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五章 ラグルの呼び声
371.疲れた夜の、確かな灯
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夜が来た。
テントの外は、昼とはまるで別の世界だ。風は冷たく、砂は急速に熱を失っていく。
けれど──その静けさも、どこか遠くに感じた。
私は母とノエル、サラと共に、小さなテントの中に身を寄せていた。
薄いマットの上に座っているだけなのに、脚がじんわりと痛む。背中も重い。腕は、まだ力が入らない。
飛竜との戦いで魔力を消耗したというのもあるが、今日はそれだけではない。
朝の毒草の件もあって、体があまり流暢に動かず、結果として魔力をより使うことになったのだ。
「・・・アリアさん。スープ、飲みます?」
サラが、湯気の立つ小鍋をそっと差し出してくれる。中には乾燥野菜と保存肉の入った簡単なスープ。
香りはやさしい。でも、食欲は・・・ないわけじゃない。なのに、口を動かすのが面倒に思えるほど、体が重かった。
「・・・うん、ありがとう」
私は鍋を受け取り、少しだけすくって口に運ぶ。
ほんのり塩味と、香草の風味。
おいしい。けれど、ひとくちで、またスプーンを止めてしまう。
「・・・なんか、体がぜんぶ、砂みたいにバラバラになりそう」
ぽつりとこぼすと、ノエルが苦笑して、身体を横たえた。
「わかる。お腹空いてるのに、動けない感じ。・・・たぶん、魔力と体力、両方すっからかん」
「今日は、本当によく耐えた方よ。あなたたち、倒れなかっただけでも立派」
母が毛布をかぶりながら言う。
落ち着いた声だけど、その顔も少し青白い。砂漠の太陽は、誰からも容赦なく体力を奪っていく。
「ねえアリア、明日・・・ちゃんと、起きられるかな」
「・・・起きるしか、ないよね」
ノエルの問いに、私はそう答えるしかなかった。
テントの外では、風が砂を撫でる音がしていた。
それは、遠い昔の祈りのように静かで、どこか哀しかった。
暖かいものも、水も、寝床もある。
それなのに、私たちは、ただ静かに沈黙していた。
旅は、戦いや危機だけが辛いわけじゃない。
何も起きていない夜でさえ、こうして、心を押しつぶすように重くなる。
──けれど。
「・・・それでも、まだ針は南を指してる」
私は、横に置いてある小さなコンパスを見て、そう呟いた。
「うん。きっと、もうすぐだよ」
ノエルが目を閉じたままそう返す。 夢の中で、何かを信じているような声だった。
「明日も、きっと歩けます。歩いて、必ず見つけましょう・・・幻じゃない、本当の塔を」
サラの声は、どこか祈るようだった。
そしてその祈りが、眠りの中へ私を導いていく。
私は目を閉じ、しばらく風の音に耳を澄ませた。
砂漠の夜は、果てしなく静かで、そして深い。
それでも、朝は来る。
たとえ疲れていても、眠れなくても──明日はまた、歩き出すんだ。
テントの外は、昼とはまるで別の世界だ。風は冷たく、砂は急速に熱を失っていく。
けれど──その静けさも、どこか遠くに感じた。
私は母とノエル、サラと共に、小さなテントの中に身を寄せていた。
薄いマットの上に座っているだけなのに、脚がじんわりと痛む。背中も重い。腕は、まだ力が入らない。
飛竜との戦いで魔力を消耗したというのもあるが、今日はそれだけではない。
朝の毒草の件もあって、体があまり流暢に動かず、結果として魔力をより使うことになったのだ。
「・・・アリアさん。スープ、飲みます?」
サラが、湯気の立つ小鍋をそっと差し出してくれる。中には乾燥野菜と保存肉の入った簡単なスープ。
香りはやさしい。でも、食欲は・・・ないわけじゃない。なのに、口を動かすのが面倒に思えるほど、体が重かった。
「・・・うん、ありがとう」
私は鍋を受け取り、少しだけすくって口に運ぶ。
ほんのり塩味と、香草の風味。
おいしい。けれど、ひとくちで、またスプーンを止めてしまう。
「・・・なんか、体がぜんぶ、砂みたいにバラバラになりそう」
ぽつりとこぼすと、ノエルが苦笑して、身体を横たえた。
「わかる。お腹空いてるのに、動けない感じ。・・・たぶん、魔力と体力、両方すっからかん」
「今日は、本当によく耐えた方よ。あなたたち、倒れなかっただけでも立派」
母が毛布をかぶりながら言う。
落ち着いた声だけど、その顔も少し青白い。砂漠の太陽は、誰からも容赦なく体力を奪っていく。
「ねえアリア、明日・・・ちゃんと、起きられるかな」
「・・・起きるしか、ないよね」
ノエルの問いに、私はそう答えるしかなかった。
テントの外では、風が砂を撫でる音がしていた。
それは、遠い昔の祈りのように静かで、どこか哀しかった。
暖かいものも、水も、寝床もある。
それなのに、私たちは、ただ静かに沈黙していた。
旅は、戦いや危機だけが辛いわけじゃない。
何も起きていない夜でさえ、こうして、心を押しつぶすように重くなる。
──けれど。
「・・・それでも、まだ針は南を指してる」
私は、横に置いてある小さなコンパスを見て、そう呟いた。
「うん。きっと、もうすぐだよ」
ノエルが目を閉じたままそう返す。 夢の中で、何かを信じているような声だった。
「明日も、きっと歩けます。歩いて、必ず見つけましょう・・・幻じゃない、本当の塔を」
サラの声は、どこか祈るようだった。
そしてその祈りが、眠りの中へ私を導いていく。
私は目を閉じ、しばらく風の音に耳を澄ませた。
砂漠の夜は、果てしなく静かで、そして深い。
それでも、朝は来る。
たとえ疲れていても、眠れなくても──明日はまた、歩き出すんだ。
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