名無しの最強異世界性活

司真 緋水銀

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第二章 命名研究機関との戦い

第四十九話 名無し一行vs研究所幹部達

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タッタッタッタッ!

俺達五人は研究所、裏の空間の通路を走り続けていた。

「ほ、本当にこちらで合っているのでございますのでしょうか?」
「扉が多すぎてわからないわよ、でもエレさんがいるから大丈夫!」
「にゃ!風の反響音でわかるよぅ!そこら中にある扉の先には部屋が創られてない!全部何処かに通り抜けて風が消えているにゃ!」
「まるで迷宮だ」

通路はまるで意思をもつかのように平坦だったり曲がりくねっていたり一本道かと思えば横に脇道があったり様々な表情を見せる。

「苛々する場所であります」
「本当だにゃ!いっその事空間ごと破壊してやりたぃよぅ!」
「……!皆さん何か違う景色が見えてきたでございます」

しゃんの言う通り、通路の先には辺り一面鏡のような空間が見えてきた。

「……ここは…?」

とても奇妙な空間だった。
辺り一面…通路の壁床天井が鏡のようで全ての景色をお互いに乱反射させている。
そのせいでただでさえ無数にある扉が前にあるのか後ろにあるのかさえわからなくなっている。
より奇妙なのは、その中に俺達五人が映しだされていない事。
これは単なる鏡ではない。

「ここは僕の創った空間……まるでアートのようで美しくないかい?」

乱反射する扉の一つが開き、中からまるで貴族のような格好をしたウェーブのかかった綺麗な白い髪をした男が目の前に現れた。 
スラッとした体躯に長い髪、睫毛。一見しただけだとまるで女性のようだ。

「美しく名を名乗ろうかい、僕は」
「リヴェルちゃん!アタシも参戦するわよ!」

どおおぉぉぉんっっ!!

天井に映し出された実像の扉からもう一人、大男が降ってきた!

「……貴様いい加減にしろ、僕以外が僕の名を軽々しく口にするな」
「あらん、貴方がナナシちゃん?中々可愛らしい顔してるじゃない」

女性の格好をした大男はもう一人の男を無視し、俺達に焦点を当てる。

「けど周りはブスばっかね、貴方女性の趣味悪いわよ」
「「「なっ……!!」」」

周りの女性陣がカチンとした顔をする。

「今日からアタシの物にして可愛がってあげるわよ、安心してん」
「……」

ぞぞっと背筋に悪寒が走る。

「残念だけどこの人はもうアタシの人なの、あんたになんかあげないわよ」

アイが幹部二人と俺達の間に入るように前へ出る。

「みんな、先に行って。今度はアタシが……」
「ダメにゃ」

ボオッッ!!!

瞬間、炎が幹部二人の足下から舞い上がり二人を包み込んだ。

「アイちゃん、挑発にのるんじゃないにゃ。君がしなきゃいけない事は何なの?」
「……!………ごめんなさい」
「わかったんなら先に行くにゃ、私が相手する」
「けど……相手は二人で…」
「う…うちがサポートするでございます。皆様は先に」
「よろしくにゃ、人魚ちゃん」

「わかった、エレ、しゃん、任せる!」
「っ!!気をつけてっ!」
「……」

俺、アイ、殺は戦いを二人に任せ、開けられた炎の道を走り抜ける。

「行かせると思ったのっ!?」

ゴオッ!

炎の中から当然とでもいうように、炎をものともしない女男の巨体が俺達に襲いかかる!

「邪魔させると思ったのかにゃ!!」

その瞬間、俺達を避けるように後ろから竜巻のような突風が炎ごと巨体の男を吹き飛ばした。

ビュオオオオオオオオオオオォォォッ……!

俺達は風に後押しされるように、鏡の空間を抜けた。

スタッ!

「んもぅ!リヴェルちゃん!どうしてわざと行かせるのよっ!」
「美しいじゃないかい、仲間の元へ一刻も早く駆けつけたいという思いは。それを邪魔するほど僕は無粋じゃない」

幹部二人は話しながらエレとしゃんと対峙する。

「なに、先には『恐』と『魂』がいるじゃないかい。『ゼロ』と所長もね。僕達がやらなくても彼らは死ぬ」
「まぁねん、じゃあアタシ達はここにいるブス達を片付けるとしましょうか」

「やってみろにゃ、キモいんだよ」
「き、キモいって何語なんでございますか」

第二戦
『四大元素のエレメント&人魚しゃんつぉーね                
           VS『反射』のリヴェル&『不滅』のアサナト 』


--------------

タッタッタッタッタッタッ…

「ナナシ!まだ部屋は見つからない!?」

スキル
【エレメント(風)】【蛇の特性】

「いくつか部屋はあるけど中に人の気配はない、まだだ」
「…お姉ちゃんっ……もう少し、待っててっ…!」

ぐぉんっ

スキル
【???】

「!!」
「んあっ!!……な、なにっ!?……これ…」

何か能力を使われた!?
どこからだ!?

「あ………あ………」

ブルブルと震え出すアイスメリア。
一体何の能力なんだ?
俺も少しの気だるさと薄ら寒さを感じる。

「侵入者……殺す…」ブツブツ…

よく目を凝らすと薄暗く続く通路の先に上へと続く階段があり、その一段目には爪を噛んでいるボサボサ頭の少年らしき人物が座っていた。

「あいつか…っ!」

俺は閃光速度で通路を駆ける。

ぐぉぉぉぉぉんっ……!!

「……っう……!?」

しかし少年に近づけば近づくほど何か言いようのない気だるさと震え、寒さが身体中を包む。

俺は道半ばでうずくまった。
この悪寒の正体は……『恐怖心』?
アイも俺も…あの少年に『恐れ』を感じている…?
あの年端もいかないような少年に?

「僕に…近づくな……」ブツブツ…

近づこうとするが身体が動かない。
少年は懐から包丁のような小刀を取りだし、徐々に俺に近づく。
少年が近づけば近づく程、恐怖心が増していくような気がする。

「刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す…」ブツブツ…
「…っ!」

ピッ

『殺』

「!!」

すると見覚えのある文字、スキルが俺の心臓辺りの胸に刻まれた。

「………」

スタスタ………

後ろから俺の横を殺が通りすぎる。

「殺……何で……」
「よく見るであります」

俺は胸に刻まれた文字を見る。
上から見たから一瞬わからなかったがよく見れば『殺』の文字が逆さま。逆字で上下反転して描かれていた。

「新たな技であります、上下反転して文字を心臓に刻むと負の感情を『殺』せるであります」

そういえば俺は生きているし、身体から恐怖心が取り払われた気がする。
後ろを見るとアイも既に何ともなさそうだった。

「やつも私と同じ忌み名の一人であります、恐れの『恐祟(きょうすい)』恐怖心を相手に植え付ける能力者であります」
「忌み名の……殺……っ」ブツブツ…
「恐怖心……殺は平気なのか?」

殺にはどこにも文字が刻まれていないのにあの少年と対峙していても平然としている。

「私には恐怖心などないであります、いつでも任務のためなら死ぬ覚悟であります、……犬死には御免でありますが」

そう言って殺は恐祟という少年と対峙する。

「先に行け、であります」
「殺……ありがとう。だけどこれは任務じゃない、死んだら許さないぞ」
「……また、私としたいでありますか?」
「したかろうがしなかろうが関係ない、君とはずっと俺達と一緒にいてもらいたいから」

「……了解であります」

「そうはいかないだーるる」
「「!!」」

後ろから声が聞こえると同時にアイの少しの悲鳴が響く。
見ると謎の女性が後ろからアイの首を片腕で締め上げ、拘束していた。

「二人共、ごめっ…!」
「喋るなだーるる、お前らも。動いたらこの女の魂を抜くだーるる」

「……魂?」

「あーたしの名前は『スピリット』だーるる、能力は人の魂を自在に操るんだーるる。魂を抜かれた人間は廃人になっちゃうんだーるる」
「……っ!」

閃光で動くにしても位置が悪い、アイにまで衝撃がいってしまう。
ここは佰仟の時間操作で……っ!

「動くなと言ったぞ……」ブツブツ…

ピトッ

「っ!!」

気をとられてる間に俺と殺にいつの間にか触れていた少年。
その瞬間、物凄い負の感情に襲われた。

「「くっ、うっ……!!」」

がくっ

「僕に触れられたら…今までなんか比べものに…ならないほどの…恐怖や負の感情が…おこる…」ブツブツ…

今度は殺までもがうずくまる。
これはまずい…心が…立ち上がれ…ない……
スキルを……使って……………

「なーんだるる、意外と大した事ないんだーるる。じゃあこの女とそっちの女は始末しちゃおーるる」

スピリットはアイに、恐祟は殺に、それぞれトドメを刺そうとする。

「や……め……」

「じゃーん!そんなピンチな貴方の元に登場なんだよっ!」

聞いた事のある声で見た事のあるシルエットが俺も喰らった事のある能力を使い、不思議な落とし穴を幹部達の足下に造り二人の元から引き離す。
幹部二人は突如出現した落とし穴を回避するため、アイと殺から一旦距離をとった。

「「…!ちっ!!」」バッ!

「みらくるかいふく~!」

俺と殺に手をかざした不思議ちゃん。
不思議な事に二人の負の感情は消え去った。

「よかったんだよー成功したんだよっ」
「不思議ちゃん、どうして…」
「どうしてじゃないんだよっ!初めてまで捧げた貴方を実験体になんかさせたくないからに決まってるんだよっ!」
「…また他の女と寝たでありますか」

「いや、……うん」

殺は呆れ顔をした。

「さぁ先に行くんだよっ!」
「誰だか知らないでありますが…手を貸すであります」

「……わかった、ありがとう!アイ、行くぞ!」
「う、うん!」


  第三戦
『忌み名の殺&不思議少女VS忌み名の恐祟&魂のスピリット』


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