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第二章 楽園クラフトと最初の標的
#035.準備をしよう③『ホーム』
しおりを挟む〈宿場町カルデア〉→→〈カボチャ高原〉
数日後──俺はマイン、ルルリラ、アスナ、ミネラの四人を連れて商会から買った土地のある高原にたどり着いた。ワヲン自らが魔獣避けのできる馬車を御して引いてくれていたため道中は快適だった。
「わぁっ、ここですかぁっ!? ラインさんっ」
馬に乗ったワヲンが声をかけると、窓から建物を目にしたルルリラが誰よりも早く目を輝かせて荷車を降りる。俺とワヲンを除き一番年上であるにも関わらず一番子供のようだ………無論、それが彼女の良さでもあるのだが。
たどり着いた場所を見てワヲンは呆然としていた──その理由は後でいいとして……このカボチャ高原の広さにして約10町歩……一つの小さな村が丸々入るくらいの面積が俺の購入した土地だ。
カボチャ草原の先にある峡谷を挟んだこの高台は景色も良く、海や草原や宿場町などが一望できる。裏手の峡谷の先には先日訪れたレッドストン鉱山もある。また高冷地と呼ばれる高原は夏季でも涼しく快適だ。格安で購入できた割にはとても好条件の正に楽園の第一歩に相応しい。
「凄いですっ! 綺麗~……私もここに住んで良いですかっ?! 気にいっちゃいました!」
「お二人が良ければよいのではないですか? マインも凄く良い場所だと思います。さすがソウッラインさん」
「アタシらは構わないよ、ルルリラ姐さんも良い人だしな。ちょっとうるさいけど」
「私も思う、子供っぽいのを無くせば」
「ひどいっ!? 二人ともっ!」
マイン、ルルリラ、アスナ、ミネラはここ数日の間に顔を合わせすっかり仲良くなった。アスナとミネラの二人には『人の目があるところでは猫を被れ』と言って何とかあの問題は解決した……が、三人だけになると途端に抱きついたりしてくるため根本的解決には至っていない。
「か……え? 川が……何故?」
一人、混乱しているワヲンがポーカーフェイスを忘れて呆然自失となっている。
その理由は単純明快……【紹介した状態の土地と景観が一変している】からだろう。
実は以前、ワヲンと二人でここを訪れた際にはここは荒れ地だった。草だらけで水場も士道もなく、魔獣の住み棲だったのだ。それこそが格安で売りに出されていた理由だ。長らく管理者不在だったこの土地の所有者は商会に移ったらしいが整地するような人手も時間も無かったためにそのまま売りに出した。が……川が遠いために農耕に適さないこの場所は一切見向きもされず、忘れ去られていたらしい。
それが今では近くに川が流れ、草は全て綺麗に刈られ、畑やそれらを囲う柵……水車に小屋、果ては新築の家まであるのだから驚きもひとしおだろう。
それらは全て俺の【箱庭】によって数日で完成させたものだ。地面をクラフトしてコツコツと水源から川を引いて水路をつくるのは手間だったが……それを一晩でできる魔法は【箱庭】くらいなものだ。
「こんな立派な家こんなところにありましたっけ!? なかったですよね!? ねぇっラインさんっ!?」
「いや、俺が知るわけないだろう。カルデアには最近来たんだから」
二人の住み家を見てルルリラが何故か話を俺に振ったのち、すぐに扉を開け家に走って入っていって転んで涙目になっていた。それをアスナとミネラが慰め、三人は新築の家に大はしゃぎしていた。
この家が俺の造ったものだと唯一知っているマインと顔を見合わせ微笑み合う。【箱庭】がもたらす恩恵の本質は実はこういったものである事を……今だけの暫しの休息の中で噛み締める。
「………」
「いつまで固まってるんだワヲン。案内に疲れただろう、家具も新調してあるから少しゆっくりしていってくれ」
「かっ……家具すらももう配置済みなのですかっ!? ……おほん、失礼しました。で……ではお言葉に甘えて中を拝見させて頂きます」
ワヲンは礼儀正しく一礼してから家に入った。俺達もそれに続く。
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〈カボチャ高原〉→→〈楽園(ソウルの土地)〉
「わぁ~……素敵ですっ! 綺麗で広くて……なんか可愛いですっ!」
「うん、木造だけどそれがまたいい。木の匂いが落ち着く」
「そうだなっ、変に気取って派手にしてないのがいいよな。アタシも気に入った」
これからここで生活する三人の好評を受けて胸を撫で下ろす。今までの【箱庭】での家造りと言ったら四角い壁を並べただけの無機質な酷いものだった、地球の知識でいうと……いわゆる豆腐型というやつだ。
さすがに当分の間……しかも女の子が住むとなってはそれでは申し訳ないと思った俺は『地球の知識』を総動員して夜通し家造りに励んだ。
三角屋根、窓ガラス、暖色系の木材、土台と敷き詰めた葉、ウッドデッキにベランダ。家具のテーブルやベッドも自作した。とは言っても……職人のようにコツコツと造り上げたわけじゃなく素材を組み合わせて【合成】しただけ、俺は見映えと強度さえ考えればいい。どちらかと言えば設計管理者のような仕事だ。
あとは積み木遊びをする子供のように積み重ねればいいだけなのだから【箱庭(Lクラフト)】が如何に便利なものか。これこそが【箱庭】の真価なのかもしれない。
「なはは、気に入ったんなら少しゆっくりしていってくれ。マイン、外を見に行こう」
「承知致しました」
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俺とマインは一階部分の入り口横にあるウッドデッキに配置した椅子に腰かけ景色を眺める。ここ数日はこの土地の整地や資材集め、肩代わりしているクエストの消化や【計画】の下準備などでマインと二人の時間が取れていなかった。マインも魔術の鍛練や勉学に勤んでいたためにこうして二人で話すのも久しぶりだ。
「……ソウル様……あの……い……い……一緒に座ってもよろしいでしょうか……?」
「あぁ、これも久しぶりだな。ほら」
「失礼致しまひゅっ」
何故か舌を噛んだらしいマインは口を両手で押さえ赤くなりながら俺の股ぐらに腰を降ろす。一脚の椅子の上で密着した俺達は、心地よい風と奏でられる草花の揺らぎ音を暫し無言で楽しむことにした。
ネザーでもマインの希望でよくこうしていたもんだ。きっと人肌恋しい時期なのだろう、かくいう俺もこの心地よさが捨て難くなっている。
静観な眺めと家の二階から微かに聞こえるはしゃぎ声が絶妙に相まってか……マインは背中を預けウトウトし始める。寝る間を惜しんで勉学に励んでいるために疲れたのだろう、だが、何故か寝ないようにと我慢している様子が見える。
「マイン、少し昼寝でもしようか。たまにこんな日があっても悪くない」
「ソウル様………………………でも…………久しぶりのソウル様との二人だけの……………お時間を………………」
「これからいくらでも時間はつくれる。それにこれだって二人の時間だ、俺も少し眠るよ」
「ソウル……さま………ありがとう……ございま………す……」
手にした夢の第一歩での初日、久しぶりに心から安らげる優しい時間が流れる。一緒に毛布に包(くる)まった俺達は自分たちだけの地で暫しの時を楽しんだ。
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◇【使用資材とクラフトアイテム】(※全て周辺整地時に回収した物とそれで合成した物)
【外観 柱 土台 水車小屋 柵】
・オークの原木
・シラカバの原木
・シラカバの木材
・オークの木材
・シラカバのフェンス
・オークのフェンス
・オークの木の階段
・シラカバの木の階段
・レンガの階段
・石レンガのハーフブロック
・板ガラス
・オークの葉
【内装 家具】
・かまど
・作業台
・チェスト
・干草の俵
・溶鉱炉
・燻製器
・鍛冶台
・製図台
・矢細工台
・機織り機
・石切り台
・書見台
・砥石
・焚き火
・金床
・本棚
・鉄格子
・醸造台
・大釜
・テーブル
・椅子
・ベッド
・植木鉢
・額縁
・時計
・白色のカーペット
・水入りバケツ
・松明(照明 魔獣避け)
【土地面積】
・10町歩=約99174㎡
【家(木造二階建て 5LDK)】
・敷地面積:407.45㎡(123.25坪)
・延床面積:105.00㎡(31.76坪)
・1階延床面積:56.00㎡(16.94坪)
・2階延床面積:49.00㎡(14.82坪)
・構造・工法:木造軸組工法
敷地そばに『水車小屋』『畑(水源設置)』『川』『家畜小屋』『果樹園』あり
【費用】
・土地購入費=2700万コイン
・資材調達、建築費=0コイン
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