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序章第一節 警備員 石原鳴月維、異世界に上番しました。
十三.男女共用トイレ
しおりを挟むはぁ、充実の内容だった。
やはり実は生きていたマカロニの反旗を翻(ひるがえ)すシーンはいつ想像しても涙ものだ。それに力を貸すマカロンの健気さたるや、今期の覇権をいつ奪ってもおかしくはないな。
さて、マカロニvsマカロンを読了したところで次の怪作『フレアおばさんの死中の秘密』の朗読(脳内)を始めるとするか。
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◇フレアおばさんの死中の秘密
~あらすじ~
『フレアおばさんは料理が得意なごく普通の専業主婦である。しかし、その裏の顔は国家要人や一国の首相…果ては大統領などからも依頼を受ける何でも屋おばさん。仕事内容は護衛、運び屋、暗殺から裁縫までオールマイティーに渡る。彼女はおおよそ一個人ができそうもない仕事をたった一人でこなす、成功率は99%。それは…彼女がどんな絶望的な状況でも、いや、絶望的な状況だからこそ覆えせる『死中』と呼ばれる危機的状況を打破する特殊能力が……』
「な、何だ!? き……気のせいじゃないぞ!?」
「あぁ……! 何でっ!?」
周囲が騒がしい。やかましいなクソッタレが。せっかくあらすじが始まったのに何騒いでんだ有象無象どもが。試験に落ちたのにいつまでもいる暇人達が何してんだここで。
「この室内……っ! どんどん気温が上がってるっ!?」
「【属性検定(まほう)『炎』一級技術(エクストラスキル) 【熱くなれソウル】!」
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◇主観によるMEMO
・属性検定【炎】一級とやらの取得により使用可能な技術らしい。自身の肉体の熱を上昇させることで周囲の気温にまで影響を与える事ができる迷惑な技のようだ。
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「現在の室温……22……23……24……25……26……………………40度だ!!」
何かハゲが汗だくでわめいている。暑苦しいやつだな、そのせいか試験場まで暑くなってきて試験者までもが汗だくになっていた。
迷惑なハゲだ。
「ぅううっ……! 暑っちい!! も……もうやってられるか!!」
「っああ! 俺も降りる! こんな環境で残り五時間何もせずに立つなんてできるか!!」
残っていた試験者が次々とバテはじめ、帰っていった。あーあ、馬鹿なやつらだ。ここで帰ったら今までの時間が無駄だろうに。っていうか帰るんなら黙って帰れよ、うるさくてイライラする。
仕方ない、半分まできたしもうそろそろトイレにでも行くか。
「偉そうな態度をしていたがついに貴様も耐えられなくなったのかナンバー55!」
「汗臭いから近寄るな、小便だ小便」
「……っ!!」
「わ、私も行きます!!」
なんかムセンまでついてきた。
*
〈試験場トイレ(男女共用個室一つのみ)〉
「ありがとうございました! イシハラさん」
いきなりわけのわからないお礼をされた。なんだこいつ、暑さでおかしくなったのか?
「ふふ、秘密です。それよりもイシハラさん、私体力の回復ができるようになったのでイシハラさんの体力も回復します」
なんだ、いつの間に魔法を修得したんだ? さっきの光がそれか?
だがまぁ、やはり神官といえば回復魔法だな、これRPGの定番。ならこの試験の心配はいらないな。疲れたら自分で回復できるんだし。ある意味最強の警備員が誕生したな。立って疲れたら回復すればいいんだし。
「必要ない、体力は減ってない」
「嘘ですよそんなはず……………え? 本当に少しも減ってません……貴方どんな神経してるんですか!?」
ムセンは俺に触り何かわけわかんない事を言っている。たかが五時間程度で疲れるわけはないだろう、地球では大体8時間はつっ立ってるんだから。
「それよりもトイレタイムは10分しかないんだ、するなら早くしろ。よっぽど我慢できない限り次は3~4時間後だからな」
「え? トイレは一人二回までいつでも自由に使っていいんですよね? 何か時間の決まりがあったんですか?」
「別にない、ただ気分をリフレッシュさせたいのなら3~4時間後がベストなだけだ。いつになるかわからないが次は恐らく極寒地獄になるだろうからそれで尿意が我慢できればの話だが」
「?? どういう事ですかイシハラさん?」
「いいからするならしろ、時間がなくなる。一緒にするつもりか?」
「す、するわけないじゃないですか! も……もうっ! わかりました! 先に失礼しますけど音を聞いちゃダメですよ!? 耳塞いでてください!」
「なんだ腹が痛かったのか」
「違いますっ! 小さい方でも恥ずかしいんですっ! 何を言わせるんですか! 聞かないでくださいっ!」
まったく、なんで俺がそんな事しなくちゃならないんだか。相変わらずわけのわからないやつだ。
*
部屋に戻るとなんかムアッとした。ちょうど真夏の猛暑日くらいの気温だ、これが全てあのハゲから産み出されているかと思うと不愉快極まりない。
気にしてなかったけど残りの試験者は俺達を含めて残り8人。たぶん最後まで生き残るのは…………あそこにいる水色の髪の女と……バーコードハゲ眼鏡のおっさんだな。合格者は四人か、ただの予想だけど。
「ぅうう……辛い……しかし……家族のために頑張らなければ……」
バーコードハゲのおっさんは何かぶつぶつ言いながら汗だくでふらふらしている。地球でいううだつの上がらない窓際族のおっさんって感じだけど眼鏡の奥の眼はしっかりと何かを見据えている。
根性ありそうだ。
「ふんふーん♪ あ、ねぇねぇキミ……イシハラ君だっけ? 話があるんだけどいいかなぁ?」
立哨位置に戻ろうとすると、たぶん生き残ると予想した水色髪の試験者の女が話しかけてきた。なんだこいつ、いいかもくそもこいつと話す事など欠片もないから却下だ。
「ナンバー1!!! 会話は禁止だ!! 貴様は毎回何のつもりだ!」
「ちぇー、じゃあじゃあ終わったら話そうよ。アタシ今回合格するから。イシハラ君も合格してね」
言われるまでもない。
「おい! 何だアイツ! 俺達のシューズちゃんに話しかけられたぞ!?」
「シューズちゃんこっち向いてー! 僕達が応援してるよー!!」
「あぁ……やっぱり可愛い………なぁ、けどナンバー56の変な服の子も相当可愛くないか?」
「俺も思った! ファンになりそう……」
脱落したモブ達がなんかざわついている。何だこいつら。いつまでも帰らないと思ったらこの女目当てだったのか。ドルオタか。そんなんだから試験に受からないんだよ。
もうそろ六時間くらいかな。いよいよ佳境に差し掛かる頃合いだ、では本腰を入れて脳内映画でもするとしよう。
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