灼炎の転生魔女〜いじめられて自殺した私、異世界で炎の魔女の娘に転生しましたが、今度こそ強く生き抜きます!〜

銀鏡。

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五章 ラグルの呼び声

370.休む勇気

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 灼熱の砂の中、私たちはしばらく動けずにいた。
倒れ込んだノエルは、顔を上げたまま目を閉じている。横でサラが、静かに祈るような仕草で手を重ねていた。

私も水袋を握りしめながら、針が指す南の方角を見ていた。

「・・・アリア、どうする?」

 母が、私にだけ聞こえるくらいの声で問うた。
落ち着いているけれど、その目は真剣だった。娘の判断を、試すような眼差し。

迷う気持ちは、正直あった。
今なら、まだ太陽は空の高みにいる。ここからさらに進めば、少しでも距離を稼げるかもしれない。
でも──本当に、それでいいのだろうか。

「・・・体力、もうほとんど残ってないよね」

 私はポツリと呟いた。
ノエルも、サラも、そして私も、さっきの戦闘で魔力をかなり消耗していた。
母だけがほとんど無傷に見えるけれど、それも「そう見えるだけ」かもしれない。

「でも、今日のうちに少しでも進んでおきたい。針が、まだ南を・・・」

言いかけて、私は口を閉じた。

たしかに針は南を指している。けれど、焦る理由は本当にあるのだろうか?
目的地はまだ見えない。それについさっき、蜃気楼のような幻を見たばかりだ。今、無理をして倒れたら──もう前に進めなくなるかもしれない。

「・・・母さん。今日は、ここで休もう。もう少しでも進めるって思ってたけど・・・たぶん、今は休むべきだと思う」

 私の言葉に、母はふっと微笑んだ。

「そうね。ようやく、“判断”ができるようになったわね。アリア」

「えっ・・・?」

「昔のあなたなら、『まだ行ける』って言って、倒れるまで歩いてた。けど、今のあなたは違う。ちゃんと“旅”をしてるわ」

母の言葉に、私は少しだけ胸を張った。
背中に残る疲労は消えないけれど、気持ちの中で、何かが少しだけ軽くなる。

「じゃあ・・・ここで野営の準備をしましょう。日が沈むまでには、テントと火を用意したいわね」

 サラが立ち上がり、砂を払って笑顔を見せた。

「なら、私が火を起こします」

「私は水周りをやります。少しだけ、冷やしたいですから」

 ノエルも立ち上がった。疲れているはずなのに、目にはもう諦めの色はない。
みんながそれぞれに、小さくうなずいて動き出す。

砂漠の真ん中で、風が吹く。
熱をはらんだ風が、今日も私たちを試してくる。

でも──今の私たちは、前よりずっと強い。

 幻に惑わされることも、無理に進むこともせず、自分たちの足で立って、進むときは進み、止まるときは止まる。
それが旅というものなのだと、私は少しだけ理解できた気がした。

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