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第3節 女子高生(おっさん)の日常といともたやすく行われるアオハル
83.女子高生(おっさん)を巡る戦い⑥〈女子達の争い~プレゼン~〉
しおりを挟む〈放課後 2-A教室〉
「──であることから基本的には歴史的観点から学べるという名目で酒造処や工場見学をしたいと思います。個人的には夕焼けビーチでアシュナちゃんと将来設計を語り合い……ごほんっ! わ、私達もそのあと海に行ってマリンスポーツなどを楽しみつつ、地元の人達との交流を深め──」
ヒナヒナ達の可愛いプレゼンとは打って代わって、エナはマジのやつだった。一生懸命にトークを繰り広げるエナは健気で愛らしいが、ギャラリーにとっては回りくどく聞こえるようで退屈そうに見える。
しかし、『ある考え事』をしなければならないおっさんにとって……長いプレゼン発表は好機だった。
それは、『どうやって両者とも傷つけずにどちらかのグループに入るか』という難問。結局はこのプレゼンでどちらかを選ばなければならない。
そのためにはなにか【決定打】を見つける必要がある。例えば『実はそこにどうしても行ってみたかったから』などのスポットに関連するものでどちらかを選べば不平不満もなく『なら仕方ないね』と溜飲も下がるだろう。
だが、先程ヒメが言っていたように……おっさんは沖縄スポットアクティビティにまるで興味が無い。なんならホテルで寝ていたい。興味あるものといえばビーチでの皆の水着姿や部屋での浴衣姿──専(もっぱ)らエロ関連のみである。
「あー……長くなっちったけど、要はアシュナっちの好きそうな場所にウチらが連れてって楽しませてあげるってことで! そんで一緒の部屋んなったらウチらがマッサージしてあげっから……は・だ・か・でっ」
「ミッ……ミクちゃんっ!」
「ぁあのっ……ぇーと」
「ミクさんに3000点」
《うおおおおおおっ!!》
ミクの補足した提案にエナが顔を赤らめて叫んだり、委員長が何か言おうとしたり、群衆が歓声を上げる中でたまらず俺も興奮してポイントを与えた。
周るスポットなど最早どうでもいい。
ヒマリ達との百合の時間vsミク達の裸マッサージ──激しく揺れ動く天秤をよそに、プレゼンは終了した模様で俺は選択を余儀なくされる。
「「アシュナ(っち)!! どっちにするのっ!?」」
ミクとヒメに迫られ、固唾を飲んで見守る皆が静まり返ったその時──委員長の一言が全てを覆(くつがえ)した。
「ぁ……あのっ! ごめんなさい……さっき修学旅行の概要プリントを読んだんですけど……今年から2日目と3日目の班を別にするって……」
「「「……………え?」」」
その発言に皆が呆気にとられた、おっさんもそうだ。そんな謎システムは前世ではなかったので理解できずにいると委員長が申し訳なさそうに口を開く。
「ぇっと……よりクラスの団結を深めるようにと今年から班を日にちで分けて親交を深めるようにと校長先生が……」
「「………」」
修学旅行はまだ2ヶ月ほど先……当然、まだ生徒のグループ分け編成をするにはまだ早すぎた故に起きた悲劇だった。
と、いうかなにその陰キャにとって地獄のようなシステム。それを聞いたケン達は予想通りに絶望的な表情をしていた。
そんな陰キャ達をよそに、ミクとヒメは互いに見つめ合った後に吹き出して笑い始めた。
「──なにそれっ、あはははっ。じゃああたしら今なにしてたのっ」
「ほんとっ、ウチらバカみてー……ごめんねアシュナっち巻き込んで……ヒメっちもごめん」
「ぅうん、こちらこそ。じゃあアタシらとミク達で交代でアシュナと一緒の班でいい?」
「異議なしっ!」
仲直りした両者が笑うと、クラスも和やかな雰囲気へと変貌した。最初から最後までグダクダだったけど──こういうのも青春っていうことで俺も微笑んだ。
早くも両日の班編成が決まり、(あぁ、今世はぼっちじゃなくて本当に良かった)と、ケン達を見て実感した1日だった。
☆【女子達の争い『両者Win-Win+波澄アシュナ(ぼっち回避)】
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