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第二章 命名研究機関との戦い
第六十五話 リーフレイン③
しおりを挟むチャプッ……
「だ…旦那様……私は…どうすれば…」
「…ほら、ここに」
俺とリーフはお互い…産まれたままの姿になり、浴室にいる。
豪華な部屋で浴室は広かったが浴槽は二人浸かれるほど大きなものではなかったので俺が先に体を流し浸かるとリーフの入れるスペースはほぼなかった。
それで少し困った顔をしたリーフが愛しくて…少し笑ってしまう。
俺はリーフに自分の上に乗るように促した。
「…だ…旦那様の上に…………………し、失礼します……」
チャプンッ…
リーフは申し訳なさそうな顔をして、お尻を向けて俺の太ももに座りもたれかかってきた。
しかしそれでも全く重さを感じない。
ポニーテールに纏めた髪が湯気で濡れ、俺の鼻をくすぐる。
「ほら…体重かけていいよ」
「は…はい…」
たどたどしく、ゆっくりとリーフは俺に全体重を預けた。
それでも…まるで羽根のような軽さだ。
ギュッ…
「!」
俺が後ろから抱きしめるとリーフは少しピクリと肩を弾ませた。
「ご…ごめん…怖かったか…?」
「……………」
リーフはそれに答えず、返事の代わりに俺の手を握りしめた。
「旦那様……やはり…私がこんな事をするのは…迷惑でしょうか…?」
「………え?そんな事は……」
リーフの質問の意図を俺は考える。
全然迷惑でも何でもないしむしろ愛しく感じているのに…リーフは何か俺に違和感でも感じているかのように接している。
それがたぶんリーフが気を取られている別の何かだと感じた俺は質問した。
「何で…そう思うんだ…?」
「……………だって…私以外の別の女性には……こんな風に…腫れ物に触るように扱っていましたか…?」
「……」
確かに他の皆と行為に至った時は…初めての子に気は遣ったものの、壊れものを扱うように繊細にはしていなかったかもしれないけど…。
今回のリーフは少し事情が違う。
リーフは……したくもない行為を無理矢理させられたんだ。
普通ならこんな事ができなくなるほど…トラウマになっていてもおかしくない。
だから…。
「………」
しかし、それをリーフに伝える事はできない。
そんな事を言って嫌な事を思い出させたくない。
……けど、本当にそれでいいのだろうか?
何かお互いの思いがすれ違っているような気がする…。
一体…リーフは俺に何をしてほしいのだろうか。
古心の能力でリーフが今、何を考え、俺に何を求めているか知りたい。
けど、それだけはしない…したくない。
この答えは俺自身が見つけ出さなきゃいけない、そんな気がするから。
「………やはり……汚れた私の体など…旦那様に差し出すわけにはいかない……旦那様は優しいから…無理していたのだろう…?すまなかった……私は上がるよ…旦那様は」
「!」
ギュッ!
それを聞いた俺は瞬間的にリーフを思い切り抱きしめ、引き留めた。
ここで離してしまったら、リーフはもう戻らない気がする。
そんな気がしたから。
そして、俺は【管理者の力】で全てのパラメーターを大幅に下げた。
「前にも言った、君は少しも汚れてなんかいない。ずっと綺麗なままだって。……俺は怖がってた、いくら自分がリーフの力になりたくても…いくら俺が君を抱きたくても…俺も男だからきっと君を怖がらせてしまうんじゃないかって。俺が君を壊してしまうんじゃないかって。そう思ったから」
言葉を一旦切り、俺は続ける。
「だから俺にはこんな事しかできない、今俺は君に力でも勝てない、もし怖かったなら遠慮なく突き飛ばしてくれていい、きっと今の俺なら軽くぶっ飛んで気絶する。君を抱きたい、今の君を」
「…………え?」
精一杯リーフを傷つけないように俺の気持ちを伝えたはずだったのにリーフは驚いた顔でポカンとしていた。
何か変な事言っただろうか俺…。
「………もしかして旦那様…私の『心』を…読んでいないのですか?私は…てっきり…私の記憶や思いなど旦那様には全て筒抜けなのかと…」
………ん?
何の話をしてるんだろう…?
俺…リーフに伝えてなかったっけ?仲間の心を無闇に読んだりはしない。
この能力は相手を視界に捉える事で心を読めるんだけど…オンオフを切り替える事もできる。
決して自動で受信するわけじゃない。
プライバシーの侵害だし、よっぽどじゃなきゃ使わない。
そういえば自分の能力についてそこまで詳しくみんなに説明した事はなかったけど…。
けど今それが何か関係あるのだろうか?
「………ふふ、あははっ!そういう事だったのか…なるほど。だから旦那様は……」
初めて会った時のようにリーフは笑った。
よくわからないんだけど…できればちゃんと説明してほしかった。
「……旦那様……全て説明致します……聞いて頂けますか…?」
「……勿論」
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「………という訳です。私は……汚されたという事実に落ち込んでいるのではありません。そんな事はこの世界では間々ある事…まさか自分がそんな目に…などと甘い考えをしていたのではありません」
「………」
「…それよりも…そんな男との快楽に溺れ…一時でも身を委ねてしまった事実を…旦那様に知られるのが怖かった…だから私は記憶を失くした、それだけなんです。…てっきり再会した時に全て知られてしまったのかと思っていたのですが…」
…なるほど、それでよくわかった。
リーフが一番恐れていたのは…そのオークの能力によっての行為での快楽に負けて…心酔してしまった事により俺に軽蔑される事だったんだ。
「身体が汚されるのは別に構わない…しかし、心までもを一時奪われてしまった…それが、恥ずかしく…悔しかった」
心が傾いた事を俺に読まれ、軽蔑されていると思った。
だから俺があんなによそよそしい態度をしていたと勘違いしていたのか…
俺はリーフが男に恐怖を感じて壊れてしまうことを恐れ、無闇に踏み込みのを躊躇った。
それですれ違っていた。
「私は戦士だ、戦場に一足踏み込んだ時からとうに女は捨てているし……例え犯されようが心を伴わない行為など無為に等しい。そう思っていたのですが…」
それでも…例えそう思っていたとしても。
普通ならそこまで強くはいられない、改めてリーフの強さには驚かされる。
「…全てを聞いて…やはり軽蔑されて…しまいましたか…?」
「そんなわけないだろう、それに心が傾いたって言ってたけど…それは能力によって無理矢理そうさせられていただけだ。君は負けてなんかいないよ」
そう、それは麻薬みたいなもの。
そんなんで心が傾こうが気に病む事なんか全くないし、自分を責める必要なんか一切ない。
そもそもが無理矢理なんて論外だ、そんな事をするやつは例外なく地獄に落ちればいい。
………なんか、最近暴力的な考えが増えてきたような気がする。
まぁそのオークの事なんかもうどうでもいい、これからのリーフの事だけを考えよう。
「旦那様…」
「リーフ、君は汚れてなんかないし、仮に自分がそう思っていたとしても……俺は、今の君を抱きたい。君の『初めて』が欲しい」
リーフは照れくさそうに微笑み、俺の方を向きしっかりと俺の目を見て言った。
「……はい、旦那様。私の『初めて』は貴方に捧げます」
そして俺達はキスから一つになる。
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