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決意、そして実行

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「……寝れなかったなあ……」
眩しい朝日に起こされた。オレが背伸びをすると、りんがクスッと笑うのが聞こえた。
「何だよ!な……何がおかしいんだよ!」
オレがそう怒鳴っても、りんの笑いは増すだけだった。何だよ……。
そしたら、後ろから声がした。
「ダラル、リン、ロボラン。ちょっとだけ聞いてくれないか?」
声の主はジュラルだった。
(!?いつの間に帰ってきたんだ)
ジュラルから話しなんて珍しいなと思っていたら、りんが尋ねた。
「急に何?ていうか、もう起きてたの?」
「ああ。お前らには、俺が人間に戻る為の手伝いをして欲しいんだ」
昨日オレが推理したのと同じだった。やっぱりアレは諦めてなかったんだな……
「は?それオレが否定しただろ」
「恐ろしいデメリットに気づいたんだ」
ジュラルはデメリットという、聞きたくない言葉を口にする。
話しをさっさと終わらせたい。そんな思考が巡った。
「犬にデメリット?そんなバカな事言ってないでさあ」
「馬鹿じゃない。俺にはお母さんがいるんだ。会えないだろ、こんな姿じゃ」
暫くの間オレとジュラルの反論戦が続いた。
りんと揮は今にも逃げ出しそうだった。後退りして、オレとジュラルから離れていく。
「駄目なのか?」
「駄目に決まってるだろ。犬の方がいい事多い。人間に戻るな!!」
「……人間に生まれてきたのに」
オレは少し言葉を失った。
「人間に生まれてきたのに!!」
オレは反論に詰まった。ぶっちゃけあいつの言ってることは正しいと思う。
オレは少し黙り込んでから答えた。
「……分かった。今回だけな……」
それに対し、ジュラルは子供のように飛び跳ねて喜んだ。
「!ありがとう、ダラル!」
オレはダラルじゃなくて陸で呼んで欲しいけど―
オレは咄嗟《とっさ》にりんと揮を見た。二人は前まで戻ってきて、
「私も」
「僕も……」
と同意の声をあげた。
「決定だな」
ジュラルは何故かオレ等を見下す。

オレ達はジュラルの手伝いをする事になった。

ジュラルに案内されたのは、彼がよく行く神社だった。
じっくり見たことがなかったから、こんな構造なんだと知った。
りんも珍しく興味を持っている。
そんな中、ジュラルは狛犬を指さした。
「あの犬が怪しいんだ」
「犬というよりシーサーでしょ……」
揮が呆れたように発言した。言われてみれば、確かに。
「犬って見なきゃここまできた意味がないんじゃないか?」
「まあ確かに……」
揮は小さく呟くと、狛犬の方に振り向いた。
「まだ人間の時、犬の尻尾を踏んで犬になったわけだ」
(足元を確認したら良かったものが)
コレは完全にジュラルの不注意だったわけだ。
揮が尋ねた。
「この石像に戻してくださいーってするの?」
「やってみたが駄目だった」
「じゃあ駄目じゃん」
りんがジュラルを嘲笑った。ていうか、そんな恥ずかしいことしてたのかよ。
「じゃあここはまた」
方向を変えて歩き出すジュラル。慌ててオレもついて行った。
そして、オレ達は神社を後にするのだった。
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