一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀

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第一章 一流警備兵イシハラナツイ、勤務開始

八十四.職業体験の場

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「へぇっ!! じゃあ君達も職業体験しに来たんだ!? じゃあ一緒にやろーよ、今日はこの子達に戦闘体験の授業をしてあげよーと思っててさぁ! アタシ達は【王都ジョブズ教学院】の生徒と教師ね! アタシの名前は【ルメット】!! よろしくね! えーっと……」
「あ、えっと私はムセンと申します。こちらはイシハラさんにエメラルドさんです」
「よろしくね! ムセン、イシハラ、エメラルド!……ん? エメラルドってどっかで聞いた事あるし見た事あるよーな……ま! いっか!気のせいだよね!!」

 俺達はおしとやかそうに見えて全然おしとやかじゃない元気溌剌教師ルメットに自己紹介と軽い挨拶をした。
 学院とやらの生徒達はザワザワしている。よく見ると小学生っぽいのもいたり、制服の腕章の色やらが違ったりしている。
 田舎にある小さな学校のように年齢関係なく一クラスにしているのか?

「ねぇねぇ! みんなは何してる人なの!?」
「えっとこの方は騎……」
「警備兵だ」

 ルメットの質問に答えようとしたムセンの言葉を俺は遮る。

「け……警備兵……? ブフッ!」

 俺の言葉を聞いて先頭にいた金色キノコが吹き出す。
 それにつられるように十数人の生徒達がくすくすと笑い出した。

「あははは!! ダサっ!! 良かったー俺ら貴族組はそんな職業とは無縁で!! おい皆!! 汗水垂らして俺らの快適な生活を支えてくれる警備兵様に拍手ー!!」


 キノコがそう言うと生徒達からまばらに拍手が起きた。
 どうやらこの金色キノコは生徒達を無理矢理率いてる的な存在らしい。

「……」

 ムセンが微笑みながらも何か怒りの表情をした、また何かがカンに障ったらしい。まったく短気なやつだ。

「偉い偉い! うんうん! そうそう! 王様が言ってるようにどんな職業でも大事なんだから感謝の気持ちを忘れないようにしなきゃね!」
「ふむ、中々教育の行き届いたクラスのようだな」
「へへへ、そうでしょお?!」

俺とルメットは拍手を送る生徒達に感心する。

「(そんなわけないでしょう!? お二人ともとても素直ですね!? 明らかに馬鹿にされてるんですよっ!……って突っ込みたいです……だけど子供のやっている事ですから……おとな気なく突っ込めませんっ!)」
「……アイコムさま? どうかなされたのでしょうか? 小声でブツブツと……何やら怒ってらっしゃるような…。そんな顔をなされている、と感じます」
「だ……大丈夫です……ありがとうございますエメラルドさん……それよりもイシハラさん、何故騎士だという事を明かさないのですか?」
「何故もくそも俺の職業のメインは警備兵だ。騎士なんて名乗るつもりは一切ない、何故ならそれによって余計な頼まれ事をされる確率が高いからだ」

 『騎士なら凄い技術みせろよー』、とか、『騎士様お願いしますっどうか魔物を倒してっ!』だとか言われるのが目に見えている。
 そんなのは一切ごめんだ、俺は仕事以外で働かない。

「………ふふ、イシハラさんらしいです。けど、そうやって肩書きをひけらかさないイシハラさんの事……私、好き……ですよ?」
「それよりもルメット、この中は一体何なんだ? 何で室内なのに外みたいになってるんだ?」
「聞いてない!?」
「ここはねぇ、戦闘体験のために高位の魔導士が属性技術を駆使して創った『アフィンフィールド』って言うんだ! 実際にはさっきの建物の中だけどまるで外みたいに広くてどこまでも行けるの! って言っても戦闘体験のための場所だから草原とか以外なにもないけどね!すごいでしょ!? だから技術とか使っても建物は壊れないしやりたい放題!! ね? ね? ヤバいでしょ?!」

 ふむ、拡張現実のようなものか。
 まさかそんなものまであるとは、技術ってのは魔法みたいに何でもありだな。

「はーい! それじゃあ戦闘体験を行いますっ!! みんな自分のなりたい戦闘職を思い浮かべてみて!? それになってみよー!! 自分がその職業に就いたイメージだよ!!」

「俺はやっぱり冒険者!!」
「私は属性魔導士!!」
「僕は砲撃士がいいなぁ」
「俺は貴族を継ぐから戦闘なんかどーでもいいんだけどなー。まぁでもやっぱりやるんだったら勇者様だな!」
「……ぅぅ……私はどぅしょぅ……何がいいかなぁ……」

 ガキどもがまるで将来の夢でも語り合うかのように騒ぎ出した。

「想像したら次は勉強した通りにその職業の使える技術や適性装備を思い浮かべるの!! イメージがうまく行けば『就(な)れる』はずよ!」

 ルメットはガキ達に意味不明な事を言った。『就(な)れる』って何にだ?

 すると、ガキ達が次々と魔法少女変身的な感じで光に包まれた。
 着ている制服が変化して鎧になったり、剣や弓がどこからともなく現れ、ガキ達は一気に冒険者の集団っぽくなった。何これ?

「この空間ではねぇ、自分のなりたい職業を体験できるの! どういう原理かはさっぱり知らないけど!! そして職業特有の技術が使えるようになったりするんだよ!! 凄いでしょっ!? ねっ?」

 ふむ、まさに疑似体験。
 この空間の中でだけ自分の夢見る職業になり、技術などを試し打ちできるという事だな。面白そうだ。

 俺も自分のなりたい職業を適当に想像してみた。

「アンパンになれ、えーい」

………………………

「おい、ならないぞ。どーいう事だ?」
「あはははっ!! ここは戦闘(バトル)専門のお店だからパンには就(な)れないよっ!! 就(な)れるのは戦闘技術を扱う職業だけだって!!」
「……いえ、そもそもパンは職業ではありませんしパンになりたいというイシハラさんの思考回路も一切わかりませんし……」

 なるほど、それで店が分かれているんだな。
 じゃあパンになるには、農作生産系のワークショップに行けばいいって事か。

「ですからっ!! パンは職業じゃないですし!! それよりもテレポートを扱える職業を探しに来たのではないのですかっ!?」

 そうだった。パンになりたいとか言ってる場合じゃねぇ!!

「あはははっ!! イシハラって面白いねっ!! アタシ、面白い人大好きだよっ!! あはははっ!!」
「「「なっ……!?」」」

 何故かムセン、エメラルド、金色キノコが反応する。
 そんな事よりルメットは教師なんだからテレポートを使える職業を知っているかもしれないな。

「ルメット、テレポートを使える職業に心当たりはあるか?」
「あはははっ!! 何それっ!? そんな技術あったら流通業界終わっちゃうよ!! あはははっ!!」
「それはそうだ、あははは」

 ルメットは何かツボに入ったようで馬鹿笑いしている。俺もおかしくないけど真顔で笑った。

「いや! 色々意味がわかりませんよイシハラさっ……きゃあっ!?」

 何か文句を言いかけたムセンの横を突然、火の玉が横切った。

 それは一直線に俺とルメットの方へ向かってくる。警備技術を使って避けた火の玉は草原に落ちた。
 草に火が移ったが少し燃えた後、すぐに見事に修復した。

「おい! 警備兵!! ルメット先生に慣れなれしくしてんじゃねえ! ブッ殺すぞ!! 今の俺は勇者様と同じ技術を使えるんだぜ!?」

 どうやら火球を放ったのは金色キノコのようだ。
 金色キノコの周りは取り巻きっぽいやつらが固めていて、そいつらも俺に武器を向けている。

「さっきは上から目線で説教くれやがって……絶対許さねぇ……俺をなめた事後悔させてやるよ!!」

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 金色キノコ(勇者)とその取り巻きABCDEF(属性魔導師、槍使い、弓使い、召喚師、武闘家、聖騎士)が襲いかかってきた!
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