一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀

文字の大きさ
119 / 207
第一章 一流警備兵イシハラナツイ、勤務開始

九十二.大地さんしょう

しおりを挟む

<ウルベリオン王都.北門入口>

 俺達はある程度必要な道具を買い込んで馬車に積んだ。

 シューズの出身国へは陸路で約5日間、国をまたぎ、港町へ行ってそこから海路で3日ほど、そこから更に5日間というほどの長旅だ。

 スズキさん、エミリもいそいそと準備を進めている。

 しかし、スズキさんはともかくとしてまだ七歳かそこらのガキをそんな長旅につれ回して良いものだろうか?
 仮に親の許可を得ていたところで誘拐事案になったりしないのか?

「今さら何を言ってるなのよ、話だけ聞いて放っておくなんてアタシには出来ないなのよ」
「別にいいけど。母親にはちゃんと言ったのか?」
「…………い……言った……なのよ!」

 エミリは目をキョロキョロさせながら言った。ふむ、許可を得たのならいいさ。

「……………すみません……イシハラさん……エミリさんのお母さんにも話そうとしたのですが……エミリさんが話さなくていい、と……」

 何だ、という事は許可を得ていないのか。
 それじゃあ連れていけないな、依頼人としてならともかく余所さまのガキを勝手に連れ回すわけにはいかない。ましてやこんな世界だ、魔物があちこちにいる以上どんな危険があるかわからないからな。

「で……でも……アタシだってシューズを助けたいなのよ! 役に立たないかもしれないけど……」

「エーミーリー?」

 荷積みをしていた俺達の後ろからエミリを呼ぶ声がかかる。エミリは明らかに動揺した様子でおそるおそる振り返った。

「………お……お母さん……なのよ……」

 そこには食事会で会ったエミリ母のリムルと、もう一人、スズキさんの奥さん、シャイナさんが険しく微笑みながら立っていた。
 まるで漫画みたいに怒りの地鳴りみたいな擬音が聞こえてきそうな感じで。

「シャ……シャイナ…………」
「あなたもよ、何も告げずに一体どこへ行こうとしているのかしら?妻と娘を置いて」

 スズキさんも家族に言ってないのか。

「わ……私はぁ皆でまた集まりゅという約束を守るために……」
「それは立派な事ですけど、あなたはまだ職に就いていないでしょう? まずはそこからきちんとするのがあなたの努めではないのですか?」
「エミリ、あんたもよ。あんたがついて行った所で何ができるの? みんなに迷惑をかけるだけでしょう? この前勝手に依頼をした事は済んだ事だからもういいけど、もう隠し事はしないって約束したよね?」


 エミリは母親に、スズキさんは奥さんに叱られている。
 ふむ、やはり母は強いな。この様子じゃあ一緒に行く事はできなさそうだ。

「けど……けどなのよ……シューズにも恩返ししたいなのよ……シューズは今きっと苦しんでるなのよ………」
「なら、その想いだけを二人に連れて行ってもらいなさい。そして、あなたはシューズちゃんがここに帰ってきた時に笑顔で迎えてあげるの。その居場所を守るのも立派な手助けの方法よ」
「…………シューズが帰ってきた時に……?」
「そう、イシハラ君とムセンちゃんを信じて。二人ならきっとシューズちゃんを助けてあげられるでしょ?その時に帰りを待っていてくれる人がいるのはとても嬉しいものよ」
「……………」

「そうですよ、あなた。あなたは年長者なのですからどんと構えて待っていなければならないんですよ。あなた達が迎えてあげないで他に誰がそれを出来るのですか」
「……………」

 そして優しい。まるで母なる海のように、いや、母なんだけど。

 一つ気になるんだけど『母なる海』『母なる大地』ってあるけど『母なる空』とはあまり聞かない。
 地球の事もマザーアースとか言ったりするよな?
 そうなると残った空は何なる空なのだろうか? 母親以外の家族を当てはめるとすると、やはり次は父だろうか?
 『父なる空』
 では大気圏もそうなのだろうか。
 『父なる大気圏』
 母に追い込まれた肩身の狭い父の唯一の逃げ場所は空や大気圏しかないよ、という暗喩だろうか?
 じゃあ子供はどうだ? 他に残っている場所と言えば深海しかないが。
 『深海なる子供』

「ごめんなさい、お二人は悪くないんです……私が安易にお二人に声をかけてしまったからなんです……ごめんなさい……」

 ムセンが二人の海(母)に平謝りする。
 大気圏(スズキさん)と深海(エミリ)はしょんぼりしていた。

「で、でもなのよっ! イシハラとムセンは異界人で外の国の事を何も知らないなのよ! 心配なのよ……」
「…そうですね……他に誰か協力していただければいいんですが……こちらの世界の方がいいですね……」

 大気圏と深海は心配そうにしている。
 それもそうだ、パーティー的に回復役をムセンに当てはめるならば必然的に魔物退治するのは俺しかいない。
 冗談じゃないな、俺は見守り役がいいんだ。

 うっかりしていたな、誰か他に連れていくか。適任なのはヴァイオレットだな、一度館に戻るか。


「はっ! 話は聞いたですわっ!! 仕方ねぇですわねっ! 軍師ジャンヌ様から頼まれたから仕方なく同行するのですわよっ!? 高貴なる貴族であり騎士序列6位!【ツリー・ネイチャーセイバー】が案内役を買って出てやりますですわっ! 大いに感謝するのですわよっ!」
「ムセン、一度館に戻るぞ」
「はぅぅぅんっ!! む、無視するんじゃありませんことよっ! イシハラナツイ!!」

 なんかうるさいのが来た。こいつ、確か【ですわ騎士】だったな。
 俺は確かですわ騎士とかいう女に適当に挨拶した。

「ああ、久しぶり。俺をかばって死んだのかと思ってたのに奇跡的に生きてたんだな、良かった。ゆっくり療養してろ」
「い、いつわたくしがそんな事したのですのっ?! 適当な事言って煙に巻こうとするんじゃありません事よっ!! わたくしは軍師ジャンヌ様に『イシハラ君の旅の補助をしろ』と頼まれたんですのよっ!ありがたく思うのですわねっ!」
「いや、いらない。帰れ」
「……………ぅっ……ぅっ………ぅぇぇぇんっ……大人しく言う事を聞いてですの~~~っ!」

 なんか泣き出して駄々をこねだした。
 これまた新たなタイプの面倒くさいやつだ、この世界面倒なやつしかいない。

「……あんたがそれを言うな、なのよ……」
「イシハラさんっ! せっかく協力してくださるんですからっ! 可哀想ですよっ! えっと……あの……ツリーさん、宜しくお願いします。力を貸してください」

 ムセンが間をとりもつと、ですわ騎士はドヤ顔をして立ち直った。

「ふ……ふん! 最初からそう言えばいいんですわっ! 警備兵ごときのためにわたくしが動く事を感謝するのですわねっ! ふふっ!」
「………やっぱり可哀想じゃない気がしてきました……」


 そして、街の奥からもう一人。これまた見慣れた顔がやって来た、あいつも来る気じゃないだろうな。

「ふっ、その通りだ。私もジャンヌ様から頼まれてな、微力ながら協力させてもらおう。ナツイ」

 そう言って、【だもん騎士】は蒼い髪をかきあげた。

「ナツイ達の行こうとしている国へ向かう道中には少々厄介な場所が間々ある、ナツイ達だけでは消耗戦になりかねない。私とツリーが手を貸す、急いだ方が良いし人手は必要だろう?」
「アクアさん、急いだ方が良いって……どういう事ですか?」
「件(くだん)の少女……セーフ・T・シューズはまだ魔物が活発的になる以前にこの国へ来たと聞く。だから放浪もできたのだろうが……ここ数年で『技術』を持つ魔物は急速に数を増した、一人では危険という意味だ。早く追い付いた方がいいだろう」

 確かにな、すぐに追い付いて話をしてしまえばそれで済むわけだ。
 シューズが消えてから約2日、追い付けないほどの距離にはなっていないはずだ。

「なら、さっさと行くか。シューズを追いかけに」


 こうして俺にとってこの世界で初めての冒険譚が幕を開けた。

 仕事をしながらだらだらする計画が段々と変な方向へ向かってしまったな。まぁ仕方あるまい、人生は山あり谷ありだ。

 これが終わったら、俺、もう、空気になるんだ。

☆PT(パーティー)メンバー 
------------------------------------------
・『警備兵』『騎士』 イシハラ ナツイ
・『警備兵』     ムセン・アイコム
・『だもん騎士』   アクア・マリンセイバー
・『ですわ騎士』   ツリー・ネイチャーセイバー
------------------------------------------
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

処理中です...