5年A組の三学期。

ポケっこ

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15 野菜地獄

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今日の給食は白飯、みそ汁、こうみづけだ。
私にとってこの献立はそこまで嬉しくはないが、食べられないものではなかった。
給食当番が白い服を着て、みんなの給食を配る。
今5Aでは12時40分までにいただきますをしないと減らせないというルールがある。
現在12時35分。私の席の後ろには、野菜嫌いのすばるがいる。
すばるはみんなに大きな声で呼びかけた。
「早くしてくれー、俺の命が危ないー……」
すばるが嫌っているのはこうみづけだ。こうみづけにはすばるが嫌いなキャベツが使われていた。
やがて38分頃いただきますをした。
私は箸を味噌汁に入れ、全体をかき混ぜる。
「やったー!野菜減らせるーー!!!!」
すばるの嬉しそうな声が聞こえてきた。
次の瞬間、咲希先生がこうみづけの器を持ってきた。
「これを見ても減らせる人持ってきて~……」
咲希先生の持つ器には、大量のこうみづけが入っていた。
しかしすばるは立ち上がり、野菜を減らしに向かった。
その時前から声が聞こえてきた。坂上だった。
「じゃあ俺減らすのやめよ……」
坂上も野菜は嫌いだ。だが、あの器の中身を見て方針を変えたっぽい。
それに続いてきはちも動き出す。
「俺も減らすのやめよ……」
実はきはちも野菜は苦手。しかしきはちの皿には多めに野菜が盛られていた。
他にも野菜嫌いはいる。しゅう、安田もそうだ。しかし二人とも減らすのをやめ、一生懸命こうみづけと戦っている。

やがてごちそうさまをして、机を後ろに下げた。
すばるは減らしたので少しずつ食べていって完食した。
坂上は戦いの末、見事に食べ切って片付けた。
しかしきはち、しゅう、安田はまだ食べていない。私と坂上はきはちの所に寄って応援をした。
「食べなよ、俺頑張ったんだぞ!」
坂上が全力で応援する。その時ゆい、もも子、すばるがリコーダーの練習をしようとしていた。
「きはち!応援歌だぞ!」
私も食べる気になれるように励ます。
教室にリコーダーの音が響く。
その時坂上が私に小声で囁いた。
「一気って」
坂上と私は手拍子を始め、きはちを急かした。
次の瞬間きはちは一気にこうみづけを口に運んだ。
きはちは上を向いてやめたい気持ちを抑え込んでいる。
―そしてきはちはこうみづけを完食した。
私は安堵するとしゅうのいる席に向かい、「食べなよー、きはち食べたぞ」と伝える。
しゅうはきはちとは違って食べる気はなさそうだった。
こうみづけを口に近づけては、「勇気が出ない~……」と呟いて箸を遠ざけてしまう。
私は暫くその場にいた。だんだん周囲の人も増えていったが、美咲が言った。
「近くに人がいるから食べれないんだよ、多分」
私含む周囲の人は納得して、しゅうの席を離れた。
掃除の5分前になると、しゅうは一気して野菜を食べた。しかし安田は掃除の時間になってもこうみづけと戦い続けていた。
安田は1時30分頃にこうみづけを残した。あれだけ残っているのに残せるなんて、度胸があるなぁと思った。
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