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第二章 楽園クラフトと最初の標的
#034.【楽園計画】③
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「…………………………はぃ?」
場所は魔術師ギルド、すっ頓狂な声を出したのは受付嬢ルルリラだ。俺との会話を経ての反応──もう一度内容を反復する。
「ルルリラは魔術師ギルドと冒険者ギルドの雑務を兼任してるんだろ? 近くに土地を買った。だからついでに俺の姪達の世話もして欲しい。金は払う」
「いやいや!? 内容は聞き取りましたよ一言一句! そうじゃなくて色々と聞いてない事があるんですよっ!! まず土地を買ったって……ええ!? まだギルドに入って少しなのになんでそんなお金持ってるんですかぁ!?」
「先日話しただろうルルリラ、ラインの親族に不幸があった。それで子供達の引き取り手としてラインに白羽の矢が立ったんだ、だとすればカネは何処から出るのか想像もつくだろう」
イルナがフォローしてくれる、こいつには事前に復讐の件以外にも俺の夢(サブクエスト)の件も話しておいた。
当然、いつも通り恍惚な表情をして『面白い』と笑うよくわからない反応をしたが。
「あ……ごめんなさいっ。そうですよねっ……でも私でいいんですかっ? 私……子供のお世話とかした事ないですよっ?」
「構わない、ルルリラのその明るさはきっと二人の活力になる。そるに子供と言ってもマインより歳上だ。しっかりしてるから様子を窺うくらいで大丈夫だ」
「ん~~~~………わかりましたっ! 私がお力になりますっ!」
「ありがとう、助かる」
ルルリラは少し迷ってはいたが、嫌な顔一つせずに引き受けてくれた。純真無垢で裏表のない彼女を見ていると薄汚れていく自分の心が洗われるような気がして少し心地好い。
「ふふ、薄汚れた心の持ち主は『奴隷を解放しよう』など無垢な少年みたいな夢は持たないと思うよ」
「普通に心を読むな。それに俺の狙いはそんなんじゃない」
「みなまで言わずとも理解しているつもりさ、ラインのその夢が『誰のため』であるのかは……な」
「…………」
イルナは微笑みながら勉学に勤しむマインに視線を落とす。
俺は昨夜にしたアスナとミネラとの会話を思い出す。
~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~
~~~
~昨夜~
「「……………はぃ……?」」
場所は裏通りの路地、アスナとミネラは影で着替えながらすっ頓狂な声をあげる。
「ど……奴隷達を貰うって…………どーゆー事よ……?」
「字の如くさ、俺が奴隷達を買い取る。そして奴隷の楽園を作る、それだけだ」
二人は言葉を失う、頭の中で俺の言を反芻(はんすう)しているのだろうか。すると、これまで会話をしなかったミネラが口を開いた。
「……具体案は? なんの計画もなく、ただ夢みたいに語ってるだけ?」
「なはは、知らないのか? 計画性も打算もなしに人類が平等に見ていいものを夢っつーんだぜ? まぁ聞きな」
ミネラは値踏みするような──それでいて自分も夢を見るような相反する光を宿した瞳で俺を見る。綺麗な褐色の肌と大人びた銀色の髪はまるで未成年には見えなかったが……今は馬鹿げた計画にワクワクしている単なる少女に見えた。
「結論から言うと……全ての奴隷を買うなんてのは無茶だ。俺の今の財産全てを使ってもな。だが──『希望者』そして『未成年』に限定させりゃあ難しくはねぇ。まだ先の話になるがな」
「…………」
「各地に拠点を作り、俺の手足を住まわす。そこで自給自足の農耕をして『農業』に勤しんでもらう。作物を育て、収穫し、地方や都市部に卸(おろ)す。そうして得たコインで生活して余剰分を俺の取り分とする。安心しな、奴隷として生きるよりかは贅沢な暮らしをさせてやれる。学院に通う事だってできるぜ」
「…………」
「その生活が嫌だっつーんなら好きに生きりゃあいいし奴隷に戻りたきゃあすりゃあいい。縛りはしねぇ、俺は他にやる事があるから四六時中面倒は見れねえが……可愛らしいお姉さんがフォローしてくれる」
「…………それにかかる経費とか土地代とか考えて言ってるの?」
「当然さ、俺にはそこらへんをコストゼロにできる魔法がある。ノーコストハイリターンにできるチートがな。あとはその手間を買って出てくれる手足だけだ。それをお前さん達にやってもらいたいのさ」
「「…………」」
二人はチートの意味が理解できなかったようで一瞬首をかしげたが、真剣な面持ちに戻った。そして着替え終わったミネラとアスナが俺の目前に来て口を開く。
「………どうしてアタシ達なんだ?」
「奴隷に身を落としながらもその制度をブッ壊したいっつーひねくれ者が必要だったからさ。勿論、ほぼ全員がそう思ってるんだろーが……その中でも瞳(め)が死んでない奴等がお前さん達だった。夢を叶えるのに先駆けて必要なのは……同じバカを見れる賛同者が理想的だ。それが理由さ」
「…………」
「もう1つは……俺には娘がいる。かつて奴隷でありながらそれを脱して平和に暮らしてた……だが、それすらも全て壊された娘が。彼女と友達になってほしい、それが一番の理由だ」
「………………ぷっ、あははっ。なんだそれっ……あはは!」
アスナが笑う、だがそれは今まで俺が見てきた馬鹿にするような笑い方ではなく……年相応の少女が見せる純粋な笑い方だった。そしてミネラが呟く。
「……アスナ、まだわからないけど……この人、悪い人じゃない。今の台詞が一番の本心だった」
まるでイルナみたいな事をミネラは言った。彼女も魔術で人の感情を読み取れるのだろうか。
「あははっ……わかってるよ。だってこいつ、アタシ達のこと一回も奴隷って言わなかったしな。じゃあ行こっか、これから忙しくなるんだから。ちゃんといい家に住ませてくれるんだよな? ご主人様」
「うん、そうだね。ご主人、名前は?」
まるで気の知れた友達のように、普通の少女のように二人は俺に言葉を投げかける。これじゃあどっちが雇い主だかわかりゃしないな──と笑いながら俺は言った。
「ライン・ハコザキだ。これからよろしくなアスナ、ミネラ──」
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ーー時は戻り、現在ーー
「………………………ライン、なんだこれは?」
場所は魔術師ギルド、すっ頓狂な様子で疑問を投げかけたのはイルナだ。二人の仮住まいを作るまでの間……イルナにはギルドの一室を宿代わりとして貸し出して貰っていた。
『ある理由』で二人をまずはイルナに紹介しようと思い、扉を開けたのちの出来事だ。
「ご主人様ぁ~♪ アスナは良い子にお留守番しておりましたぁ、撫でて撫でてっ」
「はぁ……ご主人、尊い。ミネラはご主人様しゅき……」
アスナは俺に駆け寄り抱きつき、ミネラもすり寄りながら背中を預けてきた。その様子を見てあのイルナが絶句している。
「……ライン、君の話の人物像と齟齬(そご)があるようだが……君の趣味をとやかく言う気はないが、あれだけ雄弁に夢とやらを語っておいてまさか食指が進んだとでも弁明するわけではあるまい? そうでもしなければ一晩でここまで従順にはなり得ないと思うが……」
「んなわけあるか。言う必要ないと思ってたんだが……」
実はあの話ののち──通りで二人を見ていた戦士風の輩に路地裏で絡まれたのだ。そいつらがどうなったかを語るまではないだろうが……その光景を見てから二人の態度は豹変し、こうなってしまったのだ。
「ご主人様強すぎ……格好よかった……しゅき……尊(とうと)い……」
「アタシが先だぞミネラ!」
「…………成程、しかしこれをマインとルルリラはどう思うのか……こんな姪(めい)がいるわけないだろうに……マインもこれでは友達になれるわけないと断じよう。どうするのか……ふふ、お手並み拝見だな」
「面白がってないで何か言い訳を考えてくれ……」
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