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二章 学院生活・前半
28.異界の門
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私は母・セリエナの言葉を聞きながら、心の中で深く息を吐いた。
「奴は、必ずまた帰ってくる」
その言葉の重みが、じわじわと胸にのしかかる。
——邪神ガラネルが復活する可能性。 そして、次は自分と母が標的になるかもしれないという未来。
邪神ガラネルの名しか知らないはずなのに、まるで前から知っている存在であるかのように感じる。
私は、セリエナ・ベルナード——『灼炎の女皇』の娘であり、その血を引く者。
それは誇らしいことではあるが、同時に強大な運命を背負うことも意味している。
「・・・私が、戦うことになるの?」
ぽつりと呟くと、母は静かに頷いた。
「ええ。あの時、私たちは確かにガラネルを封印した。けれど、奴は死んではいない。いつか、封印が解かれる時が来る。そしてその時には、私たち八大魔女も老いるか、あるいは・・・この世にはいないでしょう」
母の声は落ち着いていたが、その奥にある覚悟が伝わってくる。
「だからこそ、次の世代が必要なのよ。私たちの意志を継ぎ、世界を守る者が。——あなたは、その一人にならなくてはならない」
静寂が降りた。
王も、周囲の騎士たちも、ただ私の返答を待っている。
私は拳を握りしめた。
「・・・それが、私の宿命なんだね」
「そういうことだ」
王が厳かに頷く。
私は一度目を閉じ、息を整えた。 そして、ゆっくりと母を見上げる。
「・・・分かったよ、母さん。私、もっと強くなる。最強の魔女の娘として、恥じないように」
すると、母は柔らかく微笑んだ。
「・・・それでこそ、私の娘よ」
王は席を立ち、私を真っ直ぐ見つめた。
「アリアよ。君はゼスメリアに入学してから、まだ一年足らずだ。だが、最低限の必要なことは学んでおろう。・・・ここはひとつ、貴重な実戦の経験を得る機会を与えよう」
「実戦・・・?」
「そうだ」
王は静かに告げた。
「これより、君とセリエナ殿にはある任務を与える。『異界の門』の調査だ」
私は背筋が凍った。
「異界の門・・・!?」
ついさっき聞いたばかりの地名だったが、心の底から恐怖を感じる名でもあった。
他ならぬ、かつて邪神ガラネルが封印された場所。 そして、この世界で最も忌まわしき地の一つでもあると、私の中の何かが語る。
「まさか・・・封印が?」
「完全に解けたわけではない。だが、異変が起きている。——何者かが、ガラネルの復活を企てている可能性があるのだ」
私は息を呑んだ。 母も、同様だった。
「・・・私と母さんが、それを止めると?」
「もちろん、君とセリエナ殿だけではない。優秀な魔法騎士たちが同行する。しかし、これは君にとってはある種の試練だ。自分が、将来的に何を成すべきかを知る機会となるだろう」
王の言葉に、私は再び拳を握った。
ーー怖くないと言えば嘘になる。 否定しきれない不安と恐怖がこみ上げる。 でも、逃げるつもりはなかった。
私はかつて、辛い自分の人生から逃げた。
その結果、こうして転生してここにいる。
でもこれはきっと、自ら命を終わらせた私に対する罰だろう。 人生が嫌で自殺したのに、結果的にまた人生を送ることになっているのだから。
私は、かつての自分の行為が許されたとは思っていない。 だからこそ、精一杯贖いをするつもりでいる。
たとえ、どんなに苦しくて辛い人生になったとしても、必ず最後まで生き抜いてやる。
そう、固く誓っている。
「・・・分かりました。私、その任務を受けます」
王は満足げに頷く。
「よし。では、7日後に出発だ。詳細は後ほど伝える」
この決断が、私をどこへ導くのか。 それは、まだ誰にもわからない。
一週間後、王城の訓練場。
朝焼けが、石畳を金色に染めている。 私は深く息を吸い込み、杖を握りしめた。
「準備はできた?」
母——セリエナが私を見つめている。
その赤い髪が、朝日を浴びて燃えるように輝いていた。
「・・・はい」
短く返事をすると、母はわずかに微笑んだ。
「ならば、行きましょう」
私たちの後ろには、黒い軍馬にまたがる魔法騎士・・・王城直属の魔法使いの騎士たちが控えている。
皆、一様に鋭い眼差しで前方を見据えていた。
「それでは、出発だ。異界の門への道は険しい。慎重に行くぞ」
隊長らしき騎士が号令をかけると、隊列がゆっくりと動き出した。
私は馬に乗りながら、遠くの地平線を見つめる。 ——あの先に、何が待っているのだろう。
邪神ガラネルの封印は、本当にまだ無事なのか? そして、もし彼を復活させようとしている者がいるなら——
私は、その者たちと戦えるのだろうか?
まだ経験の足りない、未熟な魔女の私が。
母の隣に立ち、立ち向かう資格があるのだろうか?
不安が胸をよぎる。 けれど、もう迷わないと決めた。
「アリア」
母が私の名を呼ぶ。
「どんな敵が来ようとも、決して恐れないでね。あなたには、私の血が流れているのだから」
私は強く頷いた。
「・・・はい」
こうして、私たちの旅が始まった。 それが、ただの調査で終わるはずがないことを、私はまだ知らなかった——。
「奴は、必ずまた帰ってくる」
その言葉の重みが、じわじわと胸にのしかかる。
——邪神ガラネルが復活する可能性。 そして、次は自分と母が標的になるかもしれないという未来。
邪神ガラネルの名しか知らないはずなのに、まるで前から知っている存在であるかのように感じる。
私は、セリエナ・ベルナード——『灼炎の女皇』の娘であり、その血を引く者。
それは誇らしいことではあるが、同時に強大な運命を背負うことも意味している。
「・・・私が、戦うことになるの?」
ぽつりと呟くと、母は静かに頷いた。
「ええ。あの時、私たちは確かにガラネルを封印した。けれど、奴は死んではいない。いつか、封印が解かれる時が来る。そしてその時には、私たち八大魔女も老いるか、あるいは・・・この世にはいないでしょう」
母の声は落ち着いていたが、その奥にある覚悟が伝わってくる。
「だからこそ、次の世代が必要なのよ。私たちの意志を継ぎ、世界を守る者が。——あなたは、その一人にならなくてはならない」
静寂が降りた。
王も、周囲の騎士たちも、ただ私の返答を待っている。
私は拳を握りしめた。
「・・・それが、私の宿命なんだね」
「そういうことだ」
王が厳かに頷く。
私は一度目を閉じ、息を整えた。 そして、ゆっくりと母を見上げる。
「・・・分かったよ、母さん。私、もっと強くなる。最強の魔女の娘として、恥じないように」
すると、母は柔らかく微笑んだ。
「・・・それでこそ、私の娘よ」
王は席を立ち、私を真っ直ぐ見つめた。
「アリアよ。君はゼスメリアに入学してから、まだ一年足らずだ。だが、最低限の必要なことは学んでおろう。・・・ここはひとつ、貴重な実戦の経験を得る機会を与えよう」
「実戦・・・?」
「そうだ」
王は静かに告げた。
「これより、君とセリエナ殿にはある任務を与える。『異界の門』の調査だ」
私は背筋が凍った。
「異界の門・・・!?」
ついさっき聞いたばかりの地名だったが、心の底から恐怖を感じる名でもあった。
他ならぬ、かつて邪神ガラネルが封印された場所。 そして、この世界で最も忌まわしき地の一つでもあると、私の中の何かが語る。
「まさか・・・封印が?」
「完全に解けたわけではない。だが、異変が起きている。——何者かが、ガラネルの復活を企てている可能性があるのだ」
私は息を呑んだ。 母も、同様だった。
「・・・私と母さんが、それを止めると?」
「もちろん、君とセリエナ殿だけではない。優秀な魔法騎士たちが同行する。しかし、これは君にとってはある種の試練だ。自分が、将来的に何を成すべきかを知る機会となるだろう」
王の言葉に、私は再び拳を握った。
ーー怖くないと言えば嘘になる。 否定しきれない不安と恐怖がこみ上げる。 でも、逃げるつもりはなかった。
私はかつて、辛い自分の人生から逃げた。
その結果、こうして転生してここにいる。
でもこれはきっと、自ら命を終わらせた私に対する罰だろう。 人生が嫌で自殺したのに、結果的にまた人生を送ることになっているのだから。
私は、かつての自分の行為が許されたとは思っていない。 だからこそ、精一杯贖いをするつもりでいる。
たとえ、どんなに苦しくて辛い人生になったとしても、必ず最後まで生き抜いてやる。
そう、固く誓っている。
「・・・分かりました。私、その任務を受けます」
王は満足げに頷く。
「よし。では、7日後に出発だ。詳細は後ほど伝える」
この決断が、私をどこへ導くのか。 それは、まだ誰にもわからない。
一週間後、王城の訓練場。
朝焼けが、石畳を金色に染めている。 私は深く息を吸い込み、杖を握りしめた。
「準備はできた?」
母——セリエナが私を見つめている。
その赤い髪が、朝日を浴びて燃えるように輝いていた。
「・・・はい」
短く返事をすると、母はわずかに微笑んだ。
「ならば、行きましょう」
私たちの後ろには、黒い軍馬にまたがる魔法騎士・・・王城直属の魔法使いの騎士たちが控えている。
皆、一様に鋭い眼差しで前方を見据えていた。
「それでは、出発だ。異界の門への道は険しい。慎重に行くぞ」
隊長らしき騎士が号令をかけると、隊列がゆっくりと動き出した。
私は馬に乗りながら、遠くの地平線を見つめる。 ——あの先に、何が待っているのだろう。
邪神ガラネルの封印は、本当にまだ無事なのか? そして、もし彼を復活させようとしている者がいるなら——
私は、その者たちと戦えるのだろうか?
まだ経験の足りない、未熟な魔女の私が。
母の隣に立ち、立ち向かう資格があるのだろうか?
不安が胸をよぎる。 けれど、もう迷わないと決めた。
「アリア」
母が私の名を呼ぶ。
「どんな敵が来ようとも、決して恐れないでね。あなたには、私の血が流れているのだから」
私は強く頷いた。
「・・・はい」
こうして、私たちの旅が始まった。 それが、ただの調査で終わるはずがないことを、私はまだ知らなかった——。
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