71 / 72
第二章 命名研究機関との戦い
第六十七話 新たな旅
しおりを挟む「みんな、おはよう」
「おはようじゃないっすよ…もうお昼刻っすよ?どれだけしてたんすか…」
俺とリーフはほぼ不眠で朝を迎えた後、みんなにもう平気だと伝えて心配かけた事と気を遣ってくれた事のお礼をしに城下の宿へ来ていた。
俺が朝の挨拶をすると古心から至極真っ当な突っ込みが飛んできた。
「…お姉ちゃん、おはよう」
「あぁ、おはよう」
「にゃ、昨夜はお楽しみでしたかなぁ?」
「う、うむ…凄かった…」
「いーないーなーリーさん!今日は私っすよね!?」
「違うであります、順序的に私の番であります」
「なんでキララなのよ!アタシは最近してないんだからアタシでしょ!」
「ん…ふぁぁ…騒がしいでごさいます……まだ眠いでございますぅ…お詫びにお水を二十杯ほど頂いてもよろしいですか…?」
「何のお詫びよ!それに飲みすぎでしょ!」
女子達はワイワイと騒ぎたてる。
一緒にお祭りに行ってすっかり皆仲良くなったようだ。
「佰仟は?」
「さぁ?お祭りの後は見てないわよ?一人で別室でも取ったんじゃない?気にしてなかったからわからないわよ」
佰仟……本人は気にしてないだろうけど皆からの扱いが雑すぎる…。
仕方ない、ナナの姿で迎えに行ってあげよう。
皆集まってこれからの事話したいし。
俺はスマホで連絡をとって佰仟を迎えに行った。
--------------
<アウクストラ城.貴賓室>
佰仟を連れ、城の客室には全員が集まる。
俺、アイスメリア、リーフレイン、エレメント、一十佰仟、古心、殺、しゃんつぉーね、ルール。
「それでせんぱい、これからどうするんすか?」
まず古心が切り出す。
色々とやりたい事はある、まずはそれを話し合ってみよう。
「そうだな…一番考えなきゃいけないのは…やっぱり願叶の事かな…」
願叶(キラキラ)…願いを叶える少女。
研究所から無事救い出し、現在はこの国の大聖堂で治療を受けている。
というのも……未だにキラキラの意識は戻らないのだ。
恐らく【人心掌握】…テアの能力によるものだと思うんだけど…テア自信は身柄を拘束された後も黙秘を貫いているらしい。
その『心操術』というカテゴリーに分類されているテアの能力の解除は能力者本人でなければ非常に難しいらしく…手が出せないらしい。
テアの記憶を読んだ俺も知っている、テアはキラキラには通常とは異なる手段で無理に操っていた。
それのせいでもあるのだろう。
「何とかして普通に戻してやれないだろうか…」
「しかし旦那様…仮に元に戻ったとしても…少女の拠り所であったマチレス達巨人は…」
「……うん、もういないんだよね…」
「その現実に…あの幼い少女は耐えられるだろうか…」
……それはわからない。
しかし、今のままでいいはずはないんだ。
名前を悪用しようとするやつらの謀略、そんな者達に巻き込まれてこれから先眠ったままなんていいわけない。
俺は少女を救いたい、そして、誰もその名前の能力なんか使わせない居場所をつくってやりたい。
「せんぱい…」
「…だとするならば、まずはその大聖堂の情報管理を徹底して守るべきだろう。命名研究機関すらその少女の居場所を掴んでいた、他にも知っている者達がいないとも限らない。それを狙う者達がいないとも…な」
「その件は心配無用だわだわ、情報統制は既に行われているし…『名賢人』様達に連絡をとって『八銘傑』をこの地に向かわせた。今後は彼らが護衛するそうよ」
『名賢人』に『八銘傑』?
知らないワードが出てきたけど…何だろう?
「この世界の名を管理する…賢人と呼ばれるれる方々よ。世界中のありとあらゆる名前…能力を全て記憶し、各国に名前に関する統治機構を置いて危険因子である名による反乱を未然に防いだりする…簡単に言えば名前における全ての事柄を管理する最終決定者、世界最高の頭脳を持った十二人の権力者達よ。各国の王達もよく助言を求めたりするわ」
なるほど……元老院とかそんな感じの人達か。
という事は『八銘傑』ってのはその人達直属の凄く強い人達って感じかな?
「その通りっすよせんぱい。一人一人が『唯一無二の能力』の持ち主らしい最強戦闘部隊らしいっす」
そうなのか…そんな人達が実は悪人なんて考えづらいし、それなら守りに関しては任せても平気そうだ。
じゃあ問題はその『心操術』とかの解除方法か…。
テア自身に解除させるのが一番早いけど…テアはあの場で死んでもいいと考えていたんだ。
下手に交渉したりすると更に複雑な能力をかけたり、最悪…自害して解除方法を無くすなんて事をしないとも限らない。
テア自身とはもう一度話してみたいけど…まずは保険として『心操術』を解除できる第二の方法を見つけてからの方がいい。
命名権を使っても俺の今の能力じゃ無理そうだな…治療の能力は再生のアイスメリアの能力だけだし……不思議ちゃんの能力は失敗した時に何が起こるかわからない。
どこかにアテもなくそんな事のできそうな名前の能力の持ち主を探すしかないのか………。
治療…………ん?そういえば。
そうだ……色々バタバタしてて失念していた。
もう1つ…俺の旅の目的というか、心配事があった事を。
今も無事でいるだろうか、確かめたい。
アテも無く旅をするんなら彼女に会いに行く道中に探すのでも構わないだろう。
そういえば彼女は…『エルフや妖精さん達と仲良くなった』って言っていた。
アイやリーフは彼女を知っているだろうか。
「アイ、リーフ。聞きたい事があるんだけど、ヒュミ……球体大陸の緑色の髪をした王女の事を何か知ってるか?エルフと仲が良いらしいんだけど…」
「…ヒュミ?球体大陸は聞いた事はあるけど…あたしは知らないわ」
「すまない旦那様…私もそこまで詳しくは…エルフと言っても世界中の森にエルフの国は存在する。全ての情報を共有しているわけでは…」
うーん、そっか…。
ヒュミ自身も各地を旅してるみたいだし…もうあの島にはいないかもしれないし…会うのは難しいか。
……そうだ。
ヒュミに関してはもう一つ情報源があった。
「殺は何か知らないか?」
「…?何故私に聞くでありますか?」
ヒュミを殺しに来た男達。
スーツの男と銃兄弟…スーツの男は知らないけど銃兄弟は確か『暗殺ギルド』の一員と言っていた。
殺は暗殺ギルドの頭領……なら、ヒュミを殺そうとしている依頼者…そしてその依頼内容を把握しているかもしれない。
俺は皆に事情を話した。
「……確かに【犬且ライフル】【リボルバー】は私の部下でありますが…その依頼内容は知らないであります。仮に知っていたとしてもギルド以外の人間に依頼内容や依頼人の情報を明かす事は絶対にしないであります」
「ちょっときららん、そんな事言ってる場合じゃないでしょ」
「き、きららんなんて呼ぶなであります!…それに暗殺ギルドは正規のギルドとは違うであります。正規のギルドであれば依頼者が直接ギルドに依頼するものでありますが…闇ギルドと呼ばれるギルドの依頼任務は必ず『仲介屋』を通すのであります。私達はその依頼の出所を知る必要はなく…ただ依頼を達成するだけの存在…つまり、依頼人や標的について全く知らされないであります」
「ならば、その部下もその王女の事について詳細は知らないという事か」
「その通りであります。そもそもがギルド員自体が顔を合わせる事がほとんど無いであります、拠点となる隠れ家は存在するでありますが…それぞれが顔や素性を隠しているため集まった事など無いに等しいであります。頭領というのも名ばかりで仲介屋がその実績から勝手につけた称号でありますので」
ならあのスーツ男はまさに仲介屋という事か。
じゃあその仲介屋とやらを探ればいいのか…しかし用心深そうだから簡単に見つかるかどうか…だけど、考えてても仕方ない。
「ねぇナナシ、なら一度あたし達の里に来てみない?もしかしたら知ってる人がいるかも」
「…エルフの里か」
情報源が限られている以上、確かにそこを順に回ってみるのが一番早いかな。
「それよりも私と知っている限りの仲介屋を潰しながら聞いた方が早いであります、私と一緒に来るであります」
うーん、確かに…それも手かもしれない。
「いや、そんなのよりその球体大陸に行った方がいいんじゃないっすか?みんなはそっちをあたってせんぱいは私と一緒に球体大陸に冒険に行きましょうよ」
「あら、ならならあたくしが御父様に言って通告証と紹介状を書くわよ」
ふむ、それもありかな…ヒュミの知り合いに会えるかもだし。
「ちょっと!ナナシはあたし達と行くのよ!」「その通りだ、旦那様。是非里へお越しください」「私も久々にお邪魔したいにゃ」
「私と行くであります」「確かにそれが一番早そうだ、仲介屋なら俺も何人か知っている。ナナシさん行きましょう」
「そっちはそっちでやればいいじゃないっすか!王道ルートを行った方が絶対早いっすよ!私とっす!」「球体大陸ならば途中の道のりに人魚村もあるでございますぅ…ナナシさん、人魚村にもお越しくださいでございます」
ギャーギャーッ!
皆仲良いなぁ。
そうだ、女神に聞くのもいいかも。
あの場所に俺を送ったのは女神だし、話を聞いてみようか。
俺はスマホ女神に聞いてみた。
『……ふーんだ、知りません。モテモテですね、ナナシ様は』
「何怒ってるんだ…」
うーん、新たな旅は色々前途多難かもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる