灼炎の転生魔女〜いじめられて自殺した私、異世界で炎の魔女の娘に転生しましたが、今度こそ強く生き抜きます!〜

銀鏡。

文字の大きさ
743 / 891
七章 ガロウの雷鳴

745.崩れた街

しおりを挟む
 街の中央へ向かう道は、人で溢れかえっていた。
泣き叫ぶ声、崩れた家屋の下から響く助けを求める声、瓦礫を必死にどかそうとする者たち――混乱が、そのまま形を持ったような光景だった。

「ノエル、あなたとサラは街の南側をお願い!私は、セリエナとアリアと中央広場を確保する!」

リゼが即座に指示を出す。

「了解です!・・・サラ、行こう!離れないでね!」
ノエルはサラの手をしっかり握り、駆け出していった。

 母は街全体を見渡し、低く息を吸う。
「・・・被害は想定以上ね。でも、まだ間に合うはず!」

「ええ!今から助けに向かえば、助かる命もあるはず!」

私は杖を構え、母たちと共に倒壊した家屋へと駆け寄った。
瓦礫の隙間から、かすかな呻き声が聞こえる。

「助けに来ました!・・・大丈夫です、今助けます!」

 慎重に魔力を流し、重なった木材と石を浮かせる。
一つ外すたびに空気が揺れ、埃が舞った。

瓦礫の中にいたのは、年配の男性だった。
額から血を流しているが、意識はある。

「よし、もう少しだ・・・!」

その時、地面がわずかに嫌な震え方をした。

「っ・・・また!?」

「いえ、違うわ・・・でも、二次被害が出るかもしれない!気をつけて!」
母の声が飛ぶ。

 私は歯を食いしばり、魔力の出力を調整する。
乱暴に動かせば、瓦礫が崩れてむしろ救出が困難になるだろう。

「もう少しです・・・動かないでください」

最後の石をどかすと、周囲から安堵の声が上がった。
誰かが男性を抱え、別の者が治療を始める。

「ありがとう・・・ありがとう・・・」
震える声が、何度も繰り返された。

 胸の奥がきゅっと締め付けられる。
さっきまで、私たちは井戸の奥を見ていた。けれど、今ここにあるのは確かな現実だ。

「アリア!こっちにも、埋まっている者がいる!手伝って!」
少し離れた場所から、リゼの声が響く。

「今行きます!」

 走り出した瞬間、足元の瓦礫の隙間に、見覚えのある布切れと同じ色合いの布が引っかかっているのが目に入った。

ほんの一瞬、足が止まる。
――偶然?それとも。

いや、後で考えよう。
自分にそう言い聞かせ、布から視線を切った。
今は、人命が最優先だ。

 街の上空で、警鐘が鳴り響く。
誰かが、必死に秩序を取り戻そうとしている。

その音を聞きながら、私は確信していた。
この地震は、ただの自然災害じゃない。
古井戸の沈黙と、この混乱は――どこかで、繋がっている。

けれど、それを追うのは今じゃない。

「まだだ・・・まだ、助けられる人がいる!」
私は叫び、再び瓦礫の山へと向かった。

 静かな闇は、地下に置いてきた。
今、私たちが立っているのは――壊れかけでも、確かに生きている世界だ。

そしてこの世界を守り、みんなを助けるために、私たちはここにいる。
私が、贖いとして生き直すために転生してきたのと同じように。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

処理中です...