65 / 76
第二章 楽園クラフトと最初の標的
#041.エンチャントしよう②
しおりを挟む更に、エンチャントブックに付与された効果を付与させる作業に入る。既にエンチャント付与された本があれば使用するのは【金床】だけだ、それもこの家に設置してある。
「…………このエンチャントブックに付与された効果は【無限】だ。幸運にもレアな付術だ」
本を読み、ルーン文字を解読した俺はマインに告げる。エンチャント法を間近で拝見したい、とマインはすぐ横で瞳を輝かせながら凝視していた。
「………? ソウル様……申し訳ありません。やはりマインにはルーン文字は難しいようです……発音が全く聞き取れませんでした……」
「普通はそうなるから気にしなくていい、俺も一年前は全く理解できなかった」
ルーン文字の発音は、理解していなければまるで全く別の生物が放つ言葉のようにしか聞こえないのは俺も知っている。かろうじて習得できる異種族言語とは丸っきり別物ーー宇宙にいる生命体が使う言語、イメージとしてはそんな感じだ。
俺はこちらの言語で日本語の【無限】を説明した。
「無限……果たしてどのような効果があるのでしょうか?」
「その前に説明しておくと……付与は何にでもできるわけじゃない。付術はできる物とできない物がある……それを踏まえて説明するとこの【無限】は『弓』にしか付与できない文字だ」
「……『弓』だけ……ですか?」
「あぁ、だが効果はとてつもないものだ。文字を付与された弓で射った矢は『消費されずに無限に射てる』」
「む……無限にですか!?」
「それだけでルーン文字とエンチャントが如何に危険な代物か理解できるだろう。学者達や宗教家は一部禁忌として扱うくらいだ。まぁ、長い歴史の目から見てもルーン文字は殆どが謎とされていて解読者は数えるほどしかいないし、発音や文字にして伝えようにも理解できる者がいない故に未だに研究対象にしかなっていない。世に広まっているのは大体が漢字一文字、事象元素文字を元とした魔術付与が一般的だ」
「……ではこの【無限】というのは……」
「……偶然、二文字を解読できる奴から聞いた効果さ」
大賢者【ナイツ】。
若くして二文字の組み合わせたルーン文字を解読した奴。いつだったか……学会にその効果を発表した場に偶然居合わせたから記憶している。
この【無限】付与が世に広まれば、世界の均衡ーー勢力図を壊し兼ねないと帝国内で一時期騒ぎになった。だからこの効果を知る者は帝国の一部の奴だけ。
図抜けた軍事力を帝国が有しているのも、これが一端となっている。帝国の弓兵部隊が他国よりも優れているのは、このルーン文字の効果でもあった。
「まぁとにかく……レアだけど俺に射手スキルはないからこれは一旦保留だな」
「…………」
「……? どうかしたか? マイン」
「ソウル様、是非、マインに弓とそのルーン文字を与えて頂けないでしょうか?」
「……え?」
「身分を越えた図々しい申し出である事は重々理解しています。処罰は如何ほどにも受けますが……願いを聞き届けては頂け」
「かたっくるしい言い回しはいいから……なんで欲しいのか話してみてくれ」
マインは恐る恐る打ち明けてくれた。
俺の力になるためにどうしたらいいか、自分に何ができるか、何が最適解かーーレッドストン鉱山の一件の後常々考えていたらしい。
導き出したのが……射手スキル修得による支援攻撃。
イルナに相談したのちに自身もそれを望んで、勉学の合間に指南を受けたらしかった。
「……なるほどな」
「ソウル様に無断で勝手にイルナさんに頼んでしまい、申し訳なく思っています……道具が望みを得るなど恥知らずな振る舞いをした事を心苦しく……」
俺は頭を抱える。
マインの言い分にではなく、どんどんと堅苦しい話し方になっていくマインに。
(忠誠心に比例してそれが言語に影響しているだけ、とイルナは言っていたが……それが問題なんだよ……)
そんなものは望んでいない。
もっと年相応にフランクに接して欲しいのだが……距離が縮まれば縮まる程に畏まった対応になるのは如何ともしがたい難題だった。
「まぁいいか……マイン、普通に話していいから……」
「はい、かしこまりました。ですが、処罰を受けようともマインはソウル様のお力になれればそれで構わないのです。これは……マインの望み、マインがしたい事なのです」
話し方はともかく、遠慮がちだったマインが初めて俺に申し出た望みだ。喜ぶべきだろう、当然、二つ返事で了承する。
「わかった、じゃあ弓は俺が作ろう。嫌ならアドオンに頼むが」
「滅相もありません、マインの初めてはソウル様にだけ捧げると心に固く誓っています。是非、ソウル様のものをマインの初体験として」
「ストップ、わかった」
一階には二人がいるんだから誤解を受けそうな言い回しは勘弁してくれ、と思いながらクラフトを開始する。
弓の作成は棒3つと糸3つ、手軽にすぐ作れる。強度を考えてネザーで手に入れた木材【ネビリム】を解体(バラ)して棒として使う、これなら簡単には壊れないだろう。
◇【黒耀の弓】を合成により作成しました。
◇【黒耀の弓】にエンチャント【無限】を付与しました。
「ありがとうございますっ! 早速試し打ちしてきても宜しいでしょうか!?」
「軽傷だったとはいえ右肩を怪我をしてるんだ………少しだけな」
止めようと思ったが、嬉しさを抑えきれない表情のマインを見てついつい甘やかしてしまう。喜んでくれたようでなによりだ。
さて、俺も『新たな課金』をするとしよう。
数日後には【塔】に入るんだ。
正面ルートから行くつもりはないし、イルナも同行する。目的はアーティファクト探索と回収だけ、見つからないように魔獣も回避するつもりだからレッドストン鉱山の時のような戦闘の心配はいらないだろう。
(一つ、懸念があるとすれば……町を襲うよう仕向けた黒幕の存在。察知されてすぐに逃げられちまったが……目的は『偵察』の可能性があるな)
この町の裏側で起きている異変を敏感に感じ取った奴が適当な駒を見つけて煽った。だとするならば、その渦中にいる俺にあたりをつけるのも時間の問題ーー新たな力を身に付けるのは急務だった。
(防衛用の課金だけにするつもりだったが……コイン稼ぎの目処はできた。更に飛び抜けた【チート能力】に課金するとしようか)
0
あなたにおすすめの小説
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。
三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。
……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」
その言葉は、もう何度聞いたか分からない。
霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。
周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。
同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。
――俺だけが、何もできない。
反論したい気持ちはある。
でも、できない事実は変わらない。
そんな俺が、
世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて――
この時は、まだ知る由もなかった。
これは――
妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる