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七章 ガロウの雷鳴
643.月下の塔
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「あら、もうこんな時間だわ。・・・申し訳ないけど、話の続きは明日にしてくれる?私、いろいろとしなきゃないことがあるの」
「あ、そうなんですか?わかりました」
「ごめんね。あなたたちの部屋は、もう用意させてあるから」
そう言うとリゼは立ち上がり、部屋の奥の階段を指差した。
この塔は、外観からは想像できないほどに内部が広い。
壁には、淡く黄色い光を放つ結晶灯が並んでいる。
天井まで伸びる大理石の柱が並ぶ廊下は荘厳で、塔というより古い神殿のような静けさがあった。
「それにしても、この塔・・・なんだか不思議な感じがします」
ノエルが呟いた。
「この塔は、建物自体が特殊な魔力を持っているからね」
「え、そうなんですか?」
「そうよ。・・・そもそもこの塔に入ってきた時、何か不思議に思わなかった?」
そう言われて、私たちは顔を見合わせた。
「そう言えば・・・入ってすぐに部屋があるのは不思議だな、と思いました」
「でしょう?この塔はね、扉を開けるとその時に必要な部屋が出てくるようになっているの」
「必要な部屋・・・ってことは、もしかして」
リゼは頷き、階段の先にある扉を開いた。
暖炉の柔らかな炎がゆらゆらと揺れる。
客室は四人分の寝台と簡素な調度品が置かれた落ち着いた空間で、窓からはアウリンの街並みが見えた。
「長旅で疲れたでしょう?ゆっくり休んで。明日、改めて話をしましょう」
リゼはそう言って、静かに扉を閉めていった。
母はすぐにベッドに腰を下ろし、ノエルは「ふわぁ・・・久しぶりの柔らかいベッドだぁ」と言って寝転がった。
サラは小さく笑って、「なんだか、こういう所って落ち着きますね」と呟いた。
けれど、私はどうしても眠れなかった。
窓の外を吹き抜ける風の音が、妙に胸に引っかかる。
リゼの話の中で、何かまだ語られていないものがあるような・・・そんな気がしてならなかった。
――カイル、と言ったか。
リゼの弟の名を思い出すたび、胸の奥に小さなざらつきが残る。
リゼの涙は、果たして“弟への怒り”だったのか。それとも、“もう一度信じたい”という想いだったのか。
夜、私はそっとベッドを抜け出した。
暖炉の火を少し落とし、外套を羽織る。
扉を開けると、廊下には冷たい空気が漂っていた。
石造りの壁に、魔力の灯がほのかにゆらめく。塔の夜は静かで、外の風の音さえ遠い。
足音を忍ばせながら、私はゆっくりと歩き出した。
上の階へ続く階段を登りきり、扉を開くと――リゼの私室らしき部屋が出てきた。
そこを見て、なぜか自然と足が動いていた。
ふと窓の外を覗くと、遠くの空に雷のような光が瞬いた。
雲の向こうから、低く響く雷鳴。
この静寂の夜に似つかわしくない、不穏な音だった。
「・・・嫌な予感がする」
呟いた瞬間、部屋の奥から微かに誰かの声が聞こえた気がした。
それは祈りのようでもあり、泣き声のようでもあった。
私は思わず立ち止まり、息を潜める。
――まるで、この塔そのものが、何かを訴えているようだった。
「あ、そうなんですか?わかりました」
「ごめんね。あなたたちの部屋は、もう用意させてあるから」
そう言うとリゼは立ち上がり、部屋の奥の階段を指差した。
この塔は、外観からは想像できないほどに内部が広い。
壁には、淡く黄色い光を放つ結晶灯が並んでいる。
天井まで伸びる大理石の柱が並ぶ廊下は荘厳で、塔というより古い神殿のような静けさがあった。
「それにしても、この塔・・・なんだか不思議な感じがします」
ノエルが呟いた。
「この塔は、建物自体が特殊な魔力を持っているからね」
「え、そうなんですか?」
「そうよ。・・・そもそもこの塔に入ってきた時、何か不思議に思わなかった?」
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「そう言えば・・・入ってすぐに部屋があるのは不思議だな、と思いました」
「でしょう?この塔はね、扉を開けるとその時に必要な部屋が出てくるようになっているの」
「必要な部屋・・・ってことは、もしかして」
リゼは頷き、階段の先にある扉を開いた。
暖炉の柔らかな炎がゆらゆらと揺れる。
客室は四人分の寝台と簡素な調度品が置かれた落ち着いた空間で、窓からはアウリンの街並みが見えた。
「長旅で疲れたでしょう?ゆっくり休んで。明日、改めて話をしましょう」
リゼはそう言って、静かに扉を閉めていった。
母はすぐにベッドに腰を下ろし、ノエルは「ふわぁ・・・久しぶりの柔らかいベッドだぁ」と言って寝転がった。
サラは小さく笑って、「なんだか、こういう所って落ち着きますね」と呟いた。
けれど、私はどうしても眠れなかった。
窓の外を吹き抜ける風の音が、妙に胸に引っかかる。
リゼの話の中で、何かまだ語られていないものがあるような・・・そんな気がしてならなかった。
――カイル、と言ったか。
リゼの弟の名を思い出すたび、胸の奥に小さなざらつきが残る。
リゼの涙は、果たして“弟への怒り”だったのか。それとも、“もう一度信じたい”という想いだったのか。
夜、私はそっとベッドを抜け出した。
暖炉の火を少し落とし、外套を羽織る。
扉を開けると、廊下には冷たい空気が漂っていた。
石造りの壁に、魔力の灯がほのかにゆらめく。塔の夜は静かで、外の風の音さえ遠い。
足音を忍ばせながら、私はゆっくりと歩き出した。
上の階へ続く階段を登りきり、扉を開くと――リゼの私室らしき部屋が出てきた。
そこを見て、なぜか自然と足が動いていた。
ふと窓の外を覗くと、遠くの空に雷のような光が瞬いた。
雲の向こうから、低く響く雷鳴。
この静寂の夜に似つかわしくない、不穏な音だった。
「・・・嫌な予感がする」
呟いた瞬間、部屋の奥から微かに誰かの声が聞こえた気がした。
それは祈りのようでもあり、泣き声のようでもあった。
私は思わず立ち止まり、息を潜める。
――まるで、この塔そのものが、何かを訴えているようだった。
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