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チュートリアル
#000 【前】
しおりを挟む『お荷物』『荷物持ち』
まさに俺を蔑称するに相応しい言葉だ。
何をしても役に立たない、できる事といえば荷物を運ぶ事くらいしかできやしない。
いや、俺はそれすらも満足にできていなかったかもしれないな。
~~~~~~~~~~~~
~~~~~~
~~~
「おい! ちんたら歩いてんじゃねぇぞ! あーもー! イライラする!」
「仕方ありませんわね、この狭い洞窟に竜車を運び込むのは不可能ですもの。アイツを使うしかありませんわ」
「ミランダさんが収納魔法を早く覚えてくれないからですよ」
「なんでアイツのためにわたくしがそんな事しなくてはいけませんの? いくら魔法とはいえわたくし、荷物持ちなぞ真っ平ごめんですわ…………まぁ、あの顔を二度と見ないようにするためにはそれもアリだったかもしれませんわね」
「…………」
ここは【ネザー】と呼ばれている世界最果ての島。そこにある洞窟の内部。
噂によれば地下の階層は別世界にまで続いてると言われている、誰もが忌避する場所。
『魔獣』と呼ばれるこの世界に蔓延るモンスター達の最重要発生源とも言われている。
俺達は世界に名を轟かす、俗には冒険者ギルドなんて呼ばれている冒険家達の集い【白銀の羽根】。
昨今の魔獣増加による被害に伴い、長い間封印されていたこの洞窟もその力が弱まっていると判断されたらしく……溢れ出る魔獣の数減らし及び内部調査をするのが今回の目的だ。
そこで先遣隊として真っ先に名のあがったのが俺達……国力(ランクEX)と言われる白銀の羽根だった。
「かっ! こんな雑魚共俺様が相手するまでもねぇな!」
「油断するんじゃありません事よ、ヴェルト。ここはかつての伝承の地………何が起きても不思議ではありませんわ」
「<転生の悪魔>………この世界も果てにあるこの小さな島から出来たと言われているお話ですね、世界を創ったのは別次元の生まれ変わりの悪魔………<転生の悪魔『ラインクザク』>………伝承では『神の生まれ変わり』『どんな質量の物でも片腕で持ち上げる』『一夜にして島をも創りあげた』『空を飛びどんな物でもレンガのように破壊する』はては『人までもを消し去る』なんて言われていますが………」
「くっだらねぇな! ミランダ、ナイツ! んなおとぎ話をいつまで信じてんだよ!」
メンバーは
・【銀色の騎士】ヴェルト・スパイクギア
・【飛翔の魔導師】ミランダ・ユークラリス
・【大賢人】ナイツ・ミァン・レイヤー
どいつもこいつも国家レベルに顔が効き、名指しで推薦指名を受けるほどの実力者。
たった一人でも超大型魔獣を難なく相手どれるくらいの飛び抜けた業(わざ)や魔力の持ち主。
性格は最悪だけど、な。
そこに何故か抜擢された万年荷物持ちの俺。名前は【ソウル・サンド】……我ながら名前にすらも覇気の一つもない。
その場違いな俺がこの場に連れてこられた理由ってのも色々あるんだけど……一番の決め手となったのは……
「…………」
メンバーの先頭を歩く桃色髪の美人。
花の剣聖と言われているこのメンバーにおいても飛び抜けた強さの剣士、そして……俺の幼なじみでもある【サクラ】。そのサクラの推薦により俺はここにいる。
何を思って俺をここに連れてきたのかはわからなかったが………こいつのためにも俺は実力不足を承知で二つ返事で『荷物持ち』を引き受けた。こいつとは昔から仲が良かった。
サクラは昔から明るくてお節介やきでおまけに剣の腕も立つ完璧な女の子だ。
ガキの頃からそれは変わらず……俺はいつもこいつの荷物持ちとして引き連れられていた。
昔とは違って今じゃあまり会話もできず………遠い存在になっちまったがそれでも俺をこのギルドへと引き入れてくれた。
何にもできない俺なんかがこの世界で生き抜いてこれたのは、曲がりなりにもこのギルドへの所属という付加価値(ステータス)があったからだろう。
陰では他のやつらに練習台と称されて憂さ晴らしの人形となっていた俺も、サクラがそばにいたから踏ん張ってこれた。
「くそっ………サクラ様が目を光らせてなければ……俺様が闇討ちでも何でもしてやるってのに………」
「………何故サクラ様はあの役立たずを庇護しているんですの? いくら同郷とはいえ………」
「それだけはいくら知恵を絞ってもわかりませんね………」
白銀の羽根のメンバーもサクラにだけは頭が上がらない。
こいつはその剣一つで他のメンバーをも黙らせる事ができるほどの腕前だ。
昔から本物の剣を持っても棒切れ一つ持ったこいつに手も足もでなかった俺が言うんだから間違いない………なんとも、まぁ、情けない話ではあるけどな。
~~~~
~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~
ま、延々と長い回想を思い浮かべていてもしょうがない。
今までのはこの洞窟に来た時の出来事。
じゃあ今はどうしてんのかって? はは、何で俺がこんな事を思い出していると思う?
何故なら俺はもう現在進行形で死にそうだからだ。
いわゆる、これは走馬灯ってやつさ。
俺は、そのサクラとギルドメンバーに殺されかけて………この洞窟の奈落の果てへと棄てられた。まるでゴミを捨てるように。
最後に見た、サクラの久しぶりに見せた笑い顔が、頭から離れない。
『 』
最後に放ったその言葉も。
あいつは俺を気にかけていたんじゃない。
『お荷物』『荷物持ち』が欲しかっただけ。
ははっ、笑い話だ。
俺はあいつの名声や評判を高めるための、自分の価値を認識するための、ただ荷物を運ぶための道具にすぎなかったってことだ。…………もう笑うしかない。
腹を切り裂かれ、全身がズタズタ。関節は変な方向へと曲がり、もう痛みを通り越した。
「………………ちっきしょう………」
これでも努力してきたつもりだった。
お荷物と呼ばれるのは嫌だったから、体も鍛え、知恵を磨き、わずかながら魔法も身につけた。
それでも全然足りなかった、この世界で生きていくには。
「………………もういいさ、つまらない世界に………つまらない人生だった………」
もし、伝承されているような転生劇………生まれ変わりがこの世にあるならば。
「…………このくだらねぇ世界を創り変えるような力を………そ………し………て…………」
俺は血塗れの視界の微かに見えた先にある石碑のようなものを見ながら、そこに記されていた文字を視界に捕らえながら息絶えた。
『お荷物野郎には箱庭の福音を
クソ野郎には地獄の苦しみと死を与えよ』
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