【箱庭(ラインクラフト)】~お荷物として幼馴染みに殺されかけた俺は転生の創造主の力で世界を創り変える、勿論復讐(ざまぁ)も忘れずに~

司真 緋水銀

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チュートリアル

#005~箱庭入門『vs腐者』

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<なはは、ようやっと着いたか。お前さんが『殺された』現場によ。さながらお前は奈落より這いずり出た死に損ないのゾンビってやつだな>

 長い作業を終えてようやく俺は【ネザー】の洞窟内部へと這い上がった。落とし穴は途中から斜めになっていたため、土まみれになりながら自力で這って進んだ。奇しくもハコザキの言う通り……地下から地上へ這い出たゾンビさながらの姿だろう。

「はぁ……はぁ……はぁ……」
 
 息切れしながら、とても広い空間に出た俺は周囲を見渡す。

 周囲は先ほどまでの土壁とは違い、セメントにより固められた石壁が存在していた。
 壁だけではない、床も天井も無機質な灰色に覆われている。壁には【樹鋼石】と呼ばれるマナを内包する光を放つ石が埋め込まれているため、松明を灯さなくても明るい。
 円柱の柱や壁に刻まれた紋様のようなものが静寂に包まれた空間をより一層不気味なものに変えている。

「……来た時はあまり気にしてなかったけど……人為的に造られた神殿のような造りをしてるんだなここは……これもハコザキが造ったものなのか?」
<なはは、知らねえよ。俺が何千年前にこの世界を造ったと思ってやがる? 気の遠くなる位遥か前さ、そっからの事はタッチしてねぇ。人間共は勝手に増えて世界をあちこち変えやがった。今じゃ俺の知らない場所の方が多いんじゃねぇか>

 ハコザキは退屈そうな声でそう言った。

<それよか【箱庭】の力でお前さんを殺したやつらに復讐するんじゃねえのか? あいつらが帰っちまう前にさっさと追いかけた方がいいんじゃねえの?>
「…………」

 そうだ、【白銀の羽根】はこの島【ネザー】の調査及び魔獣の掃討の目的でやって来た。
 ここに着くまでの間……洞窟内部にいる魔獣は軒並みあいつらが片付けている。いつここを離れてもおかしくはなかった。

「…………だけど、ハコザキ。この力……便利は便利だけど、こと戦闘に関してはどうなんだ? あまり戦いに向くとは思えないんだけど……【課金】をすればもっと強い力が手に入ったりするのか?」
<はあ? おいおいしっかりしてくれよ。この力ほど戦闘にうってつけの力はねぇだろうが……まぁ無理もねぇか、お前さんは金魚の糞の如し今までろくに前線にゃあ立ってこなかったんだもんな。単なるお荷物で荷物持ち、経験もなにもあったもんじゃねぇ>

 何もそこまで言わなくても、とイラついたが事実なので何も言い返せない。

<仕方ねぇな、ちょいとそこで待ってやがれ>

 ハコザキはそれだけ言い残して応答しなくなった。

(ここで待ってろって……何をする気だ?)

 言われた通りに手持ちぶさたで待機していると、静寂に包まれた空間にうめき声のようなものが響いた。
 風の通り抜ける音と似ているようで違う、野太く感じる音だ。

 やがてそのうめき声は更に大きく空間を埋める。
 気のせいではない、間違いなくそれは俺の元へと近づいていた。そして、その音の発生源が何なのか……すぐに俺は理解する。

 何故なら『それは』神殿空間の出入口にすぐにやって来たから。

「……………………………………あ……あれは……【腐者】!?」

 神殿出入口に現れたのは【腐者】と言われる魔獣だった。
------------------------------------------
【腐者】 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆ 
・埋葬され腐蝕した死体が地のマナを吸収し蘇ったもの。魂や意思は無いが自動的により強いマナを内在する方向へ向かい、それを補食する。体は脆く、速さはないがマナが枯渇するまで倒れない。
------------------------------------------

<よ、プレゼントだ。あいつらを【箱庭】で倒してみろ、チュートリアルバトルってやつだ。なはは>

 いつの間にか戻ってきたらしいハコザキから声がかかる。

「……も……もしかして……ハコザキがあれを……!?」
<おうよ、用意してやったぜ。俺のいた地球ではゾンビっつーやつだ、お前さんの世界では【腐者】っつーのか? なはは、まぁどーでもいいさ。さ、俺ぁ一切口出ししねぇ。こんなのも倒せねぇようならお前さんはここで死んだ方がいい。じゃあな>

 ハコザキはそう言ってまた応答しなくなる。
 何て適当で無責任なやつだ!と文句を言いたかったが今はそれどころじゃないし、確かにこんな魔獣も倒せないようじゃあ……復讐なんてできるはずがない、あいつらはこれくらい目を瞑ってでも片付けられるんだから、と思考を切り替える。

(ハコザキはこの力が戦闘にうってつけ、と言った。だが……【アイテムスロット】と【クラフト】でできる事と言えば収納と荷運びくらいだ……貰った【インベントリ】ってやつはまだ試してもいないから使えない……それだけでどうやって……)

 思考を巡らせている間にも【腐者】はゆっくりとだが確実に、こちらへと近づいてくる。
 その数は更に増し、この広い空間をあっという間に埋め尽くした。おそらく総数は百を越えているだろう。俺は文字通りに袋小路の鼠と化した。

(………そういえば……この【クラフト】で運べる壁や床の箱のかたまりは俺の【右手】だけが重量に関係なく持ち運び可能だって言っていた、なら、他の人間や魔獣にはこの箱はどう作用するんだ……?)


 俺は試しにアイテムスロットに貯めた【岩の箱】を取り出す。
 そして、それをまるで荷物を放るかのように……迫り来る【腐者】の頭上めがけて遠投した。

ドォォォォォォォンッ!!

 轟音と地面が破壊されるような音が周囲に響く。
 箱が地面に叩きつけられた衝撃の振動と破壊音だ、俺も足を取られ少しふらつく。
 結構な衝撃に予想していたとは言いつつ……驚いて呆然とした。

 結果ーー【岩の箱】は【腐者】を容赦なく押し潰し、その姿を空間から……この世界から後片もなく消し去ったのだった。
 箱は俺の【右手】以外には重量質量を保ったまま作用するらしい。つまりはあれは他の生物からしてみればそのまんま【岩のかたまり】。それが頭上から降ってきたのだ。体の脆い【腐者】には効果は絶大だった。

「………なるほどな……ハコザキの言ってた意味がわかったよ。少し頭を働かせれば何にでも応用が効く……はは、はははははっ……」

 【腐者】に囲まれながら、その【腐者】のうめき声を押し潰すかのように俺の嗤い声は空間に木霊する。
 
 



 




 


 
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