灼炎の転生魔女〜いじめられて自殺した私、異世界で炎の魔女の娘に転生しましたが、今度こそ強く生き抜きます!〜

銀鏡。

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六章 トーア、冷たき国

574.吹雪の下の目

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 氷の扉がゆっくりと開いた瞬間、外の吹雪が止まった。
世界が、息をひそめたように静まる。

ヴァルナが前に出て、細く息を吐く。
その吐息すら、白く凍るほどの冷たさだった。

「封印は解けた。でも、何かしら・・・この感覚は」
彼女の声が、途中でかすれた。

 そのときだった。
「あ、あれは・・・!」
サラが、何かを見て驚いた。

遠く、雪の向こうに――ぼんやりと赤い光が浮かぶ。
最初は、雪に反射した松明の光かと思った。
けれど、それは違った。
複数の――目だった。

二つ、三つ、五つ。
ひとつずつ、こちらを向いている。

「・・・ 嘘、でしょ」
思わず息を呑む。

 これまでに出てきたものと同じように、人の形をしている。でも、その眼だけが異様に赤い。

それは、吹雪の中をゆらゆらと漂うように歩いてくる。
たいまつの火が、風に揺れながら血のように滲む。

「アリア、伏せて」

ヴァルナが小声で言う。私はすぐ、雪の斜面の影に身を沈めた。
氷の道の下――そこに、わずかな窪みがあった。

 冷たい雪が頬に触れる。
指先の感覚がどんどん奪われていくのに、心臓の鼓動だけがやけに鮮明だった。

(こっちに・・・来ないで・・・)

赤い目の者たちは、建物のほうへ向かっていた。
それでも、一人がふとこちらに顔を向けた瞬間、私は呼吸を止めた。

 視線が、重く刺さる。
まるで、心の奥を覗き込まれるみたいに。

――見つかる。

そう思った瞬間、ヴァルナの手が私の肩に触れた。
微かな冷気が伝わる。
彼女が放った氷霧の結界が、私たちの姿を覆い隠していく。

 足音がすぐそばを通り過ぎる。
ザクッ、ザクッ・・・という雪を踏みしめる音。
息をしてはいけない。心臓さえ、動かすのが怖い。

やがて――音が遠ざかっていった。

私はようやく、息を吐いた。
喉が痛い。冷気で凍りついたように。

「・・・あいつら、ここにもいたんだ。なんなんでしょう?」

「わからない。でも・・・少なくとも、もう普通の人間ではないことは確かね」
ヴァルナの瞳が、雪明かりを受けて淡く光っていた。

 その光が、なぜか怖かった。
人の気配が消えた荒原の中で、私たちは再び、暗闇へと足を踏み入れた。

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