名無しの最強異世界性活

司真 緋水銀

文字の大きさ
24 / 72
第一章 名無しさんの最強異世界冒険録

第二十二話 始まる戦い

しおりを挟む
チュンチュン…

「う……ん…ふぁぁ……」

騒がしかった昨日から一転、私は穏やかな朝を迎える。
天気はどうやら快晴、大会日和だ。

「ぅうん……」

アイも元気になったようだ、隣で裸で寝ていた。
ちなみに私も裸だった。
女同士で一緒の布団で二人共裸だったが、百合展開ではない。
ただ単に昨晩宿に戻ったあと男の姿に戻り、情事に及んだだけ。
そして寝る時に女の姿になり、そのまま朝を迎えたのだ。

それに二人共服は一着分しか持っておらず、アイは昨日の戦闘でボロボロになってしまったから捨てたのだ。
そして金がないので服や装備などが買えない、アイには今日一日寝ててもらうか。
佰仟は手持ち金を全て俺達の部屋に置いていった。
だが、いくら自由に使っていいと言われたからといって人のお金を好き放題になんて使えるわけがなかった。
佰仟は自分の宿に戻ったのだろうか。

「まだ朝早いけど…佰仟の宿まで行ってみよっかな」

私は昨日教えてもらった佰仟の宿へ向かった。

--------------

………

時刻はスマホ時計で朝の7時半。
町が賑わうにはまだ早いが露店の店主や業者達が市場通りを賑わせていた。

「おい、昨日門番の兵士が三人も殺されたらしいぞ」
「聞いたよ、バラバラだったみたいじゃねえか。森の『名獣』の仕業なんじゃねえかって皆怯えてるよ」

………

兵士達は助けられなかった。
アイの名前の力【氷の造花】はどうやら、既に時間が経過してしまった命は再生できないようだった。

……ごめん、俺がもっと早く駆けつけていれば…

……だけどアイは間に合ってよかった。
もう少し遅れていたらアイも失うところだった。

「……もっと強くならなくちゃ」

そのためには経験を積み、色々な能力を手にいれなくちゃ。

--------------


<佰仟の泊まる宿、部屋の前>

コンコン…

「佰仟、いる?」

部屋の奥の方からドタバタと音がする。

「な、ナナさん?!す、少し待っててくれ!」ドタバタ…

こんな朝早くからきて申し訳ないな…

ガチャっ

「さ、さぁ!入ってくれ!」はぁはぁ…
「う、うん、ごめん。お邪魔します…」
「そ、それでどうしたんだ?こんな朝から」
「ううん、ただ昨日の事があったし大丈夫かなって」
「し、心配して来てくれたのか」
「それはそうだよ」
「あっ…ありがとう。だが心配はいらない。戦闘事に関しては誰にも負けない自信はある」
「そっか、それならいいんだ」
「実は…俺からもナナさんに話があるんだ」
「うん?」

私は佰仟が研究所の女と接触した時の話を聞かされた、昨夜アイが敵から聞いた話の内容と一致している。

「……」

私もこれまでの経緯と共に昨夜あった事も佰仟に告げる。

「…まさかそんな事があったとは」
「研究所…リーフレインを狙って何をするつもりなんだろ…」
「それだけではない…その切裂女は標的リストと言っていたのだろう…きっと他にも標的はいる」
「佰仟もその一人かもってこと?」
「どうだろうな…俺の場合は仕事の依頼だった、もしかしたら研究所の手先となれる人物を見極め、勧誘に乗らなかった場合消しているのかもしれない」
「勧誘に来たってことは…佰仟は勧誘に乗るって思われてるって事?」
「……実際手を汚す仕事もした事がある、そう思われても仕方ない。だが、閃光騎士は気位が高いと聞く。恐らく話に乗らないと判断され消そうとしているのだろう」
「……それぞれ最強と呼ばれる二人を勧誘か殺そうとしてる……つまりまとめると…」
「研究所は使える人間を集め、話に乗らない…邪魔な有力人物を消そうとしている」
「加えて未知の巨人の存在…どこかへ戦争でも仕掛ける気なの?…」
「しかし話をしていても全て予想の範疇に過ぎない…実際に研究所……それも裏に所属しているやつらを締め上げるしかないだろう…」
「…そうだね」
「ちょうど大会には二人出場すると言っていた、ナナさんが倒した切裂女がその一人だとしてもあと一人残っている」
「そっか、佰仟が優勝すればその勧誘女も接触してくるだろうしね」
「い、言っておくがその女とやましい事は何もっ!」
「うん、ごめん。聞いてない。じゃあ佰仟、今から勝負しない?」
「!?」
「大会決勝ではさ、私達が当たる可能性が高いじゃない?研究所を探るためには佰仟に勝ちを譲らなきゃいけないし。でも強くなりたい私としてはそれじゃ消化不良だし…だったら今戦ってくれないかなって…」
「………」
「えーと…ダメかな?」
「………ナナさんすまない、それはできない…」
「あ、ごめん…そんな遊びみたいにできないよね…最強の傭兵なんだから…」
「俺はナナさんに手は出さない、たとえ殺されようとも。ナナさんの方が強くても」
「!」ドキッ
「俺はキミを守るともう決めたのだから」

……
不覚にもときめいた…
やっぱり女の姿が長いと思考や性格も女の子っぽくなってしまうのだろうか……
このままではまずい、さっさと大会を終わらせて元に戻ろう。

「わ、わかった!じゃあまた闘技場で!」

バタン!

「…ふぅっ」

私は佰仟の部屋を慌てて出た。
このままでは女の子として一生を終えてしまいそうだ。

……さて、大会まであと三時間くらいある。
街を探索してみようか。

--------------
----------
-----

<街から北東に20km、山の麓の森>

「はぁっ!!」ズバッ

…ドスゥゥゥゥンッッ!!

「はぁ~なんか獣の数増えてきてないかにゃ?疲れたよ~」
「ふむ、そのようだ。このルートで正解のようだな」
「…本当に二人でやるのかにゃ~?アイちゃん達待たないの?」
「…何か悪い予感がしてな、巨人の件に関しては急いで調査した方が良い気がするのだ。だが案ずるな、そこまで深入りする場合退いて援軍を呼ぶ」
「是非そうしてほしいにゃ…こんなジメジメ暗いとこ嫌だよぅ」
「風は何か感じるか?」
「ここの大分下に大きい空間があってそこに水を感じるにゃ、大きさ的にたぶん地底湖かな?そこから更に下にも……たぶん部屋があるにゃ。風の当たり方が土壁の音と少し違うような気がする…」
「充分だ、相変わらず素晴らしい精度だ」
「えへへ、まぁにゃあ?」
「では行ってみるとしよう」

………
……


「随分と広いな…」
「にゃー、綺麗なところだよぅ」
「……ここで間違いなさそうだ、地面の岩が削れている」
「何これ…足跡だとするとでかすぎないかにゃ?」
「巨人がいるのはこれで間違いないな、ナナシの話だと20mはあるらしいから……ん……………エレ」
「ん…誰か上から来たにゃ」

コツ… コツ… コツ…

「………」

「……旅人かにゃ?」ひそひそ…
「…そーいうわけではなさそうだな」

ガコッ

「……」ピッ ピッ ピッ 

「壁の中に操作盤…どうやら事情通のようだ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………

「にゃ、隠し通路だよぅ」
「うむ、後を尾けよう」

--------------

コツ…コツ…コツ…コツ

「……長くて広い坂道だにゃ…どこまで下りるんだろぅ…」
「かつての炭鉱の名残か…レールの跡がある」
「ねぇ…罠ってことはないのかにゃ…?とっくに気付かれてるのかも…」
「構わん、そうだとしても殲滅してやろう」
「さっきと話が違うにゃ!?」

コツ…コツ…コツ

ピタ

「……」

ガーッ


「……また扉に入ったにゃ…風の反響する感じだとここは部屋みたい…入ったらバレるにゃ」
「しかし…随分とハイテクノロジーだな。操作盤といい自動扉といい…」
「炭鉱を研究施設に再利用してるってとこかにゃ」
「…む、会話が微かに聞こえるな。エレ、内容は聞き取れるか?」
「任せてにゃ」

--------------

◇『記憶の記録』

その室内には炭鉱時代からは考えられないような色々な設備が存在していた。
そして…そこには白衣を纏った優男が一名、部屋に入った女性を出迎える。

「あれ~?どしたのさ『ヒト』。大会に数字の男と有能そうな人物の勧誘に行ってたんじゃないの?それにティアラップは?」
「……それどころじゃなくなったのよ…実験計画を早める必要があるわ」
「なんで?巨人の準備もまだなのに~、それに数字の男の能力に関しては所長に絶対手にいれろって言われてたんじゃないの~?」
「…代えになる能力のアテはついてるわ、それよりも絶対に消さないといけない人間を見つけたの。あれを存在させておいたら必ず研究所の障害になる、下手すると研究所の全てを失いかねないわ」
「あれ~?いつもと違ってえらい弱気だね~?最強といわれる傭兵やエルフより厄介なんだ~?」
「……あれは恐らく『全能』と同じタイプの能力よ、ティアラップは一撃で消滅したわ」
「ふ~ん、じゃあキミが操って手駒にすればいいじゃん」
「……できたらやってるわ」
「ま、いいや。リーフレインの事はいいの?」
「後でどうとでもなるわ、それよりもその女は大会に出る。少なくともあと一日はこの近くにいる今しかないのよ。準備を早急に進めておいて、『ブリッジ』が来たらここの廃棄と共に計画発動よ」


--------------

エレは自身の能力を使い、室内の会話に目を閉じ耳を傾けていた。

「………『計画発動よ………』………え?」
「…?どうした?続きは?」
「……な、何で……」
「おい?何と言っていたんだ?」
「………」

「…火山を噴火させて、ある町を消滅させる…名前による『人為噴火実験計画』…」
「!!」
「そのための…」

キンッッ!!

「にゃっ!?」

突如剣の交差するような金属音が耳に響いた。
事態にいち早く気づいたリーフレインが双剣を抜いていた。
部屋の扉の前にいた二人の頭上から

短刀を手に持った少女が降ってきたのだ。
金属音はリーフと少女の刃による響音だった。

「……エレ」
「な、何なのにゃ!?いきなり!人が降ってきたぁ!」
「エレ、今すぐ逃げろ」

「侵入者発見であります、奇襲は失敗。外見、背格好などから察するに排除目標、エルフの騎士リーフレインかと思われるであります。暗殺ギルド頭領、忌み名を付けられし世界に現存する二十人の悪魔『殺(キララ)』……参るであります」













しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...