灼炎の転生魔女〜いじめられて自殺した私、異世界で炎の魔女の娘に転生しましたが、今度こそ強く生き抜きます!〜

銀鏡。

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四章 ミフィアの青と水音

284.霧の向こうの都市

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 翌朝、夜露に濡れた草を踏みしめながら、私たちはふたたび東を目指した。

霧は、昨日よりも濃くなっていた。

木々の合間から差し込む朝日はほとんど霞み、道の先も、まるで白い幕が張られたように見えない。

 それでも、“導きの針”は確かに前を指している。
その針先が、次第に角度を下げるように、まるで「近づいてきている」と告げるかのように感じられた。

「・・・この霧、自然じゃない」

 ノエルがぽつりと呟く。彼女の目が、淡い光を放っていた。
地魔法の使い手が得意とする、『気配探知』の魔法を使っているようだ。

「人の気配も、魔物の気配も、ほとんど感じない。まるで──何かに遮断されているみたい」

「・・・?結界でも張ってあるんでしょうか?」

 サラが、杖に軽く手をかける。

母は首を振った。

「そうじゃない。もっと・・・自然と不自然の境目が曖昧になってる。そういう感じ」

霧の中で声が響きすぎたり、逆に近くの足音がほとんど聞こえなかったりする、奇妙な感覚。
“世界の輪郭”がぼやけている。そんな表現がぴったりだった。




 そして、昼を少し過ぎたころ。
前方の霧の中に、まるで夢の中の幻のように、古びた門の影が浮かび上がった。

「見えた。あれが、アスヴェルド・・・」

私がそう呟いたとき、風が一陣、霧の合間を吹き抜け、街の輪郭がぼんやりと現れた。

 かつて栄えていたはずの石造りの門。
それは半ば崩れ、片方の扉が壊れたまま、無人のようにぽっかりと開いていた。

門の先には、静まり返った都市の輪郭。

けれど──音がない。
人の声も、馬のいななきも、商人の掛け声も。

「・・・誰も、いない?」

私たちはゆっくりと門をくぐった。

 そこに広がっていたのは、静寂と霧に包まれた街。
かつて賑わっていたであろう市場は、骨組みだけが残り、屋台はほとんどが朽ちていた。

道端には、転がったままの荷車。
扉が半開きのままの家屋。
そして──人の姿がまるで見えない。

「まるで、時間が止まったみたいね」

 母がぽつりと呟いた。

私たちは互いに視線を交わし、頷き合う。

“導きの針”は、今も確かに光を放ち、この街の中心部──市庁舎のような、大きな建物を指し示していた。

私は一度、深く息を吸った。

「行こう。たぶん、そこに“魔寄せの石”がある」

 誰も異論は言わなかった。

私たちは足音を響かせぬよう静かに、しかし確かな足取りで、アスヴェルドの中心へと向かって歩き出した。

 ──そして、霧の向こうで、確かに“誰か”がこちらを見ている──そんな錯覚を背に、私たちは歩みを進めた。
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