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第二章 楽園クラフトと最初の標的
#040.エンチャントしよう
しおりを挟む〈ラインの楽園〉
「お帰りーご主人様っ! アスナは良い子にお留守番してましたーっ!」
「御主人御主人御主人様……本当に良い子にしてたのはミネラ……掃除洗濯畑作業……全て完璧にこなしました……」
襲撃の翌日、楽園(ホーム)に帰ると扉の開閉一番ーー元気一杯のアスナとミネラに抱き付かれた。尻尾をまんべんなく振るアスナ、俺に身体を預け首もとに顔を近づけて匂いを堪能している様子のミネラ。
そして、俺の後ろで微笑みながら怒気を発するマイン。
マインに気付いた二人は急いで後ろに飛び退いた。
「アッ……アスナっ! 来た匂いは御主人様だけって言ったじゃない!」
「い……いやーあまりに嬉しくてさ……マイン姐さんの匂いに気づかなかった……えへへ……ご……ごめんなさいマイン姐さん……」
知らない内に三名の間に優劣順序がつけられていたらしく、アスナとミネラはマインに謝罪した。
聞いたところ、マインは絶対的第一の奴隷らしく俺の寵愛を受けるのが最優先の……正室的存在だとか何だとか。所謂(いわゆる)子供のごっこ遊びみたいなものだろうと『程々にな』と場を諌めた。
「そ……それで御主人様……今日はどうされたのですか?」
「マインの傷の療養と……新しく魔獣対策しようと思ってな。昨日の件があったからしっかりとしておきたい、お前らに何かあったら嫌だからな」
「御主人様………そんなに私たちの事を……だめ………しゅき……しゅき……」
「農作業の方はどうだ?」
「ばっちし! ご主人の『魔法』のおかげで上手くいってます! ……て、いうか楽すぎてアタシ達殆ど収穫しかしてないんだけど……ホントにこんな生活させてもらってていいの?」
「ああ、そのうち『自動収穫機』を造るからもっと楽になる。お前達は余った時間を自由に使ってくれ、宿場町なら身分に関係なく往来できる。生活費は余分に取っていいから本を買うなり好きにしてくれ」
「……何の話かわからないけど……アタシ達は今、ご主人のために生きてるんだ。ご主人の夢のために無駄遣いはできないよ。大丈夫、アタシ達……今凄く充実してるんだ! 誰かのために働くの……初めて嬉しいって思えてるんだよ」
「ミネラも同じ、だから御主人様とマインお姉様は気にしないで目的を遂げて下さい。私たちは二人の帰る家をちゃんと守ってますから」
「……アスナさん……ミネラさん……」
二人は笑顔で言った。
どうやら余計な気遣いだったようだ。
「頼んだ。じゃあマイン、二階へ行こう」
「かしこまりました」
◇・『小麦』×64を20ストックしました。
・『スイカ』×64を5ストックしました。
・『ビートルート』×64を12ストックしました。
・『カリン』×64を25ストックしました。
------------------------------------------
〈二階 書斎部屋〉
収穫で手に入れた物をインベントリに収納し、俺達は家の二階に作った書斎部屋へ入る。
目的は『新たな課金』と……素材がないために保留にしていた【エンチャント】。
略奪者を退けたあと、何故か住民達からお礼としては大げさすぎるほどのアイテムを貰った。マイン曰く、『親しまれ英雄となったラインさんへの当然の感謝の意』らしいが……それにしても過剰すぎる量だ。
その中に、エンチャントに必要な素材があったのだ。
「ついに……エンチャントを行えるのですね」
そのエンチャントに必要なのがウィッチがドロップした『エンチャントブック』。ルーン文字で記されたそれには付与効果とその詳細が書かれており、その文字を理解し『言霊』に乗せることで記された効果を道具に移す。
その儀式めいた作業をエンチャントと呼ぶ。
言うは易しだが、この作業が可能な者はオーバーワールドには中々いない。
まず癖のある日本語を解読できる者がいないからだ。
(ーーと、これがこのオーバーワールド内に於いて行う通常のエンチャント方法……だが、【箱庭】を使える俺は『もう一つの方法』がある)
それが【エンチャントテーブル】というものを箱庭の付加価値ーー新たな仕様に付け加えるやり方だ。【合成(シンザシス)】のように、俺のみが扱えるエンチャント法。
お礼品の中に、それに必要な【ラピスラズリ】があったのは幸運としか言い様がない。希少価値の高いその蒼色の鉱石には『付術』という事象のマナが宿っていて、触媒にする事で武器や道具に様々な効果を付与させる。
本棚に囲まれた書斎中央で俺は【箱庭(クラフト)】を開始する。
(総資産がだいぶ減っちまうが……惜しんでいてもしょうがない、先行投資だ。これがあればエンチャントし放題ーーその材料は揃った)
俺は手持ち最後の【ダイヤモンド】と【黒耀石】を使う。もしもの時のために全て使ったり売ったりせずに残しておいた虎の子、これらを素材にして【エンチャントテーブル】を作成した。
◇【エンチャントテーブル】
------------------------------------
・エンチャント作業が行える台座。
(使用素材 ・本 ・ダイヤモンド ・黒耀石)
------------------------------------
項目の中に、【エンチャントテーブル】が出来上がる。本のような物が表示されたその下には『赤色の枠』と『青色の枠』がある、どうやら赤色の方に付与させたい武器や道具、青色の方に【ラピスラズリ】を入れるようだ。
(なにで試すか……どんな効果が出るかはラピスラズリに含有されるマナや濃度によって決定されるようだ……いきなり黒耀剣に付与させる前に、身に付けて手離さないもので試作するべきだな……またいつ鉱石が手に入るかはわからない……だとすれば、『これ』だな)
それを手にしてから全てが引き寄せられるように上手くいっている、最初の試作品は決定した。
視界に投影されるそれに則(のっと)り、道具と鉱石を入れる。すると、右側に表示されていた〈効果欄〉に3つの選択肢が出てきた。選択肢はルーン文字で表示されている。
(……最初にハコザキに【知恵の果実】を食わされてなければ解読不可能だっただろう。予期していたのか……偶々か……いや、全くの偶然だろうな……あいつがそんな事を気にするはずがない)
だが、その偶然に感謝する。
選択するべき効果は見てすぐに決めた。
情報が簡単に掴めたのも、良い手足(ふたり)をパートナーにできたことも、最初に良い町に来れたのもーーこれを探して得た幸運だ。
◇【エンチャント発動】
・経験値を使用し、『ギルド紋章』に効果【幸運レベル3】を付与しました。
[【幸運Ⅲ】……魔獣が極レアなアイテムをドロップする、日常生活にも幸運がついてまわる]
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