名無しの最強異世界性活

司真 緋水銀

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第二章 命名研究機関との戦い

第六十八話 名無しの忙しい一日

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カツ…カツ…カツ…

俺とルールは今、城の兵士に案内されて城内にある独房にやってきていた。

事前にルールを通して王様に頼んであった囚人との面会のため。
これからどうするかの話し合いを終えて時刻はもう夕暮れ。
みんなはスイートルームでくつろいでもらっている。

「では、殿下。ナナシ様。囚人達は教皇様の御力により能力を封じてはいますが…お気をつけ下さい」
「ええ、ありがとう。けどけど心配は不要よ、ナナシがいるもの」

兵士は独房へ続く扉の鍵を開けた。
開いた扉からは牢獄特有の何ともいえない変な臭いがした。
兵士は中に入らないようで俺達が中に入ったのを確認して鍵をかけた。
普通なら兵士も立ち会うのかと思ってたけど…ルールが話を聞かれないように気を利かせてくれたのかな?

「行きまきましょう」

巻き巻き?早口言葉?
前から思ってたけど逆に話しづらくないのかなルールの口癖…。

カツ…カツ…

凛とした表情で先導してくれる熱血お姫様。
艶のある綺麗なウェーブの黒髪からはいい匂いがする、牢獄が怖くないのかな?

「おい、みろよ!王女様が来たぜ!ひゃっはー!王女様こっち向いてー!」
「可愛いじゃねぇか!おい中入れよ!楽しもうぜ!王女様の中にもいれてやっからよぉ!ひゃはは!」
「王女様ぁ!今から抜くから見ててくれよ!」

ルールが来た事により独房全体から騒ぎが起きた。
中にいた囚人達が牢に手をかけガシャガシャやっている。
……うわぁ…げんなりする。無法地帯にでも来たみたいだ…。
しかしルールはどこ吹く風で囚人の言葉なんか耳に届いていないようだった。

「?どうしたしたのかしらナナシ?彼女はまだ先よ?」
「いや……こういうの怖くないのかなって?」
「あたくしが?まさかよ。悪賊の言葉なんかあたくしの心には届かないわ。あたくしは絶対の正義の信念の下に生きている、罪を罪とも思っていない連中なんかいないのと同じだわ」

うーん、強い女の子だ。

「そういえば…ルールのお母さん、お妃様は?まだ会ってなかったけど」
「御母様は外交問題の取りまとめで今は別の国にいるのよのよ」

そうなのか。
お母さんにも挨拶しておきたかったんだけど…娘さんを傷物にしてしまったし…この後王様とルールの事について話し合う時お母さんがいれば少し話しやすいかと思ったんだけど…仕方ない。

「あら、そこにいるいるのは…」
「姫様、それにナナシさんも…」
「やぁ、お兄さん。久しぶりな感じがするね」

独房の最奥にはまた扉があり、その手前の牢にいたのはサイとブリッジだった。

「サイ、ブリッジ…研究所の件では世話になった。ありがとう」
「…いえ、こちらこそ。貴方のおかげで私達の目的は果たされたのですから」
「……けど君達は……」
「まぁ仕方ないよ、僕達に止められなかった事があるのは事実だし。アールステッドの町や巨人達、エルフの騎士さんの事もね。内偵調査だからといってそれらを野放しにしたんだ、ちゃんと罰は受けるよ」

……だけどそれは現場の判断として見過ごさざるを得なかったり知らなかった事だ、彼らが好きでやった事じゃないんだろうに…何か報われないな…。

「ナナシ、話は済んだかしかしら?彼らは囚人よ、彼らとの面会ではないのだから長く話さないで」

ルールが俺に言う。
何でだろう、ブリッジはともかく彼女にとってルールとサイは俺なんかよりも長い付き合いだったはずなのに。
ルールは扉の方を向いてサイ達には一切目をくれなかった。

「…君達の刑も軽くなるよう頼んでみるよ」
「いえ、気になさらずに……」
「忘れたのか?リーフの件で俺は君達を一発殴るって言った、だから早く牢から出てもらう。そのためだよ」
「……ナナシさん…」
「あはは、じゃあ待ってるよ。お兄さん」
「ああ」

--------------

牢獄の最奥にあった扉を入るとそこは造りは同じだけど臭いがしなくなった牢獄が続いていた。

「こっちは女囚人の独房よ、色々な事情があって男性囚人達とは空間を分けられているいるわ」

なるほど、ちょっと安心した。
ルールはこの独房もツカツカと凛とした顔で歩く。

「ルール……サイ達の事…」
「…例え仕方のなかった事とはいえ、罪は罪よ。この国の正義は身内であろうと…いいえ、身内だからこそしっかりと執行されなければいけいけないの。それに彼らはこうなる前に御父様に相談するべきだった……そうすれば証拠は掴めずとも巨人や町は無事だったかもしれない…ならばその罪はしっかりと償うべきだわ」

きっとサイ達は王様に責任が及ばないように全てを現場判断としてしまったのだろう、その結果…町が二つ消滅し、巨人達は死んでしまった。
全ては命名研究所の悪事の証拠を掴むという目的のために。

俺はなにも言えなかった、何が正しい事で何が正解で何が正義だったのかがわからなくなってしまったから。
とにかく…俺にできる事は協力してくれた人達に報いてあげる事…それだけだ。

「あっ!ナナシ君なんだよっ!会いに来てくれたんだよっ!?」
「やぁ不思議ちゃん。久しぶり」

少し歩いた先の牢には不思議ちゃんがいた。
足枷をしながらでもぴょんぴょんと跳びはねて嬉しそうに柵に近づいてくる。
そう、今回の面会の目的は彼女。

「どうしたんだよっ?僕に何か用なんだよっ?」
「いや…うん、そうなんだ。話があって…ルールも聞いてほしい」
「?あたくしくしも?」

ザッ…

そうして俺は地面に膝をついた、そして頭を下げる。

「ごめん、二人共…俺は二人を利用した」
「「???」」

そして事情を説明した。
二人の能力が必要だったため、二人とエッチした事を。

--------------
----------
-------

「「………」」

「うわっ…」「サイテー」「死ねよクズ」

今までの旅の経緯や能力を増やそうとしている事を併せて説明した。周りの女囚人から罵声がとんでくる、囚人には言われたくないが全くその通り。
勿論、責任はとるつもりだけど…今すぐには無理だ。
まだ旅は終わっていない、これからもやる事が沢山ある。
もし全てが終わって…俺に何か要求があるならちゃんと向き合おう。

「今更何を言っているなのなの?あたくしはその事をちゃんとわかった上で貴方と共にいるのよ?」

ルールはきょとんとした顔で俺に言う。
確かにルールには事前に能力の説明をして行為に及んだけど…

「いや…それでも君の初めてを奪ったのは事実だし…」
「ロストヴァージンの事?それならば早いか遅いかの違いよ、あたくしだっていずれは結婚してそういう事もするするわ、それがどうしたの?」
「……えーと…」

このお姫様はエッチの時もそうだったけど男らしい性格というか何というか……まるで気にしていないのか。

「でも確かに…もう貴方以外とそういう事をする気にはならないわねわね…あんな事までされたのだし、これって恋心というものなのかしら?」

俺に聞かれても…。

「ぅぅっ……ひどいんだよ…あんまりなんだよ…僕は…初めてだったのに…」

ルールとは対象的に座り込み泣き出す不思議ちゃん。
くそぅ…胸が痛い…。

「…ごめん…でも、ちゃんと責任は…」
「そんなのいらないんだよっ!僕を好きって言ったのも嘘なんだよっ!?無理に責任をとられても嬉しくないんだよっ!」

………確かにその通りだ、責任ってのは単なる逃げだ。
責任を取りさえすれば何でもしていいわけじゃないんだから。

「………ごめん」
「ぐすっ……許さないんだよ…僕はもう貴方に一生付きまとうんだよ」

………?付きまとう?

「もう何があっても離さないんだよ、僕が罪を償ったら貴方に四六時中付きまとって離れないんだよ、トイレもお風呂もずっと一緒なんだよ、一秒だって離さないんだよ…そしていずれは僕を本当に好きになってもらうんだよ」
「……構わないよ、そもそも君を好きだって部分は嘘じゃない。確かに利用する形になったけど俺は好きじゃない相手とはしないから」
「………………………………………………じゃあ許すんだよ…」
「貴女、考えが浅すぎるんじゃないないかしら…?別に口出しはしないけれど…」
「ナナシ君は旅を続ければいいんだよ、僕もいずれ合流するんだよ。その時は約束守ってもらうんだよ」
「あぁ、必ず」

ちゃんと話せて良かった。
これで解決ってわけじゃないけど…これで研究所関連でやり残した事はないかな。

「じゃあ面会は終わりわりね、御父様から話しがあるみたいですから行きましょう」

……そうだった、最大の問題が残っていた。
生きて国を出られるだろうか俺……。


その後、王様に事情を説明して強制的に婿養子に迎えられそうになったのはまた別のお話。






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みんなの感想(2件)

タカシトルネード
ネタバレ含む
2019.05.05 司真 緋水銀

ご感想ありがとうございます。
急に話が重くなりまして申し訳ない。。急ぎ残酷描写タグ追加させて頂きましたm(_ _)m
ただこの過程を経ての後に本人の成長と大活躍をさせる予定なので見守ってやってください(っ・ω・)っ

解除
伊予二名
2019.05.05 伊予二名

オークの死に地獄が足りない。何さらっと死んでるの。マッタリネットリ時間をかけて死ね。体が死んでいいのは先ず心をズタボロころされてからだ(๑╹ω╹๑)

2019.05.05 司真 緋水銀

感想ありがとうございます。
次に粗相をした悪人はざまぁっていわれるくらいずたぼろにしようと思います(*´∀`*)

解除

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