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四章 ミフィアの青と水音
299.心の核
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私はそっと膝をつき、黒い結晶に手を伸ばした。
陽の光を吸い込んでいるはずなのに、石はどこか陰りを宿しているように見えた。
指先が触れた瞬間、ひやりとした感触が肌を這った。
ただの冷たさじゃない──どこか、生きているような気配。
「・・・これが、“魔寄せの石”?」
呟いた声は、自分でも気づかないほど小さかった。
だけど、その言葉にノエルとサラ、母、ミラ女王、そしてシェルも静かに近づいてくる。
結晶の内部が、ぼんやりと淡い紫紺に明滅する。まるで、心臓の鼓動のように。
「生きてる・・・魔力が、まだ残ってる」
ノエルが息をのむように言った。
「なんて密度なの・・・今までのとは、明らかに違うわ」
シェルが顔をしかめる。
「にしてもこの魔力、どこかで・・・いや、似てるだけかしら?」
「でも、確かにこれは・・・“魔寄せの石”かと」
ミラ女王が杖をかざし、石から立ちのぼる魔力を感知する。
「まるで、封印されていた何かの“核”だわ。少なくとも、単なる魔力の結晶とは思えない」
私は、石を両手で包み込むように持った。
冷たさの奥で、確かに“何か”がこちらを見ている気がした。
「アリア、離れて」
母──セリエナの声が鋭く響いた。
私ははっとして顔を上げると、彼女の目が真っ直ぐに、私の手の中の石を見据えていた。
「その石・・・“見ている”だけじゃない。呼んでるわ、あなたを」
「・・・呼んでる?」
ノエルが私の背にそっと手を当てる。彼女の魔力が、私の不安定な気を静かに鎮めてくれる。
「放して、アリア。危険よ」
母はさらに一歩、私に近づいた。
私はためらいながらも頷き、そっとその黒い石を地面に置いた。
けれど、どこかで後ろ髪を引かれるような感覚があった。まるで、誰かが名を呼びかけてきた気さえした。
──アリア・・・
「っ・・・!」
「やっぱり・・・声が聞こえるのね」
ミラ女王の低い声が、張りつめた空気を裂く。
「これは、邪神の心の一部。いや・・・正確に言えば、邪神の意志が形を変えたものよ」
母が杖を握りしめ、静かに術式を展開する。
「どういうことですか?」
「邪神は滅びたわけじゃない。あくまで、封印されているだけに過ぎない。意志──心を分離させて、外に出すこともできる」
母の足元に魔法陣が浮かび、空気が震え出す。
熱が空間を満たし、炎の魔力が母の手に集中していく。
「『焔葬』」
その詠唱とともに母の手から放たれた炎が、まるで意志を持つように宙を舞い、結晶を包み込んだ。
轟音が鳴り響く。
風が逆巻き、炎が咆哮する。
紫黒の瘴気が炎の中から吹き出し、悲鳴のような音を立てて石の内部から漏れ出した。
「っ・・・!」
ノエルと私は反射的に魔力の壁を張った。
シェルとミラ女王もすぐにそれに加勢し、熱波から皆を守る。
結晶の中心で何かが崩れ、砕け、そして──叫んだ。
なんと言っていたかはわからない。
はっきり聞き取れなかった。
けれど、それは言葉というより、悲鳴のようで・・・
ゾワッとするような、恐ろしいものだった。
陽の光を吸い込んでいるはずなのに、石はどこか陰りを宿しているように見えた。
指先が触れた瞬間、ひやりとした感触が肌を這った。
ただの冷たさじゃない──どこか、生きているような気配。
「・・・これが、“魔寄せの石”?」
呟いた声は、自分でも気づかないほど小さかった。
だけど、その言葉にノエルとサラ、母、ミラ女王、そしてシェルも静かに近づいてくる。
結晶の内部が、ぼんやりと淡い紫紺に明滅する。まるで、心臓の鼓動のように。
「生きてる・・・魔力が、まだ残ってる」
ノエルが息をのむように言った。
「なんて密度なの・・・今までのとは、明らかに違うわ」
シェルが顔をしかめる。
「にしてもこの魔力、どこかで・・・いや、似てるだけかしら?」
「でも、確かにこれは・・・“魔寄せの石”かと」
ミラ女王が杖をかざし、石から立ちのぼる魔力を感知する。
「まるで、封印されていた何かの“核”だわ。少なくとも、単なる魔力の結晶とは思えない」
私は、石を両手で包み込むように持った。
冷たさの奥で、確かに“何か”がこちらを見ている気がした。
「アリア、離れて」
母──セリエナの声が鋭く響いた。
私ははっとして顔を上げると、彼女の目が真っ直ぐに、私の手の中の石を見据えていた。
「その石・・・“見ている”だけじゃない。呼んでるわ、あなたを」
「・・・呼んでる?」
ノエルが私の背にそっと手を当てる。彼女の魔力が、私の不安定な気を静かに鎮めてくれる。
「放して、アリア。危険よ」
母はさらに一歩、私に近づいた。
私はためらいながらも頷き、そっとその黒い石を地面に置いた。
けれど、どこかで後ろ髪を引かれるような感覚があった。まるで、誰かが名を呼びかけてきた気さえした。
──アリア・・・
「っ・・・!」
「やっぱり・・・声が聞こえるのね」
ミラ女王の低い声が、張りつめた空気を裂く。
「これは、邪神の心の一部。いや・・・正確に言えば、邪神の意志が形を変えたものよ」
母が杖を握りしめ、静かに術式を展開する。
「どういうことですか?」
「邪神は滅びたわけじゃない。あくまで、封印されているだけに過ぎない。意志──心を分離させて、外に出すこともできる」
母の足元に魔法陣が浮かび、空気が震え出す。
熱が空間を満たし、炎の魔力が母の手に集中していく。
「『焔葬』」
その詠唱とともに母の手から放たれた炎が、まるで意志を持つように宙を舞い、結晶を包み込んだ。
轟音が鳴り響く。
風が逆巻き、炎が咆哮する。
紫黒の瘴気が炎の中から吹き出し、悲鳴のような音を立てて石の内部から漏れ出した。
「っ・・・!」
ノエルと私は反射的に魔力の壁を張った。
シェルとミラ女王もすぐにそれに加勢し、熱波から皆を守る。
結晶の中心で何かが崩れ、砕け、そして──叫んだ。
なんと言っていたかはわからない。
はっきり聞き取れなかった。
けれど、それは言葉というより、悲鳴のようで・・・
ゾワッとするような、恐ろしいものだった。
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