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五章 ラグルの呼び声
417.護送の前夜
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護送を引き受けた私たちは、その日のうちに準備を進めることになった。
工房の裏手にある倉庫では、すでに積み込みの作業が始まっていた。整然と折り畳まれた布の束が次々と運び出され、頑丈な木箱に詰められていく。
赤、青、緑、紫──蓋を閉じる前にちらりと見える色が、まるで宝石の輝きのようだった。
「これを運ぶのか・・・そりゃ、盗賊も狙うわけね」
ノエルが腕を組み、少し険しい顔をする。
「でも、盗ませるわけにはいかないですよね。こんなにきれいな布なんですし、何より・・・これがゼスメリアの制服になるんですから」
サラは布の端をそっと撫で、決意を込めるように目を細めた。
船頭の男が私たちに声をかける。
「出発は明日の朝一番になります・・・夜の川は、危ないので。今夜はここで休んで、準備を整えてください」
「護衛は、私たち以外にはいるの?」
母が尋ねると、船頭は首を振った。
「残念ながら、皆さんだけです。・・・でも、それで十分だと信じていますよ」
私は小さく息を吐いた。
荷を守るというか、「特定の対象を防衛する」というのはゼスメリアの授業でやった以来だ。
あの時から感じていたが、決して簡単な任務ではない。だが──そのぶん、責任の重さが胸の奥に火を灯していた。
工房の若者たちは、船に積み込む箱の縄を締め直し、杭に帆布をかけて雨露を防いでいた。
ひとつひとつの動作が真剣で、布がこの村の命そのものであることを物語っていた。
「・・・アリア。私たちも、心の準備はしておいたほうがいいと思う」
ノエルが囁くように言い、私は頷いた。
「ええ。明日の川は、少し荒れそうな気がする」
ふと思い出したが、ノエルもまた、ゼスメリア時代に対象防衛の授業で苦戦していたことがあった。
彼女は覚えているかわからないが、私はしっかりと覚えている・・・5年生の、夏のことだった。
その夜、私たちは村の宿に泊まった。
窓の外では、川風にはためく布が月明かりを受け、揺れながら夜空に色を描いていた。
──護送の旅。
ただの観光ではない、緊張の冒険が、明日から始まる。
「しっかり休んでね。寝不足で荷物を守れなかった、なんてことにならないように」
母にそう言われたが、正直私は言われるまでもなく、もう寝るつもりでいた。
「盗賊か・・・どんなやつらなんだろう」
「学院の授業で、やりましたよね?単に武器で武装していることもあれば、魔法使いであることもあるって・・・」
「そうだったね。まあ私たちなら、大丈夫だとは思うけど。セリエナ様もいるんだし」
サラとノエルは、そんな話をしていた。
ちなみにサラの言う通り、盗賊についてもゼスメリアの授業で学んだ。
盗賊は普通の武器の他、魔導具で武装していたり、そもそも武器を使わない魔法使いであったりするという。
大半の盗賊は、貧困層や犯罪者の落ちぶれた姿だが、稀に富裕層が盗賊になっていることもある・・・とも聞いた覚えがある。
だが、なぜ富裕層が盗賊になる必要があるのだろう。
そこまでは学院で詳しく教わらなかったし、当時の私も調べようとはしなかったが、今になって考えるとすごく気になる。
考えてもわからないので、後で調べよう。
そう考えながら、眠りについた。
工房の裏手にある倉庫では、すでに積み込みの作業が始まっていた。整然と折り畳まれた布の束が次々と運び出され、頑丈な木箱に詰められていく。
赤、青、緑、紫──蓋を閉じる前にちらりと見える色が、まるで宝石の輝きのようだった。
「これを運ぶのか・・・そりゃ、盗賊も狙うわけね」
ノエルが腕を組み、少し険しい顔をする。
「でも、盗ませるわけにはいかないですよね。こんなにきれいな布なんですし、何より・・・これがゼスメリアの制服になるんですから」
サラは布の端をそっと撫で、決意を込めるように目を細めた。
船頭の男が私たちに声をかける。
「出発は明日の朝一番になります・・・夜の川は、危ないので。今夜はここで休んで、準備を整えてください」
「護衛は、私たち以外にはいるの?」
母が尋ねると、船頭は首を振った。
「残念ながら、皆さんだけです。・・・でも、それで十分だと信じていますよ」
私は小さく息を吐いた。
荷を守るというか、「特定の対象を防衛する」というのはゼスメリアの授業でやった以来だ。
あの時から感じていたが、決して簡単な任務ではない。だが──そのぶん、責任の重さが胸の奥に火を灯していた。
工房の若者たちは、船に積み込む箱の縄を締め直し、杭に帆布をかけて雨露を防いでいた。
ひとつひとつの動作が真剣で、布がこの村の命そのものであることを物語っていた。
「・・・アリア。私たちも、心の準備はしておいたほうがいいと思う」
ノエルが囁くように言い、私は頷いた。
「ええ。明日の川は、少し荒れそうな気がする」
ふと思い出したが、ノエルもまた、ゼスメリア時代に対象防衛の授業で苦戦していたことがあった。
彼女は覚えているかわからないが、私はしっかりと覚えている・・・5年生の、夏のことだった。
その夜、私たちは村の宿に泊まった。
窓の外では、川風にはためく布が月明かりを受け、揺れながら夜空に色を描いていた。
──護送の旅。
ただの観光ではない、緊張の冒険が、明日から始まる。
「しっかり休んでね。寝不足で荷物を守れなかった、なんてことにならないように」
母にそう言われたが、正直私は言われるまでもなく、もう寝るつもりでいた。
「盗賊か・・・どんなやつらなんだろう」
「学院の授業で、やりましたよね?単に武器で武装していることもあれば、魔法使いであることもあるって・・・」
「そうだったね。まあ私たちなら、大丈夫だとは思うけど。セリエナ様もいるんだし」
サラとノエルは、そんな話をしていた。
ちなみにサラの言う通り、盗賊についてもゼスメリアの授業で学んだ。
盗賊は普通の武器の他、魔導具で武装していたり、そもそも武器を使わない魔法使いであったりするという。
大半の盗賊は、貧困層や犯罪者の落ちぶれた姿だが、稀に富裕層が盗賊になっていることもある・・・とも聞いた覚えがある。
だが、なぜ富裕層が盗賊になる必要があるのだろう。
そこまでは学院で詳しく教わらなかったし、当時の私も調べようとはしなかったが、今になって考えるとすごく気になる。
考えてもわからないので、後で調べよう。
そう考えながら、眠りについた。
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