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八章 アルディアに吹く風
915.終わりの見えない狩場
母と私は、ほとんど言葉を交わさずに動き続けた。
炙る。 構える。 投げる。
それを、ただ繰り返す。
赤熱したモリが水を裂き、照準の光に導かれて魔物の頭部へと吸い込まれていく。
命中するたびに水面が弾け、血が広がり、緑の影が一つ、また一つと沈んでいった。
「役割を分担しましょう!私がモリを炙る。アリアは、投げて!」
「はい!」
私はすぐに次のモリを受け取り、狙いを定める。
すでに腕は重く、呼吸は荒い。それでも、手は止めなかった。
私たちの目の前──船の後方では、魔物たちが怯む様子も見せず、次々と現れてくる。
一体倒せば、また別の影が水面を割る。
川の流れに紛れて、さらに奥から合流してきているのが分かった。
「キリがないな・・・」
思わず、そう漏らした。
「ええ」
母も同意する。
「この川は、彼らの住処であり狩場なのよ。私たちがそこを横切っているから、狙われるんだわ」
モリが、また一本魔物を貫く。
しかしその直後、別の影がすぐ後ろに現れる。
・・・終わりが、見えない。
「一体何匹いるのよ、もう・・・!」
焦りが胸の奥に広がる。
このままでは、いずれ体力も集中力も尽きる。
ふと、気づいた。
水面に浮かぶ血の匂い。それに引き寄せられるように、さらに遠くの影まで動き始めている。
「・・・母さん」
私は声を低くする。
「これ、倒せば倒すほど、集まってきてない?」
母は一瞬、視線を水面に走らせ――小さく頷いた。
「・・・みたいね。そう言えば、この手の魔物は血の匂いに集まってくるものがいたわ」
その時、船が再び大きく揺れた。
今度は、横からだ。
「っ・・・!」
船首のほうを見ると、ノエルは必死に舵を切っている。
船体が軋む音が響く。
「操舵が重い・・・!このままじゃ・・・!」
母が、歯を食いしばる。
「・・・持久戦は無理ね」
そして、きっぱりと言った。
「どこかで、この流れを断ち切らなきゃ」
私は次のモリを構えながら、水面を睨みつける。
襲い来る魔物を、いくら倒しても終わらない。
かといって、逃げられる見込みは薄い。
だが、ここで諦めれば命はない。
「・・・逃げるだけじゃ、だめなんだ」
その言葉は独り言のようでもあり、決意のようでもあった。
赤く染まりつつある川を背に、 私たちは次の一手を迫られていた。
とはいえ、することはこれまでと同じだ。
母がモリを炙り、私がそれを受け取り、魔物に向かって投げる。
もはや、余計なことは考えない。
機械のように、淡々と作業を行う。
自衛のため、生き延びるために。わ
炙る。 構える。 投げる。
それを、ただ繰り返す。
赤熱したモリが水を裂き、照準の光に導かれて魔物の頭部へと吸い込まれていく。
命中するたびに水面が弾け、血が広がり、緑の影が一つ、また一つと沈んでいった。
「役割を分担しましょう!私がモリを炙る。アリアは、投げて!」
「はい!」
私はすぐに次のモリを受け取り、狙いを定める。
すでに腕は重く、呼吸は荒い。それでも、手は止めなかった。
私たちの目の前──船の後方では、魔物たちが怯む様子も見せず、次々と現れてくる。
一体倒せば、また別の影が水面を割る。
川の流れに紛れて、さらに奥から合流してきているのが分かった。
「キリがないな・・・」
思わず、そう漏らした。
「ええ」
母も同意する。
「この川は、彼らの住処であり狩場なのよ。私たちがそこを横切っているから、狙われるんだわ」
モリが、また一本魔物を貫く。
しかしその直後、別の影がすぐ後ろに現れる。
・・・終わりが、見えない。
「一体何匹いるのよ、もう・・・!」
焦りが胸の奥に広がる。
このままでは、いずれ体力も集中力も尽きる。
ふと、気づいた。
水面に浮かぶ血の匂い。それに引き寄せられるように、さらに遠くの影まで動き始めている。
「・・・母さん」
私は声を低くする。
「これ、倒せば倒すほど、集まってきてない?」
母は一瞬、視線を水面に走らせ――小さく頷いた。
「・・・みたいね。そう言えば、この手の魔物は血の匂いに集まってくるものがいたわ」
その時、船が再び大きく揺れた。
今度は、横からだ。
「っ・・・!」
船首のほうを見ると、ノエルは必死に舵を切っている。
船体が軋む音が響く。
「操舵が重い・・・!このままじゃ・・・!」
母が、歯を食いしばる。
「・・・持久戦は無理ね」
そして、きっぱりと言った。
「どこかで、この流れを断ち切らなきゃ」
私は次のモリを構えながら、水面を睨みつける。
襲い来る魔物を、いくら倒しても終わらない。
かといって、逃げられる見込みは薄い。
だが、ここで諦めれば命はない。
「・・・逃げるだけじゃ、だめなんだ」
その言葉は独り言のようでもあり、決意のようでもあった。
赤く染まりつつある川を背に、 私たちは次の一手を迫られていた。
とはいえ、することはこれまでと同じだ。
母がモリを炙り、私がそれを受け取り、魔物に向かって投げる。
もはや、余計なことは考えない。
機械のように、淡々と作業を行う。
自衛のため、生き延びるために。わ
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