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第4節 巻き起こる様々な試練と それをいともたやすく乗り越える女子高生(おっさん)の日常

139.女子高生(おっさん)の修学旅行~最終日『酒と泪と女と男』

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-時は遡(さかのぼ)り……修学旅行3日目の早朝-

「──その祠を見つけ出すのに何か手がかりはないの?!」

 俺はキヨちゃんに、祠を捜す方法を聞いていた。現実的に考えて普通の女子高生が海底探査するなんて無理に決まっていたからだ。

「ぅうむ……ワシの『女房』を見つければ知っておるかもしれんが……」
「キヨちゃんの奥さん?」
「うむ、名を【アマミキヨ】。どこでなにをしておるのやら……ワシと同じように人の身になっておるやもしれぬが……」
「どこにいるか見当はつかないの?」
「それは全くわからん」
「……手がかりを捜すための手がかりを探してちゃ意味ないじゃん……」

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〈AM11:00 『料亭 【精根のシークワーサー】』〉

「──つーわけで……アシュナとの出逢いと神さんの社が無事見つかったことを祝して………」
「「「乾杯~~っ!!!」」」

 修学旅行最終日、キヨちゃんもとい神様の祠を祀った海岸ののち──俺と沖縄の面々はみんなで料亭を貸し切って打ち上げパーリーを行った。
 どうやら俺(アシュナ)の泣き笑顔を見たヤクザ達と軍人達とイケメンズ達がマジ惚れしてしまったようで……どうしても飲み会をやりたいと言ってきたので付き合うことにした。
 飲み会やパーリーなんてこの世界から無くなればいいと思ってるおっさんだけど……こちらとしても夜通し作業をやってもらったので無下にすることはできないしね。

 勿論、おっさんはアルコール類は飲めないのでもっぱらコーラか烏龍茶だ。

「ささアシュナちゃん、飲んで飲んで」
「HEY、It is my turn (おい、俺の番だろ)!」
「あぁん? おどれらは引っ込んどかんかい! 俺らが先に姐さんと飲んどったんじゃろがい」

 半グレ集団のイケメンズと軍人達とヤクザ達が、誰が先にお酌するかで揉めている。せっかく協力して仲良くなったのに友情とはかくも儚(はかな)いものか。

「いやぁ、それにしてもマイコーが女だったとは驚いた。うちの三代目と張り合えるくらい強ぇから疑いもしなかったぜ」
「【琉球卍海】なんてチームもつくってなぁ」
「……男になろうって必死だったからね、男の勲章と言えば突っ張ることだってdaisuke(大輔)も言ってたし暴走族になって何とかマジメと接点をつくろうって必死だったのさ……会えばケンカばっかりしていたけどね……」

 ミシェルちゃんが酔い始めたのか照れているのか、顔を赤くしてみんなと語っている。大輔って誰だよって思ったけど『男の勲章』の人か……おっさんは昭和生まれだからかろうじて解ったけど半グレの若いイケメンズや軍人達ははてなマークを浮かべていた。

「ぅおぅい……阿修凪、飲んでるかぁ」
「酒くさっ!」

 早くも酔っ払ったマジメさんが、絡み酒で肩に手を回してくる。つい先日まで童貞の挙動そのものだったくせに伴侶を見つけた途端これだ。爆発しろ。

「ハニーに絡むなよマジメ……でも本当に不思議だね。こんなにも美少女なのに私もたまにハニーが男っぽく見えるのは何でだろ……」
「さ……さぁ? あはは……」
「決まってんだろぉが、阿修凪には【娚人】の魂がやどってるからだぁよぉ」
「それはおとぎ話だろう……私らがKIDS(キッズ)の頃の伝説じゃないか」
「……そう言えば【娚人伝説】ってなんなの……?」

 聞いたところ、昭和50年代──男性なのか女性なのか存在自体が曖昧な人物が目撃されたことからたんを発して生まれた伝説だとか。どうやら割と最近に起きた出来事らしい。
 その発祥の地がキヨちゃんの祠があったあの海岸らしい。ってことはその【娚人】の正体はキヨちゃんなのかもしれない。

(…………あれ? でもキヨちゃんは数千年くらい別世界にいたって言ってたような………)

 それよりも、今、ミシェルちゃんが言っていた事が引っ掛かったので思わず聞いてみた。

「……ミシェルちゃん、キッズの頃が昭和って……?」
「え? うん、私は今……twentynine(29)歳だから」
「アアアアラサー!!? 嘘でしょ!? 10代じゃなかったの!!?」
「そ……そんなわけないだろう……」

 若く見られたことが嬉しかったのか、ミシェルちゃんは頬を紅くする。どう見てもアラサーには見えない、なんなら俺(アシュナ)と同い年と言い張ってもおかしくないくらいだ。
 という事は小さい頃にミシェルちゃんと遊んでいたというマジメさんも30代くらいなのか……そこはまぁ年相応くらいかなと納得した。

 だが、ここでの言っていた何気ない言葉をふと思い出して疑問が過(よぎ)る。

 その人は『女子大生』でありながら

 しかし、二人の年齢を知った今──どう計算しても辻褄が合わない事柄がある。

 それは女子大生の彼女が言っていた『昔は仲が良かったんだけど』という言葉。
 ミシェルちゃんはマジメと遊んでいた子供時代ののちに本国へ一度帰国しているのだ。
 そして数年前に再会してからは先程語っていたように対立していたようで……という事は彼女は二人の子供時代を指してそう述べたとしか考えられない。
 けど、女子大生ということは浪人でない限り……アラサーの二人が10歳前後の頃に彼女はようやく産まれたというわけで……頭がこんがらがってきたので手っ取り早く聞いてみた。

「ねぇ……忽那さんの事なんだけど……」
「ぉう? そういえばナツの野郎……今日は休みみてぇだなぁ……」
「ナツ君は色々アルバイトしているからね、今日は……」
「……ちょっと待ってミシェルちゃん。ナツ『君』ってなに? 忽那さんは女の人だよね?」
「……what?(……え?)」
「なに言ってんだ二人とも、ナツは『男』だしまだ女子大生だから俺らがガキの頃に一緒に遊んで……………あれ?」
「君こそなに言ってるんだマジメ……あれ……そもそも私達は誰の話していたんだっけ……?」

 二人に聞いてみても、男だったか女だったか年上だったのか年下だったのか……果ては忽那さんの存在すら思い出せなくなってくるという世にも奇妙な的テイストに包まれてきて──いつの間にか話題は別のものに移ってしまった。

 何故か俺だけはその存在を忘れなかったけど……帰りの空港や駅で琉球弁を翻訳してくれたテンマやケン達、他のみんなに聞いてみても『そんな人いたっけ……?』と誰からの記憶も忽那さんの存在は消え去っていた。

(もしかしたらあの人が………………)

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〈修学旅行帰宅後 PM20:26 『波澄家』〉

「──と、そんなこんながありまして……ごめん。お土産忘れた……」
「お土産は別にいいけど……それ、本当に修学旅行に行ったお話なのお姉ちゃん!? 極道ありアメリカあり暴走族ありホラーテイストありって学生旅行の思い出話じゃないよ!?」

 けど、その後──極道や暴走族やアメリカン達からめっちゃお土産が贈られてきた。なんだかんだ言いながら一生できない体験をした想い出は一生忘れることはないだろう。





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