122 / 207
第一章 一流警備兵イシハラナツイ、勤務開始
■番外編.魔王と冥王 ※【冥王】視点
しおりを挟む<騎士イシハラの館>
「着きました! プルート様! こちらがわたしの……こ……婚約者である方の館でございます」
わらわはエメラルドに連れられ、館にやってきた。
エメラルドは自分で言って恥ずかしかったのか頬を桃色に染めて照れているようじゃ。
(まさか……この女がイシハラの婚約者であったとは……偶然とは数奇なるものか)
まぁ良い、ともかくとしてこれでイシハラに接触できるというもの。
「エメラルド様、あまりお一人で外を出歩かぬようお願いしたでち。あなたに何かあってはお館様も気が休まらないでち」
「セバス様……非常に申し訳なく感じます……ナツイ様達が気がかりで…いてもたってもいられなくて……つい、外へ……」
「違いまち、執事が天職セバスちゃんでち。……エメラルド様はお館様達がどちらへ向かったのがご存知なのでちか?」
「……アイコム様からお聞きしました。恐らくナツイ様はシューズ様の行方を探すために追いかけるであろう、と。わたしもそう思っております、ナツイ様は必ずシューズ様の元へ向かう、と。……わたしは足手まといになる、と感じて着いて行きたい気持ちを抑え……こちらに残ったのです」
「……左様でございまちか。ところでそちらのお方は? 迷子でちか?」
執事服を着た、今の自分の姿とさして変わらぬように見える幼女にそう言われ少しカチンとくる。
オルスではこのような幼子まで職に就いてるというのか。
「えっと……こちらはプルート様です。このお歳で冒険者をしてらっしゃるんです! わたしはプルート様に技術の指南をして頂きたくて……ナツイ様の手助けに向かえるように強くなりたい、と強く感じているのですっ!! プルート様を客人として館に迎えてもよろしいでしょうか!?」
「ダメでち。素性の知れぬ者をこの館に入れるわけにはいきませんでち。無論、エメラルド様の身を危険にさらす事もでち。お引き取り願いまち」
むぅ、ちびっこいのに中々できた執事じゃの。イシハラは恵まれた環境におるようじゃ。
しかし、話を推察するに今現在はこの館にはおらぬようじゃな。だったらわらわもここに用はない。
「ぅぅ……ごめんなさい、と強く思います……プルート様……」
「気にするでない、元々貴様が話を聞かずに強引に連れてきただけであろう……わらわは所用があるのじゃ。これで失礼するぞ」
「では! 一緒に王都に向かうのはいかがでしょう!? 若しくはわたしの国へご案内致します! そちらで技術指南を行いましょう!」
「話を聞かぬか!! わらわはそんな事してる暇は……やめんか! グイグイ来て顔を近づけるでない!!」
「エメラルド様、凄く迷惑がってるように見えるでち。わかりまちたでち、客人として客室と中庭なら使用の許可を出すでち。アキ・ハバラにもてなすよう伝えておきますでち」
「いや、何故そうなる!? わらわは用があると言っておる!」
「それではお構いできませんがおくつろぎくださいでち」
そう言って幼子の執事は館に入ってしまった。
(何故こうなるのじゃ! あの執事……面倒なエメラルドの相手をわらわに押し付けただけではないのか!?)
「プルート様! 早速技術修得の指南をご教授願いたい、と強く感じますっ!! あ……あれ? プルート様! どちらへ行かれるのですか!?」
わらわはエメラルドの言葉を無視して庭園を抜け、館を早足で離れようとする。イシハラがおらんのにこの場所におる必要はない。あの女(エメラルド)からはとてつもなく面倒な波動を感じる。
さっさと姿を消すとしよ………
「!!」
【狐の王技術『九尾の鉄壁』】
------------------------------------------
・狐の王のみが使える生態技術。尻尾で防御することでどんな攻撃でも防ぐことができる。
------------------------------------------
「きゃあっ!?」
突如、門の入口の方から館に向け特大の炎が迫ってきおった。
入口から館までの直線通路を全て呑み込むほどの炎、わらわは咄嗟(とっさ)に狐の『技術』を行使し炎を防ぐ。後ろにいたエメラルドが叫びをあげてうずくまっておる。
出現した九つの巨大な狐の尾は炎を完全に遮断し、わらわ達と館を守った。炎は段々と勢いを衰えさせる、どうやら庭の草木を焼くだけで済んだようじゃ。
(ふむ、まさか侵入者撃退の罠というわけでもあるまい。明らかに敵意をもって館かわらわを攻撃しておる者がおるな、何者じゃ?)
わらわは門入口から悠然と歩いてきよる人物に目をやる。
輝く金色の髪を左右で結った小娘……姿格好を見るに単なる冒険者やレンジャーの類いに思えるが……今の攻撃の質は明らかに資格や就職で得られる技術の域を越えておる。
それともわらわが知らぬ間にたかが人間如きがここまでの技術を繰り出せるようになったのであろうか?
侵入者は悪びれもせず、何事もなかったかのように……まるでごく普通の客人のように声をあげた。
「もーしー? イシハラいるー? 会いに来てやったわよー? 姿見せなさーい?」
「……不作法な客人じゃな、エメラルド。あれもイシハラの知り合いかの?」
「わ……わかりません……しかし、あのような子は王都でお見かけした事はないように思います……」
エメラルドの言葉を聞いて、わらわは襲撃者の元へ歩み寄る。
襲撃者もこちらに歩み寄っていたため、わらわとの接触寸前の距離に至るまで時間は有さなかった。
童女(わらわ)と小娘は対峙する。
「アンタ誰? イシハラの知り合い? イシハラに会わせて」
「残念ながら領主は留守にしておるようじゃぞ? そもそもがイシハラは不躾な輩を嫌うからの、いたら門前払いを喰らうじゃろうな」
「誰か知らないけどアンタの意見なんて聞いてないわ、面倒ね。もういいわ、そこをどきなさい」
「要約せんとわからんか? すぐにここから消え去れと言うておる」
周囲の空気が張り詰め軋(きし)むほどに、わらわも襲撃者も潜在させた覇気を互いににぶつけ合う。
「プルート様っ! そ……そちらの方もどなたかは存じませんが……ケンカはお止めください、と強く感じますっ!」
エメラルドが叫ぶ。
まったく……これが単なるケンカに見えるのじゃろうか?
まぁ今はわらわは童女の姿じゃし、この只ならぬ襲撃者も一見すると女児にしか見えんから仕方あるまいて。
しかし、わらわの予感が警告しておる。
このケンカ、両者ただでは済まんの。
「まったく……何故故にわらわがこんな事せにゃならんのじゃ……バカ者め、まぁ良い。これもお主に会うための試練という事か。待っておれよ──」
----------------------------
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる