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五章 ラグルの呼び声
422.魔槍の脅威
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川面に漂う小舟を前に、私は深呼吸して気持ちを整えた。
粗末な武器──鉈や刃こぼれした剣、あるいはただの棍棒。
学院で学んだ知識どおり、典型的な貧困層の盗賊だ。
「・・・大丈夫。対処は難しくない」
自分にそう言い聞かせ、仲間に視線を送る。
だが、その時。
「ほぉ、学のある嬢ちゃんみたいだな」
先頭の舟に立つ大柄な男が、にやりと口角を吊り上げた。
彼の腰には、ひときわ異様な光を放つ槍があった。
濡れた青鉄のような色合いの柄に、透きとおる水晶の穂先。
それを見た瞬間、胸がざわりと騒ぎ出す。
「・・・魔導具!?」
ノエルが鋭い声を上げる。
「正解だ」
男が槍を軽く掲げると、水面がびくりと震えた。
次の瞬間、周囲の川水が槍先に吸い寄せられるように集まり、細長い水刃となって空に伸び上がる。
「こいつで船を沈めるのは簡単だ。だが、荷物と女どもは無傷でいただきたい。だから──抵抗しないことだな」
水刃がぎらぎらと陽光を反射し、まるで鋭利な剣の群れのように揺れている。
粗末な武器しかない取り巻きと違い、彼だけが圧倒的な力を握っていた。
「・・・やっぱり一筋縄ではいかないか」
私は唇をかみ、結界にさらに魔力を注ぎ込む。
母は目を細め、静かに杖を構えた。
ノエルはすでに詠唱の構えを取り、サラは緊張で震えながらも必死に杖を握りしめている。
「来るわよ!」
その声と同時に、水刃がうなりを上げて襲いかかってきた。
轟音とともに、水刃が川面を裂き、こちらの船へと襲いかかる。
「アリア!」
母の声に応じ、私は即座に結界を展開した。
透明な半球が船を覆い、ぎりぎりのところで水刃を受け止める。
「・・・っ、重い!」
水の刃が結界に叩きつけられ、火花のような光が弾ける。
槍に集められた魔力は想像以上で、ただ防ぐだけでも体中の魔力が削られていくのがわかる。
正直、どんなに頑張っても厳しいだろう。
炎の結界で、水の攻撃を受け止めるのは難しい。
「アリア、なんとか持ちこたえて!・・・ノエルは、反撃を!」
母の声は冷静で、しかし確かな力を帯びていた。
「了解です!」
ノエルが詠唱を終えると同時に、杖の先から岩の塊のような弾が放たれた。
それは盗賊の舟めがけて飛び、木片と煙を散らして爆ぜる。
慌てふためく盗賊たちの叫びが響いた。
「サラ、援護を!」
母が鋭く指示する。
「は、はいっ!」
サラは震えながらも杖を掲げ、小さな炎の矢を放った。
それは大きな傷を与えるものではなかったが、敵の注意をそらし、ノエルの攻撃の隙を作る。
「いいわ、その調子よ!ノエルは火力を、アリアは結界を維持して!」
母の声が戦場を制し、みんなの動きが一つにまとまる。
しかし、先頭の大男は眉一つ動かさず、槍をさらに高く掲げた。
川面がぐらりと揺れ、今度は四方から渦を巻くように水柱が立ち上がる。
「まだまだ、こんんじゃ沈まねぇよ!」
水柱は蛇のようにうねり、結界を押し潰さんと迫る。
「・・・アリア、防御を強めて!ノエルは、右舷の舟を狙って!」
母の指示が飛ぶ。
「はい!」
私は歯を食いしばり、さらに魔力を注ぎ込む。
ノエルの撃ち出す岩の球が炸裂し、敵舟のひとつが横転する。
サラは必死に治癒の魔法を展開していた。
結界に跳ね返った水刃の飛沫で負傷した船頭の腕に光を当て、止血を施す。
「だ、大丈夫です・・・動かさないで!」
彼女の声は震えていたが、その手は確かに傷を癒していた。
私は結界を維持しながら、母の横顔を盗み見る。
冷静に指揮をとり、わずかな隙も逃さない──その姿に、不思議と胸が熱くなる。
「・・・負けられない」
私たちは、一人じゃない。
次の瞬間、水の魔導具が再びきらめき、より強大な水刃が生まれた。
大男の狙いは──今度こそ船そのもの。
「アリア!・・・全力で、受け止めて!ノエルは、準備を整えて!サラは・・・治癒の構えを!」
母の声が響き渡った。
粗末な武器──鉈や刃こぼれした剣、あるいはただの棍棒。
学院で学んだ知識どおり、典型的な貧困層の盗賊だ。
「・・・大丈夫。対処は難しくない」
自分にそう言い聞かせ、仲間に視線を送る。
だが、その時。
「ほぉ、学のある嬢ちゃんみたいだな」
先頭の舟に立つ大柄な男が、にやりと口角を吊り上げた。
彼の腰には、ひときわ異様な光を放つ槍があった。
濡れた青鉄のような色合いの柄に、透きとおる水晶の穂先。
それを見た瞬間、胸がざわりと騒ぎ出す。
「・・・魔導具!?」
ノエルが鋭い声を上げる。
「正解だ」
男が槍を軽く掲げると、水面がびくりと震えた。
次の瞬間、周囲の川水が槍先に吸い寄せられるように集まり、細長い水刃となって空に伸び上がる。
「こいつで船を沈めるのは簡単だ。だが、荷物と女どもは無傷でいただきたい。だから──抵抗しないことだな」
水刃がぎらぎらと陽光を反射し、まるで鋭利な剣の群れのように揺れている。
粗末な武器しかない取り巻きと違い、彼だけが圧倒的な力を握っていた。
「・・・やっぱり一筋縄ではいかないか」
私は唇をかみ、結界にさらに魔力を注ぎ込む。
母は目を細め、静かに杖を構えた。
ノエルはすでに詠唱の構えを取り、サラは緊張で震えながらも必死に杖を握りしめている。
「来るわよ!」
その声と同時に、水刃がうなりを上げて襲いかかってきた。
轟音とともに、水刃が川面を裂き、こちらの船へと襲いかかる。
「アリア!」
母の声に応じ、私は即座に結界を展開した。
透明な半球が船を覆い、ぎりぎりのところで水刃を受け止める。
「・・・っ、重い!」
水の刃が結界に叩きつけられ、火花のような光が弾ける。
槍に集められた魔力は想像以上で、ただ防ぐだけでも体中の魔力が削られていくのがわかる。
正直、どんなに頑張っても厳しいだろう。
炎の結界で、水の攻撃を受け止めるのは難しい。
「アリア、なんとか持ちこたえて!・・・ノエルは、反撃を!」
母の声は冷静で、しかし確かな力を帯びていた。
「了解です!」
ノエルが詠唱を終えると同時に、杖の先から岩の塊のような弾が放たれた。
それは盗賊の舟めがけて飛び、木片と煙を散らして爆ぜる。
慌てふためく盗賊たちの叫びが響いた。
「サラ、援護を!」
母が鋭く指示する。
「は、はいっ!」
サラは震えながらも杖を掲げ、小さな炎の矢を放った。
それは大きな傷を与えるものではなかったが、敵の注意をそらし、ノエルの攻撃の隙を作る。
「いいわ、その調子よ!ノエルは火力を、アリアは結界を維持して!」
母の声が戦場を制し、みんなの動きが一つにまとまる。
しかし、先頭の大男は眉一つ動かさず、槍をさらに高く掲げた。
川面がぐらりと揺れ、今度は四方から渦を巻くように水柱が立ち上がる。
「まだまだ、こんんじゃ沈まねぇよ!」
水柱は蛇のようにうねり、結界を押し潰さんと迫る。
「・・・アリア、防御を強めて!ノエルは、右舷の舟を狙って!」
母の指示が飛ぶ。
「はい!」
私は歯を食いしばり、さらに魔力を注ぎ込む。
ノエルの撃ち出す岩の球が炸裂し、敵舟のひとつが横転する。
サラは必死に治癒の魔法を展開していた。
結界に跳ね返った水刃の飛沫で負傷した船頭の腕に光を当て、止血を施す。
「だ、大丈夫です・・・動かさないで!」
彼女の声は震えていたが、その手は確かに傷を癒していた。
私は結界を維持しながら、母の横顔を盗み見る。
冷静に指揮をとり、わずかな隙も逃さない──その姿に、不思議と胸が熱くなる。
「・・・負けられない」
私たちは、一人じゃない。
次の瞬間、水の魔導具が再びきらめき、より強大な水刃が生まれた。
大男の狙いは──今度こそ船そのもの。
「アリア!・・・全力で、受け止めて!ノエルは、準備を整えて!サラは・・・治癒の構えを!」
母の声が響き渡った。
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