「……痛みますか?」
心配そうに覗き込むフランシスに、「少し」と答える。
「あとでお薬を塗りましょうね。その前に子種を掻き出してしまいましょう。またさっきみたいに零れてしまうから」
湯船の中で立てた膝を開かれ、後ろから前に回されたフランシスの手がそっと花弁に触れる。
人差し指と中指が腫れぼったくなった蜜口の中にふつりと刺し込まれると、白濁と蜜に塗れた肉襞はぬるっと何の抵抗なく受け入れた。
フランシスは指をくの字に曲げて、中から外へと掻き出していく。
「ぁっ、は。ふ、ふぅ」
姫の顔は仰のき、口元がゆるんで瞳は焦点が合わなくなる。
羞恥に顔を染めながらも、自分の従者が掻き出しやすいようにと震えながら両の脚を開き、はくはくと息をしている姫の健気さに、フランシスは胸を突かれた。
こうして全幅の信頼を寄せ、身体をゆだねてくれる姫が愛しくて堪らない。
やがて蜜口から掻き出された白濁が、ゆらゆらとお湯の中に漂い始める。
「閨の学びはどうでしたか?」
「そうね……。思っていたのとは全然ちがった。あんな、あんな風になってしまうなんて」
ますます紅く染まる愛らしい姫の頬に、フランシスはキスを落とした。
「お父さまやお母さまも、お姉さま方も、みんな閨ではあんなことをしているのね。わたくし、全然、知らなかった。知らなかったの!」
ユーリアが瞳を潤ませ、頬に手を当てて恥ずかしそうにうつむいてから、フランシスを見上げる。彼は姫の煌めく緑柱石の瞳に吸い込まれてしまうかと思った。
「フランシスは、知っていたのね」
「知識はそれなりに。色々と本を読んだり……」
ごにょごにょと口ごもるフランシス。
「経験したのは姫さまと同じように、初めてですよ。閨の学びはまだまだ、これから覚えることがたくさんあります。少しずつ学んでいきましょう」
「……分かったわ。よろしくお願いね」
ユーリアは、ほっとして微笑んだ。
(あれでもう閨の練習は終わりだとフランシスに告げられたら、知らない街に一人で置き去りにされるみたいに、途方に暮れてしまうもの)
姫の純真さに感動しつつ、フランシスは満面の笑みを浮かべた。
「こちらこそ。よろしくお願いします、姫さま」
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