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六章 トーア、冷たき国
520.新雪に刻まれる予兆
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私たちは、しばらくフィアの部屋で過ごした。
時間はあっという間に過ぎていき、そして・・・気がつけば、夕方になっていた。
彼女に別れを告げ、宿へと向かった。
石畳の通りを抜けていくうちに、夜の冷たい風が頬を撫でる。雪の粒がちらちらと舞い、街の灯りに照らされては儚く溶けていった。
「今日は・・・長い一日でしたね」
サラがぽつりと呟く。けれど、その声はもう昼間のように重たくはなかった。
私は笑ってうなずく。
「うん。でも、きっと一歩進めたと思う」
宿に戻ると、温かい灯りが迎えてくれた。
木の香りが心地よいロビーを抜け、それぞれの部屋へと足を運ぶ。
部屋に入ると、ふわりとベッドの匂いがした。粗末ではあるけれど、安心できる空間だった。
窓の外には月が浮かび、解けかけの雪原を青白く照らしている。
私はベッドに腰を下ろし、今日の出来事を振り返った。
裁判のこと、サラの涙、母の言葉、フィアの笑顔──すべてが心に残っていた。
「・・・大丈夫。みんな、少しずつでも前に進んでる」
そう自分に言い聞かせるように、そっと目を閉じた。
そして、眠りに落ちる直前。
胸の奥で小さな炎が、静かに灯り続けているのを感じた。
それはきっと、まだ消えていない希望の証だった。
翌朝──。
窓の外から差し込む光に目を覚ますと、雪は止んでいて、街の屋根の上に白い絨毯のように積もっていた。昨夜の冷たい風はすっかり静まり、空気は澄んでいる。
身支度を整えて一階の食堂に降りると、すでに母とノエル、サラが席についていた。
「おはよう、アリア」
母が柔らかく笑う。
「よく眠れた?」
「うん、ぐっすり」
ノエルはパンを頬張りながら振り返ってきて、口の端に粉をつけたまま笑った。
「アリア、おそいよー!ほら、サラももう起きてるし、ちゃんと食べてるんだよ」
「もう・・・ノエルさんったら」
サラは小さく苦笑して、皿のスープに視線を落とす。その顔はまだ少し緊張しているけれど、昨日よりも柔らかく見えた。
そんな穏やかな空気の中で、宿の扉が勢いよく開いた。
振り向くと、城の兵士が二人立っていて、私たちを真っ直ぐに見つめていた。
「セリエナ・ベルナードご一行様で、間違いありませんね?」
兵士の声は厳かで、食堂のざわめきが一瞬で静まり返る。
「・・・フィア様がお呼びです。もう一度、城にお越しいただけないかと」
「・・・もう一度?」
思わず声に出すと、サラが小さく肩を震わせた。
母は立ち上がり、兵士に静かに頷く。
「わかった。支度を整え次第、行くわ」
兵士たちは敬礼し、そのまま去っていった。
食堂には再びざわめきが戻るけれど、私たちの席だけは静まり返っていた。
ノエルが首をかしげる。
「何だろう?また呼ばれるなんて。何か、あったのでしょうか」
「もしかしたら、昨日の件でまだ何かあるのかもしれません。・・・気になります」
サラは不安そうに視線を落とした。
私は深呼吸をして、拳を握る。
「どんな理由でも、行くしかないよ。フィアさんが呼んでるんだから」
胸の奥の炎が、再び揺らめき始めていた。
次に待っているのは、いったい何なのだろうか──。
時間はあっという間に過ぎていき、そして・・・気がつけば、夕方になっていた。
彼女に別れを告げ、宿へと向かった。
石畳の通りを抜けていくうちに、夜の冷たい風が頬を撫でる。雪の粒がちらちらと舞い、街の灯りに照らされては儚く溶けていった。
「今日は・・・長い一日でしたね」
サラがぽつりと呟く。けれど、その声はもう昼間のように重たくはなかった。
私は笑ってうなずく。
「うん。でも、きっと一歩進めたと思う」
宿に戻ると、温かい灯りが迎えてくれた。
木の香りが心地よいロビーを抜け、それぞれの部屋へと足を運ぶ。
部屋に入ると、ふわりとベッドの匂いがした。粗末ではあるけれど、安心できる空間だった。
窓の外には月が浮かび、解けかけの雪原を青白く照らしている。
私はベッドに腰を下ろし、今日の出来事を振り返った。
裁判のこと、サラの涙、母の言葉、フィアの笑顔──すべてが心に残っていた。
「・・・大丈夫。みんな、少しずつでも前に進んでる」
そう自分に言い聞かせるように、そっと目を閉じた。
そして、眠りに落ちる直前。
胸の奥で小さな炎が、静かに灯り続けているのを感じた。
それはきっと、まだ消えていない希望の証だった。
翌朝──。
窓の外から差し込む光に目を覚ますと、雪は止んでいて、街の屋根の上に白い絨毯のように積もっていた。昨夜の冷たい風はすっかり静まり、空気は澄んでいる。
身支度を整えて一階の食堂に降りると、すでに母とノエル、サラが席についていた。
「おはよう、アリア」
母が柔らかく笑う。
「よく眠れた?」
「うん、ぐっすり」
ノエルはパンを頬張りながら振り返ってきて、口の端に粉をつけたまま笑った。
「アリア、おそいよー!ほら、サラももう起きてるし、ちゃんと食べてるんだよ」
「もう・・・ノエルさんったら」
サラは小さく苦笑して、皿のスープに視線を落とす。その顔はまだ少し緊張しているけれど、昨日よりも柔らかく見えた。
そんな穏やかな空気の中で、宿の扉が勢いよく開いた。
振り向くと、城の兵士が二人立っていて、私たちを真っ直ぐに見つめていた。
「セリエナ・ベルナードご一行様で、間違いありませんね?」
兵士の声は厳かで、食堂のざわめきが一瞬で静まり返る。
「・・・フィア様がお呼びです。もう一度、城にお越しいただけないかと」
「・・・もう一度?」
思わず声に出すと、サラが小さく肩を震わせた。
母は立ち上がり、兵士に静かに頷く。
「わかった。支度を整え次第、行くわ」
兵士たちは敬礼し、そのまま去っていった。
食堂には再びざわめきが戻るけれど、私たちの席だけは静まり返っていた。
ノエルが首をかしげる。
「何だろう?また呼ばれるなんて。何か、あったのでしょうか」
「もしかしたら、昨日の件でまだ何かあるのかもしれません。・・・気になります」
サラは不安そうに視線を落とした。
私は深呼吸をして、拳を握る。
「どんな理由でも、行くしかないよ。フィアさんが呼んでるんだから」
胸の奥の炎が、再び揺らめき始めていた。
次に待っているのは、いったい何なのだろうか──。
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