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第2節 女子高生(おっさん)の日常といともたやすく行われるデビュー
52.女子高生(おっさん)の小説家デビューⅡ
しおりを挟む〈英傑出版社〉
「波澄アシュナ様ですね? 承っております、右手エレベーターにて七階へお上がり下さい。【鴻野ヤコウ】がエレベーター前にてお待ちです」
「は、はい。わかりました」
今日は小説出版へ向けての初打ち合わせ、東京の中心部に拠を構えるさすがの大手出版社はまさに別世界。週刊誌、月刊誌などヒット雑誌を多数手掛ける出版界の大御所。
緊張しながら、守衛さんに一礼し、超美人な受付嬢を訪ねておっぱいを眺めていると理路整然とした対応で案内される。地方にいる隙のあるおっぱいもいいけど、やはり都会の洗練された美乳も捨てがたいなとわけの分からないことを考えていると……見知った顔を見つけ、少しだけ緊張が和らいだ。
「ヤコウさんっ、お久し振りです」
「こんにちは、波澄先生。今日も変わらずお綺麗ですね」
久しぶりに会うヤコウさんと挨拶もそこそこに、小説の掲載される雑誌を扱っているフロアーへと向かうためにエレベーターに乗った。
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〈エレベーター内〉
「ーーこの間は妹がすみませんでした……」
「ははは、いいんですよ。確かに妹さんの心配も最もですからね、お姉さん想いの良い妹さんです」
エレベーター内で以前に起きた粗相について謝罪する、どうやら妹はヤコウさんが俺の援交相手だと勘違いしたらしい。まぁ……驚かせようと思って家族に何も伝えていなかった俺が悪いのだけど。
事情を話したら家族総出で喜んでくれた、が……とりあえずその話は後にしよう。小説家の道のりは今から始まるんだから。
「それで……ヤコウさん、今日はその編集長と話す……んですよね?」
「はい、電話でも伝えましたが……緊張しなくて大丈夫ですよ。波澄先生の小説を掲載するにあたり、色々と自分の口から聞きたいそうです。少し変わった人ではありますが……思ったありのままを言えば平気ですよ」
ヤコウさんは微笑み、緊張を解そうとしてくれはいるが……向こうからのオファーとはいえ、実質これは面接のようなものなので緊張の糸は張り詰めたままだった。いらん事を言いがちで人見知りな陰のおっさんにとって、いくら年を重ねようと面接は苦手なままだ。
しかもヤコウさんの話によると、編集長は現在30代半ば……前世のおっさんより年下でありエリート。説教でもされようものなら萎縮して泣いてしまうかもしれない。
(だけど……逃げるわけにはいかない!)
以前までのおっさんだったら間違いなく逃げていた、けど、人付き合いは人を変える。周囲に陽の者が増えたことによって多少なりともおっさんにも変化が起こっていた。
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〈7F 編集部〉
「こちらです。編集長、波澄先生をお連れしました」
「入りなさい」
オシャレなスモークガラス張りのオフィスルームにヤコウさんが声をかけると、ドスの効いた低い声が返ってきた。一瞬、怖そうな声色に怯みそうになるが持ちなおす。
(ーー大丈夫っ! 前へ進むんだっ!)
意を決して拓かれた扉を潜(くぐ)る、そこにはーー
「やぁだぁー!! 実物は写真よりもっと可愛いーじゃなーいっ! 怖がらせてゴメンね? ドッキリよドッキリ! 初めまして波澄センセっ!」
おネエがいた。
〈続く〉
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