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最終節.女子高生(おっさん)の日常と、いともたやすく創造されしNEW WORLD
009.女子高生(おっさん)のBADEND
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「──みなさん、本日は遠方よりご足労頂きまして本当にありがとうございました。楽しんでいただけたでしょうか?」
楽しい時間はあっという間で──おっさんにもなると時の流れが加速しているから最早楽しい時間などなかったに等しいレベルで刹那にライブの曲は消化され、ラスト一曲を残すのみとなった。
おっさんのおっさんによるおっさんが気持ち良くなるためのステージは……熱狂の渦というか狂乱の宴の様相を呈(てい)しており──MCにて礼を述べると、もうなんか信仰宗教かの如く観客は叫び、泣き、拝んだりしてカオスと化している。
〈勿論でございますぅぅぅぅっ!!!〉
〈うわぁぁぁアシュナ様ぁぁぁぁぁっ!!〉
〈神と同じ時代に生きれることが何より誇りですぅぅぅぅっ!!〉
こわっ。
これ程までの求心力を望んでたわけじゃないけど……以前の人生と比べるべくもないほどの圧倒的承認欲求の満たされ方には是非もない。
「はは……ありがとー」
軽めの返答と照れ笑いで静かに応えると、時間的にも終焉(フィナーレ)が近いと察したのか観客達は哀しみの表情を浮かべた。
そんな聴衆の姿(女子だけ)がどうにも愛しくて。
自分が去ることを口惜しいと感じてくれる人達がこんなにも大勢いるのが嬉しくて。
かつての惨めだった中年人生と照らし併せると今がどれ程の輝きを放っているか希望に満ち溢れて。
未来は幸せしかないと改めて再認識して。
少し、ほんの少しだけ。
巷(ちまた)で話題になってる【時代遡誤】というワードに傾倒してる人らの気持ちが理解できたりした。
過去(ぜんせ)が無くても今(アシュナ)ならなんにも問題ないような気がして──ふと、今まで考えもしなかったそんな思いが脳裏を過(よぎ)ってしまった。
──『──ダメっ!!!!!』
すると。
耳鳴りの奥から、声が聞こえた気がして。
けど、ライブの最中だから気のせいだと思うようにしていたら。
〈…………ね、ねぇ……何の音………?〉
〈え?……本当だ、なんか地鳴りみたいな音が………〉
〈地震………?〉
何故か観客達がざわつき始めていた。
みな一様に、一斉に不安そうな表情を浮かべる。
ステージにいるヒナ達も、舞台脇に控えているアオアクアの皆も同様だった。
そして──それの来訪は本当に、突然だった。
「…………………─────え?」
眼前が、真っ暗になった。
暗幕を閉じたとか、照明が落ちたとか、夜が訪れたとかそんなレベルの暗闇じゃあないのは瞬時に理解できた。
だってただの闇じゃあない、本当に一縷(いちる)の光すら無いんだから。
けど、それなのに目の前には自分がもう一人いて、可視化できているのだからいよいよもって意味がわからなかった。
「──────…………」
声は出せない、目前の自分も同じようで……しかし、一つだけ違うのは……その自分は、段々と伸びたり縮んだりを繰り返しているのだ。
まるでブラックホールにでも呑み込まれたような、宇宙が壊れてしまったような現象。
なにこれ。
突然巻き起こったホラー展開、気の遠くなるような伸び縮みを目の当たりにしながら動くことすらできないおっさんが理解できた唯一のことは………やっぱり内なる声に耳を傾けて真剣に考えるべきだった──事前に察知していた通り、フラグを正しく踏めず、間違ってここへ到達してしまったと気づいた故の後悔。
俺は耳鳴りについてもう少し真剣に考えるべきだった、あまりに上手く行き過ぎる人生に浮かれ、流されるままに時を進めてしまったのだ。
もう戻れない、戻せない。
なにがなんだかわからないけど、それだけが心へ刻みつけられた。
─────BAD END route【女子高生(おっさん)のBADEND】───
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「──みなさん、本日は遠方よりご足労頂きまして本当にありがとうございました。楽しんでいただけたでしょうか?」
楽しい時間はあっという間で──おっさんにもなると時の流れが加速しているから最早楽しい時間などなかったに等しいレベルで刹那にライブの曲は消化され、ラスト一曲を残すのみとなった。
おっさんのおっさんによるおっさんが気持ち良くなるためのステージは……熱狂の渦というか狂乱の宴の様相を呈(てい)しており──MCにて礼を述べると、もうなんか信仰宗教かの如く観客は叫び、泣き、拝んだりしてカオスと化している。
〈勿論でございますぅぅぅぅっ!!!〉
〈うわぁぁぁアシュナ様ぁぁぁぁぁっ!!〉
〈神と同じ時代に生きれることが何より誇りですぅぅぅぅっ!!〉
こわっ。
これ程までの求心力を望んでたわけじゃないけど……以前の人生と比べるべくもないほどの圧倒的承認欲求の満たされ方には是非もない。
「はは……ありがとー」
軽めの返答と照れ笑いで静かに応えると、時間的にも終焉(フィナーレ)が近いと察したのか観客達は哀しみの表情を浮かべた。
そんな聴衆の姿(女子だけ)がどうにも愛しくて。
自分が去ることを口惜しいと感じてくれる人達がこんなにも大勢いるのが嬉しくて。
かつての惨めだった中年人生と照らし併せると今がどれ程の輝きを放っているか希望に満ち溢れて。
未来は幸せしかないと改めて再認識して。
少し、ほんの少しだけ。
巷(ちまた)で話題になってる【時代遡誤】というワードに傾倒してる人らの気持ちが理解できたりした。
過去(ぜんせ)が無くても今(アシュナ)ならなんにも問題ないような気がして──ふと、今まで考えもしなかったそんな思いが脳裏を過(よぎ)ってしまった。
──『──ダメっ!!!!!』
すると。
耳鳴りの奥から、声が聞こえた気がして。
けど、ライブの最中だから気のせいだと思うようにしていたら。
〈…………ね、ねぇ……何の音………?〉
〈え?……本当だ、なんか地鳴りみたいな音が………〉
〈地震………?〉
何故か観客達がざわつき始めていた。
みな一様に、一斉に不安そうな表情を浮かべる。
ステージにいるヒナ達も、舞台脇に控えているアオアクアの皆も同様だった。
そして──それの来訪は本当に、突然だった。
「…………………─────え?」
眼前が、真っ暗になった。
暗幕を閉じたとか、照明が落ちたとか、夜が訪れたとかそんなレベルの暗闇じゃあないのは瞬時に理解できた。
だってただの闇じゃあない、本当に一縷(いちる)の光すら無いんだから。
けど、それなのに目の前には自分がもう一人いて、可視化できているのだからいよいよもって意味がわからなかった。
「──────…………」
声は出せない、目前の自分も同じようで……しかし、一つだけ違うのは……その自分は、段々と伸びたり縮んだりを繰り返しているのだ。
まるでブラックホールにでも呑み込まれたような、宇宙が壊れてしまったような現象。
なにこれ。
突然巻き起こったホラー展開、気の遠くなるような伸び縮みを目の当たりにしながら動くことすらできないおっさんが理解できた唯一のことは………やっぱり内なる声に耳を傾けて真剣に考えるべきだった──事前に察知していた通り、フラグを正しく踏めず、間違ってここへ到達してしまったと気づいた故の後悔。
俺は耳鳴りについてもう少し真剣に考えるべきだった、あまりに上手く行き過ぎる人生に浮かれ、流されるままに時を進めてしまったのだ。
もう戻れない、戻せない。
なにがなんだかわからないけど、それだけが心へ刻みつけられた。
─────BAD END route【女子高生(おっさん)のBADEND】───
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