158 / 207
二章第一節 一流警備兵イシハラナツイ、借金返済の旅
■番外編.セーフ・T・シューズ其の③ ※シューズ視点
しおりを挟む~3年前 《ストレア王都城下町.『警備協会』》~
「何でぇ何でぇ!! マルクスの坊やが少女趣味に走っちまったかと思ったぜ!! なぁみんな!?」
「や、やだなぁ……この子は幼なじみの妹ですよ……」
「おっ!! 幼なじみっていやぁよく話に出てくるネットとかいうマルクス坊の想い人だったな!! んじゃあそこの嬢ちゃんに似てるってわけだ!! 思った通りべっぴんじゃねえかオイ!! 賭けぁ俺の勝ちだな!」
「ね……ネットはそんなんじゃないですよぉ……」
マルクス君に連れられて入ったギルドでは不思議な光景でいっぱいだった。
貧民区の入口辺りに居を構えたその建物は風が強く吹いただけでも壊れてしまいそうな感じで、当時のアタシはそれが人の住む家だと理解するのに時間がかかった。
ましてやそれがギルドだなんて思わなかったし、そこにいた人達がマルクス君のお友達だっていうのも驚いたし、何もかもが不思議だった。
「ねー、マルクス君。このおじさん達だれなの?」
「【警備兵】さ、ストレア王都周辺にある各町村の農民の人達やこの王都で建築業や採掘業をして働いてる人達もいるんだ」
「がっはは、つまりぁ奴隷たちってはっきり言やぁいいじゃねぇか」
「ぼ……僕はそんな認識をしているつもりは……」
「わあってるよ! まったく……つくづく変わった貴族様だなマルクス坊は」
話を聞いてみると、他の職業と警備兵とで掛け持ちして働いている人がいたり、無職で行く当てが無いからやってる人がいたり、奴隷扱いが嫌で逃げ出して来た人がいたりと様々な理由で集まった皆が寄り合って出来たギルドみたいだった。
認可させたのはマルクス君の家、ノイシュルーツ家。
職業差別の根深いこの国で認められた初の警備協会。
いくらかの支援を受けてノイシュルーツ家は人種種族立場に関係なく同志を募った、そして集まったのがこのおじさん達。
そう、まだこの当時は警備兵になるのに試験みたいなものはなくて誰でもなる事ができたんだ。
色々な観点から三年間で試験による選抜制度が出来上がったんだけど、それまでは来る者を拒まない受け皿のような場所だったんだ。
「マルクス君はおじさん達とお友達なのー?」
「あぁ、そうだぜお嬢ちゃん。マルクス坊はそこらのお高い貴族様と違って俺達みたいな底辺にも分け隔てなく接してくれるいい奴さ、最初にここに訪れた時ぁ何かの冗談かと思ってたけどな」
「僕は【アラン・ピンカー】様の伝記を本で読んでから警備兵の技術に興味を持ってね。すぐに警備協会に入りたいと思ったんだ、幸いにもノイシュルーツの家柄からか家族の理解も得られたからね。司祭や老人達を説得するのに時間を要したけど……おかげで警備協会をストレア大国に設置認可させるに至ったよ」
「え? ていう事は……」
「そう、僕は【貴族】であり今や【警備兵】さ。職業神様の加護を受けたんだ」
マルクス君は誇らしそうにそう言った。
それを聞いても当時のアタシには「そうなんだー」くらいの感想しか出なかった。
勿論、貴族でありながら平民職っていわれる職業に就いた人なんて聞いた事なかったからマルクス君の事がほんの少し心配にはなったけど……お姉ちゃんにバレたら喧嘩になっちゃうんじゃないかって。
マルクス君も同じ事を考えていたようでアタシに言ったんだ。
「シューズ君、皆にはこの事はまだ話さないで欲しい。特にネットにはまだ黙っていて欲しいんだ……いずれわかってくれる日が来るって信じてはいるけど……今は理解を得られないだろうからね」
マルクス君は家族以外の誰にもこの事を話してはいなかった。
だからその事を知っていたのは、警備協会の人達と就職儀を行った教会の司祭達とアタシだけだった。
「うん、わかったー」
アタシはマルクス君の頼みを了承して誰にも話さなかった。
----------------------------
それからはマルクス君と一緒に隠れて何度か警備協会に行った。
警備兵の皆は普通の人達でアタシにも良くしてくれてすぐに仲良くなった。
アタシが貴族だからって媚びるわけでもなく、まるで普通の家族の親戚のおじさんみたいな感じで接してくれたんだ。
おじさん達は色々話してくれた。
初めは苦しい現状を脱したくて警備協会に入ったけどマルクス君から【アラン・ピンカー】の逸話を聞いてから少しでも人々を守る力になりたくて技術を磨いている事、警備協会に任される仕事は街の下水道の害虫駆除や街の掃除とかの雑務しかないけどいずれ魔物退治ができるくらいに警備兵の名を大きくしたいって事、そして拾ってくれたノイシュルーツ家やマルクス君に恩返ししたいって事。
おじさん達は照れたみたいに笑いながら毎日そう言ってた。
マルクス君も皆と笑い合いながら何度もここへ通っては日夜、警備兵の技術を磨いてた。
アタシはアタシでそうやって色んな技術を学びながらもお姉ちゃんと一緒に戦地へと赴(おもむ)いていた。
役職に就いたとされている魔物が軍を率いてイルムンストレア各地に出没する度にセーフ家は魔王軍を跳ね返した。
アタシもネットお姉ちゃんを通じて軍部中枢に戦略を提案し、地の利や技術の応用で魔物達を二戦、三戦と撃退するに至った。
時にはアタシ自身が魔物と戦う事もあった。
四種の【属性技術検定】を二級まで取得したから魔物との戦いも何てことはなかった。
そんな事もあってか、周りはアタシを『神童』って崇めて一個小隊を率いさせて戦場の要所を任せられるまでになった。
今考えると12歳の女の子に小隊長を務めさせるって軍も結構な無茶をするなーって感じだけど……それくらい、アタシは名実共に守護貴族【セーフ家】としての一員となって国の防衛に努めてた。
------------------------------------------
《ストレア大国.『ストレア王都軍事中央施設司令部』》
「ーーって事だからそこには防衛技術に特化した配置をするべきだと思うよー」
「シューズ、『ですからそこには~~……するべきだと思います』」
「えー……はーい、お姉ちゃん」
そんなある日、いつものように軍の司令部で魔王軍に対する会議をする事になってアタシはネットお姉ちゃんと王国防衛軍のみんなと打ち合わせしていた。
「……はっ! ここは言語教育の学院かね?! 学院初等部に通わせて言語を学ばせてきてはどうかね?」
「……ジャックルソー総司令官、大変失礼致しました。以降お時間はとらせませんのでお許しください。しかし、いつまでも言葉遣いの件で会議の進行を妨げられてはそちらの方が時間の無駄になると思われますが?」
防衛軍総司令官の人はアタシの言葉遣いが気にいらなかったみたいで会議で発言するたびに庇ってくれていたネットお姉ちゃんと言い争いになっていた。
「それで? シューズ、どうしてそう思ったの?」
「うん、最近の出現率の傾向からこの鉱山付近には攻撃型の魔物が多く見られる気がするんだー。きっと魔王軍は他を囮にして鉱山の占拠を狙ってる、だからまずは徹底的な防衛するんだよー」
「……鉱山を? あそこは『聖職石』の他には目立った産物はないはずだけど……何故魔物がそんなものを……?」
「うーん、それはわからないんだけど……」
「魔物が鉱石を狙う!? 馬鹿も休み休み言ってほしいものだな! そんな統計(データ)はない! 第一、そんな場所に割く防衛予算も人員もありはしない!」
「うん、それはわかってるよー。だからアタシに行かせてほしいんだー。今回は軍の兵士さんはいらないよー、防衛技術に特化した人達がいるから」
アタシはその技術者達の名を挙げる、【警備兵】のおじさん達を。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる