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七章 ガロウの雷鳴
609.灰と紅の旗
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外へ出た瞬間、空気が一変した。
先ほどまで春の匂いがしていた通りが、今は土煙と焦げた匂いに包まれている。
遠くで誰かが叫び、馬が暴れ、子どもを抱えて走る女の人の姿が見えた。
「な、何が起きてるの!?」
ノエルが声を上げる。
「わかりません・・・でも、ただごとじゃなさそうです!」
サラが顔を青くして言った。
私たちはとにかく、里の入り口のほうへと走った。
踏みしめる石畳の下から、震動のようなものが伝わってくる。
・・・地響きだ。まるで、山が怒っているような低い唸り。
門の近くでは、兵たちが慌ただしく槍を構えていた。
彼らの表情は恐怖に染まり、誰もが互いに何かを怒鳴り合っている。
「敵襲か・・・!?」
「まさか!まだこの辺までは来てないはずだ!」
「北からの斥候が来た!・・・地下洞窟を抜けてきたらしい!」
門の上の見張り台に上ると、母が短く息を呑んだ。
私もその視線を追って――凍りついた。
遠くの丘の向こう。
朝霧の中を、黒い影の列がゆっくりと進んでくる。
それは人の群れ・・・いや、鎧を着た兵たちだった。
槍の先に掲げられた旗が風にはためく。
その色は、深い灰と紅の二色。
なんとなく、北ガロウ軍のものだとわかった。
「もう、ここまで来てるの・・・!?」
サラが震える声で言う。
「みたいね。・・・国境には防衛線があったと思うけど、もう破られたのかもしれないわ」
母の声が低く響く。
「里の人たちを避難させましょう!子どもや老人を優先して!」
「はいっ!」
ノエルがすぐさま駆け出す。
その背中を見送りながら、私は門の外を睨みつけた。
胸の奥で、何かがじわりと熱を帯びていく。
怒りとも、不安ともつかない、混ざり合った感情。
ついさっきまで笑っていた人たちが、悲鳴を上げて逃げまどっている。
「・・・母さん、どうする?戦う?」
母は静かに答えた。
「いいえ。まだ、状況を見極めましょう。でも、もし里に火が入るのなら──私たちが止める」
その言葉に、私はうなずいた。
風が強くなり、髪が舞う。
朝の光が次第に霞んでいく中で、里の鐘が再び鳴り響いた。
それは、戦の始まりを告げる音だった。
先ほどまで春の匂いがしていた通りが、今は土煙と焦げた匂いに包まれている。
遠くで誰かが叫び、馬が暴れ、子どもを抱えて走る女の人の姿が見えた。
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ノエルが声を上げる。
「わかりません・・・でも、ただごとじゃなさそうです!」
サラが顔を青くして言った。
私たちはとにかく、里の入り口のほうへと走った。
踏みしめる石畳の下から、震動のようなものが伝わってくる。
・・・地響きだ。まるで、山が怒っているような低い唸り。
門の近くでは、兵たちが慌ただしく槍を構えていた。
彼らの表情は恐怖に染まり、誰もが互いに何かを怒鳴り合っている。
「敵襲か・・・!?」
「まさか!まだこの辺までは来てないはずだ!」
「北からの斥候が来た!・・・地下洞窟を抜けてきたらしい!」
門の上の見張り台に上ると、母が短く息を呑んだ。
私もその視線を追って――凍りついた。
遠くの丘の向こう。
朝霧の中を、黒い影の列がゆっくりと進んでくる。
それは人の群れ・・・いや、鎧を着た兵たちだった。
槍の先に掲げられた旗が風にはためく。
その色は、深い灰と紅の二色。
なんとなく、北ガロウ軍のものだとわかった。
「もう、ここまで来てるの・・・!?」
サラが震える声で言う。
「みたいね。・・・国境には防衛線があったと思うけど、もう破られたのかもしれないわ」
母の声が低く響く。
「里の人たちを避難させましょう!子どもや老人を優先して!」
「はいっ!」
ノエルがすぐさま駆け出す。
その背中を見送りながら、私は門の外を睨みつけた。
胸の奥で、何かがじわりと熱を帯びていく。
怒りとも、不安ともつかない、混ざり合った感情。
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「・・・母さん、どうする?戦う?」
母は静かに答えた。
「いいえ。まだ、状況を見極めましょう。でも、もし里に火が入るのなら──私たちが止める」
その言葉に、私はうなずいた。
風が強くなり、髪が舞う。
朝の光が次第に霞んでいく中で、里の鐘が再び鳴り響いた。
それは、戦の始まりを告げる音だった。
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