一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀

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序章第三節 石原鳴月維、王都警備開始

五十九.勇者無効、変わる世界

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「待つのだ、イシハラナツイよ」
「ん?」

 美人神官の計らいで国外追放だとか何だとかを受けてさっさと仕度しようとした俺を誰かが呼び止めた。
 ムセンか? 何いきなりモノマネしてるんだこいつ。

「違いますよ! あんな渋い声を私が出せるわけないじゃないですか!」

 じゃあ誰だ? 兵士達の中から聞こえてきたぞ。

「ふむ。やはり魔物は進化しておるようだ……前線に立たぬとわからない事が多くあるな」

 一人の兵士がバケツみたいな鎧兜を脱ぎ捨て、顔をさらす。誰だあいつ? 随分と老けた兵士だな。

「おっ……へっ……陛下っ!!? でおじゃるっ!!? な、何をされてるでおじゃるかっ!!?」

 住民達が一斉に騒ぎ出す。どうやらあれはキングオブキングだったようだ。騎士団も勇者達も門兵達も全員がざわめく。俺が見た時は無造作に垂れ流しだった長髪をオールバックにしてるからわからなかった。渋い声に年相応の渋い顔つき、男前だ。

「何やってんだあんた? 兵士に扮装したりして」
「イッ……イシハラさんっ! 王様ですよっ!? 社会人として歳上で敬える方には敬語を使うのではなかったのですか!?」
「いや、もうなんかタメ口と使い分けるの凄く面倒になったからいいかなって」
「良くありませんよ!? せっかく大神官様がはからってくれたのにまた不敬罪に問われたらどうするんですか!」

 いや、俺もう国外追放だからどうでもいいんだけど。それにこの王ならそんな事気にしないだろ。
 どうやらその話をするためにわざわざ兵士の格好して戦ってたみたいだし。

「……え? イシハラさん……どういう事ですか?」
「……ふむ、お見通しというわけか。中々クセのある男と聞いていたが……どうやら本当のようだ。……まずは礼を言わせてほしい。民を……国を守ってくれて感謝する」

 そう言って王は俺に頭を下げた。こんな人前でいいのか?
 まぁどうでもいい、早く身支度したいんだが。

「きっ……貴様っ!! 何たる無礼な口を聞くでおじゃるかっ!!?」
「マリオン、口を挟むでない。ワシは今、国を救った英雄に礼を尽くしておるのだ」
「ぐぅっ……!」

 それを聞き、住民達が何やら不可解な顔をして騒ぎ出す。

「……え? 国を救った英雄って……?」
「どういう事……? それは勇者様じゃないの……?」

 住民達のざわめきを他所に、兵士の格好をした王は堂々と民衆の前に立つ。そしてまるで街中に、国中に響きわたるような声量で演説でもするかのように言った。

「我が国民達よ、自分の目で見た者を信ずるがよい! ウルベリオン王国を救ったのは『勇者』ではなく……『警備兵』である彼らだ!」

「「「「!!!!」」」」

 この場にいる全員がその言葉の意味合いをすぐには受け止められず、ただ驚き、黙る他なかった。騎士団達、住民達、門兵達、ムセン達、全員が王の言葉に誰も発言する事ができないようだ。

「な……何言ってんだ! ウルベリオン王! 魔物を倒したのは俺だぞ!」

 唯一、勇者だけが王に反論する。この職業信仰のある世界だと勇者と王ってどっちが偉いんだろうな?
 ヤバい、めっちゃどうでもいい。

「………勇者よ、ワシがお主に今まで何も言わずにおったのは……ワシがお主の父親……先代勇者【セルシオン・ブレイズ】……彼に命を救われたからだ。彼はまさに生まれついての勇者……弱きを助け……寄り添い、悪を絶対的に挫く。どんな凶悪にも悠然と立ち向かう【勇】の者。……その血を受け継ぐお主なら……きっと、いつか変わってくれると…ワシも盲信しておったからだ」
「はぁ? だから何だよ!」
「じゃがお主は……この国に来てからというもの、『勇者』の名を振りかざしては遊び呆け、修行もろくにせず、必要経費と言い国庫金を持ち出し豪遊する始末……それでも、いつかは変わってくれると信じておった。……しかし、此度の一件はもう見過ごせん」
「意味わかんねぇよ! 俺は魔物を倒しに駆けつけただけだろ!」

「残念ねぇ……勇者ちゃん…この世界の発展した『技術』を甘く見ちゃったわねぇ……」

 民衆の中からハイヒールでも履いているかのような独特の足音をさせ、独特な喋り方をしたド派手な婆さんが姿を現した。
 あの職業案内所の婆さんだ、何でこんなところにきたんだ?

「アタシの使える技術は遠くの状況をこの水晶に映す事ができるのよぉ、今までの戦い……避難所からずっと見させてもらってたわぁ」
「は? 何だ婆さん? 関係ねえやつは黙ってろ!」
「けどぉ、できるのはそれだけじゃないのよぉ。異界人から持ち込まれた文明をヒントにしてぇ……アタシの技術も進化したのよぉ」
「だから何だよ!? 興味ねえっつーの! 今大事な話中だ!」

「この技術……異界人は【録画】って呼んでたわねぇ……映した映像を一つだけ、この水晶に記録しておく事ができるのよぉ」

 まるで未来世界のように、婆さんの持っていた水晶の映像が空中にスクリーンで表示された。まぁステータス画面なんてもんがあるんだからこれくらいできるか。

 いよいよもってファンタジーなのか近未来なのかわからなくなってきた。

--------------

『それで? 予定通り街に魔物が侵入したけどどうするのん?』
『うふふ……平民達が魔物に襲われてるところに颯爽と駆けつけて退治すればいいのよ、そうすれば……』
『平民達は俺らにひれ伏す! なるほどな! 何人か死んだ後の方がより絶望感が増すな! いい計画じゃねーか!』
『マ……マジっすか……勇者さん……リィラさん……キャリア姐さん……やりすぎじゃぁねっすかね……?』
『いいんだよ! 貴族とかが死ななきゃな! 金払いの悪い職業のやつらなんて死んでもかまわねーっての!』
『そうなのん! これでまた恩が売れるのん!』
『うふふ……じゃあ隠れて様子を見てましょう、ね。』

--------------

 空中のスクリーンには勇者一行とこいつらが交わした会話がもろに流れた。
 こいつらマジか、予想以上の下衆の極みだな。天職の勇者って嘘だろ、天職の悪党だ。

「あ……あ………あ………あっ……」

 勇者はまさにこの世の終わりのような顔をして後退りした。

「ごめんねぇ、隠れて何かやってるのが気になっちゃって記録させてもらったのよぉ」

「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」

 住民達は意外にもこの映像を見ても騒がない。きっと王の次の言葉を待っているのだろう。

「この世界は長きに渡り、身分や職業の差に囚われてきた。それを今この時より払拭(ふっしょく)する……皆、その目をもって今見ている真実を否定せずに見届けよ。魔物を退け、迅速に誘導を行い、国を導いたのは警備兵である。この国を危険にさらしたのは……そこにいる男達……勇者一行である。これがこの国に起こった真実だ」

 王はそこで一旦言葉を区切る。そして、更に威厳ある姿勢で迷いなく、民衆に言い放つ。

「位の高い身分が絶対ではない! 位の低い職業など存在しない! 王たる者が兵士として前線で戦うことも! 勇者たる者が悪事に手を染めることも! 警備兵が国を救うことも! 何一つおかしい事ではないのだ! 世界がその差別を取り払い、一丸となって強大なる敵である魔王軍に立ち向かう事こそが、我々全ての人類に課せられた使命なのだ! 我が国が先陣をきり、ここから始めようではないか!……まずはその先導を行い見事に国を救った警備兵諸君を讃えよ!!」

………

………………………

……………<ありがとう! お姉ちゃん! お兄ちゃん!>

<ああっ! この街を…国を救ってくれた! ありがとう!!>


………ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!

 民衆達は少しの間、王の言葉をすぐに受け止められない様子だったが、ムセンの味方をしたガキ達が口火をきると、堰(せき)をきったように一斉に感情を吐き出した。

<ありがとう! 警備兵!>
<警備さんっ! あなた達のおかげよ!>
<今度ご馳走させてくれっ!>
<適性装備はあるか!? 是非ウチにきてくれ!>
<ムセンちゃん! こっち向いてー!>

 歓声は止みそうにない。死ぬほどやかましいし、こいつら現金すぎるだろ。
 俺はイライラした。

「イシハラさん……せっかく讃えてくださってるんですから……今日くらいは素直に受け止めてあげてください……確かに現金すぎますけど……この世界では仕方のない事なんだと思います。わ……私が美味しいご馳走おつくりしますから機嫌治してください……ね?」

 ふむ、それは良い。そうだな、もう後は食って寝るだけだし心穏やかに過ごすか。

「そして、勇者一行よ」
「……あ?」
「お主らには心を入れ替えてもらうために……厳正なる処罰を与える。もう勇者である事が免罪符になると思うでない、そうだな……まずは所持品、所持金の全てを没収する。そして破壊された街の復興に役立ってもらおう。無給で建築作業を行ってもらうぞ。筋力をつけるのに役立つであろう、その働きに応じてその後の処置を決める。人々の住まいを造る大事な仕事だ、存分に励むがよい」
「はぁ!? 何で俺がんな事しなきゃなんねーんだ! 奴隷の仕事じゃねえか! っざけんな!………全部てめぇのせいだ警備兵! てめぇさえ……でしゃばったりしなけりゃぁっ……!」


 そう言いながら勇者は俺に向け剣をかまえた。
 なに逆恨みしてんだこいつ、全部自分のしてきた事が自分に返ってきただけだろうに。

「うらあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 勇者が俺に襲いかかってきた。
 まったく、全部終わったっていうのに予期せぬサブイベントの連続だ。王にはしてやられたし。

 まぁいっか。全部消化したら4日くらい寝よう。

「イシハラさん、……やっちゃってください」
「言われずとも」

【一流警備兵技術】

ていっ。


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・『警備報告書』
☆MAIN……【依頼人の身辺警備】clear
∇SUB………【王都警備】clear 【魔王軍幹部討伐】clear【職業差別からの解放の一歩】clear 【勇者撃退】clear

・『警備兵試験合格者』
 ○イシハラナツイ
 ○ムセン・アイコム
 ○セーフ・T・シューズ

※『追加報告』
・【勇者マクア・ブレイズ】【白の魔導師リィラ・ホワイティア】【異界侍リュウジン】→一時【土工作業員】に転職

【高位属性魔導士キャリア・オールマイティー】……行方不明

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