155 / 207
二章第一節 一流警備兵イシハラナツイ、借金返済の旅
百二十一.魔女との邂逅
しおりを挟む「ぶつぶつ……あーあー……うん、声出てきたっぽい。うん……じゃあ……改めて……私は魔女の【ドライ・アイ・スクリーム】」
「俺は警備兵のイシハラだ、よろしく」
「ニャ……えーと……うちはエアー、ニャ……」
「ぶつぶつ……うん……よろしく……」
引きこもりの部屋っぽいところで久しぶりに喋ったので声が出ないらしかった魔女は発声練習をしたのちに改めて自己紹介をした。
引きこもり魔女はぶつぶつ言って明後日の方向を向きながらなにかに没頭しているように見える。前髪に目が隠れているから何をしてるのかようわからんけど。
猫娘は魔女を目の前にしてどうしたらいいのかわからずにまさに借りてきた猫のように大人しくなり、魔女は魔女で俺達を招いたにも関わらず眠そうに一人で何かをしている。
そして俺自身は魔女に用はないので特に話す事はなく、魔女との邂逅から誰も話す事ないまま無駄な時間が過ぎていった。
「(ナツイにゃん!! 状況説明を淡々としてないで何か話してニャ!!)」
「いや、魔女に用があるのはお前だろ」
「(ニャ……そうニャけど……いざ伝説の魔女を前にすると怖くてしょうがないニャ! お願いだよぅ……)」
まったく、陽キャのくせに何をビビってるんだ。
俺もこの魔女もどう見ても陰キャなんだから話を弾ませるのはお前の役目だろうに。
「ぶつぶつ……そこの猫人族……陽キャかと思ったけどそうでもないっぽい……ぶつぶつ……陽キャうるさいから嫌い……滅べ……」
魔女は俺と同じ感想をぶつぶつと述べた。
なんか気が合いそうだなこの魔女とは、しかしオルス人であるくせに陽キャとか意味わかって言っているのか?
「……ぶつぶつ……お兄さんが今口に出してたニュアンスで理解した……そしてお兄さんはどちらかというと陽でも陰でもない……なんか違う次元に一人だけいる感じ……」
魔女は人の事を勝手に見定めて適当な事を言った、俺を宇宙人扱いするんじゃない。
「な……なんの話ニャかさっぱりわからないニャよ……」
「ぶつぶつ……それで……話をしに来たんでしょ……今忙しいからさっさと話して……ぶつぶつ……」
魔女は布団でごろごろしながらそう言った。
特に何かをしているようには見えないが忙しいらしい。
「ニャ……ま、魔女さん……最近この近辺で発生源不明の魔物が増加しているニャよ、何か知らニャいかニャ?」
「……ぶつぶつ……知らない……話はおしまい……」
どうやら魔女は原因を知らないらしい。
さぁ、話は終わりだ。さっさと帰るとしよう。
「ニャ!? ちょっ、ちょっと待ってニャ!? いくらなんでも早すぎるニャよ!! 本当なのかニャ!?」
「知らないって言ってるんだから知らないんだろう、だったら魔女にもう用はない」
「ぶつぶつ……お兄さん変わってる……こんな淡白な人間初めて見た……頭の回転は悪くないみたい……気が合いそう……ぶつぶつ」
魔女はまた勝手に人を過大評価しているがどうでもいい、これ以上時間を無駄にするわけにはいくまい。
俺が帰ろうとすると魔女は初めて俺の方を向いて言った。
「ぶつぶつ……待って、お兄さんには話がある……だからここに喚(よ)んだの……私の住み処をこれ以上壊されるまえに……何やっても止まらなそうだったし……お兄さん異界人でしょ……?」
「その話に応じてやる義理はない、お前が何も知らないんだったら時間と話すエネルギーの無駄だから話したくない、面倒」
「ぶつぶつ……めっちゃわかる……私も久しぶりに会話して疲れてきたから……でもお兄さん、この私が創ったアフィンフィールドでは時間を止められるから時間は気にしなくて大丈夫……ぶつぶつ……」
「そうなのか、精神と時の部屋みたいなものだな」
「ぶつぶつ……ニュアンス的に時間の経過を遅らせる部屋っぽい感じ? その通りだよ……お兄さん達がここに来てからオルスでは一秒も経過してない……ぶつぶつ……」
「それなら安心だ」
「ぶつぶつ……時間は貴重……特に自分がなにかしようとしてた時に他人に邪魔されて経過していく時間の無駄さが一番嫌い……ぶつぶつ……」
「めっちゃわかる」
俺は魔女と意気投合する。
「いや! ニャにを意気投合してるんニャ!? うちにもわかるように説明してほしいニャ!! 仲間外れにしないでっ!」
猫娘は一人でうるさいが無視して魔女との話を進める。
「だが、お前は俺達の知りたい情報を持ってないんだろ?」
「ぶつぶつ……外に出たのが五十年くらい前だからわからないだけ……だからここ最近のオルスの状況を見ればわかる……」
そう言うと魔女は布団から手を出して猫娘の胸を触った。
「ニャんっ!!?」
【魔女の技術『記憶読み取り(ダイジェスト)』】
ニャンッと身体を大げさに弾ませて猫娘は顔を紅くした。
魔女はどうやら技術を使ったらしい。
「……ぶつぶつ……大体わかったっぽい……前魔王『サターン』が前勇者『セルシオン』に敗れて……人間社会が一時復興し繁栄する……職業差別が始まり、職業大戦が起こったのちにそれぞれの子息……新魔王と新勇者『マクア』が誕生。力をつけた魔物達により人間達は劣勢に陥り、異界の戦士を召喚する技術を確立してからまた同じ事を繰り返してる……はぁ、これだから外に出たくない……ずっと引きこもってよう……ぶつぶつ……」
「ニャにするニャ!? ニャんで胸を触ったんニャ!?」
「ぶつぶつ……記憶を読んだだけ……お兄さんは異界人だからオルスの事あんま知らないだろうし……ぶつぶつ……」
なるほど、対象に触れるとそいつの記憶を読めるのか。さすがに魔女、でたらめな技術を数多く持っているな。
「ぶつぶつ……大体理解した……だとするなら【発生源不明】とされてる魔物がどうやって産まれているかも察しがつく……ぶつぶつ……」
「ほ……本当ニャ!? 教えてほしいニャ!」
「ぶつぶつ……だけどただの推測……それに疲れたから一旦おしまい……今度はお兄さんに話を聞きたい……ぶつぶつ……」
ふむ、まぁ時間の経過はないし別にいいんだけど俺も眠くなってきたな。
そしてメンディ。
「ぶつぶつ……お兄さん、ここはアフィンフィールド……お兄さんがイメージするものは何でも出せるようにした……食物でも水でも……それで体力つけて……ぶつぶつ……」
なん……だと……?
俺は真っ先に炒飯と唐揚げとコーラをイメージした。
すると何という事でしょう、不思議な音を立てて、目の前には絶品間違いなしのイメージ通りのものが出てきたではありませんか。
俺はいただきますをした。
「ニャ!? ナツイにゃんちょっと待ってよぅ!! いくらなんでも怪しすぎだニャ!! 罠かもしれないのにっ……!!」
「ぶつぶつ……安心して……とって喰おうなんて面倒だから考えてない……それよりも話がある……お兄さんの世界に私を連れていってほしいだけ……ぶつぶつ……」
「ナツイにゃんの世界……? 確か……チキュウとかいう世界の事かニャ……?」
「ぶつぶつ……うん、私は魔界にもオルスにもうんざりした……別の世界に行きたい……ただ、いくら私でも他の世界にそう簡単に行けるわけがない……だからお兄さんにはオルスで地球に戻る方法を探してきてほしい……そして私も連れてってほしい……ぶつぶつ……そしたらお兄さん達に出来るだけ協力してあげる……ぶつぶつ……」
「……ど、どうするニャ……ナツイにゃん……なんかとんでもない事を言ってるニャけど……って魔女さん!! ナツイにゃんまったく話聞いてニャいニャよ!!?」
「ぶつぶつ……知ってる……お兄さんが食べ終わったら起こして……もう限界……」
「ニャ!? 魔女さんも寝るのかニャ!? 二人とも自由に生きすぎニャよ!? 」
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら
リヒト
ファンタジー
現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。
そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。
その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。
お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。
ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。
お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる