172 / 207
二章第二節 一流警備兵イシハラナツイ、〈続〉借金返済の旅
百二十九.敗北の夜
しおりを挟む「着きましたで、旦那ぁ。ここが港町『ボウソウハントウ』でさぁ」
◇ <港町『ボウソウハントウ』>
だもん騎士達と別れた翌日の夜更け、俺は港町に到着した。
町は既に閑散としており、曇り空のためか家々から漏れる灯りが唯一の光源だ。
灯台から差す光と潮の香りだけが、この町が港町であることを物語るほどに薄暗い。
道中は特に問題なく、何事もなく無事にサブイベントの発生を回避する事ができた。
強いて言えばこの地走竜【ヴェロラプト】が喧(やかま)しかったことぐらいだ。
どうやらこいつは精霊の資格を持っており、人語を話す事ができるらしい。【ヴェロラプト】というのは自分で付けた名前のようだ。
こいつとは色々話したけどどうでも良い事なので割愛する。
「アッシはここで大人しく待ってまさぁ、必要であればまたお声をおかけなすってくだせぇ」
「わかった」
俺はヴェロラプトを町の入口にある竜舎に繋ぎ、港を目指すーー
「……イシハラさぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
ーーために歩き出した瞬間、見知った顔が横から飛び付いてきた。
俺は『危険予知』をして難なく避けた。
ドタッ
「痛っ!! なっ……なんで避けるんですかっ!?」
「なんとなく」
地面に叩きつけられたムセンは起き上がり、再度抱きつこうとしてきたため仕方なく抱き締めた。
「お疲れさん、無事で良かったな」
「ぅう……ぐすっ……ごめんなさい……約束したのに……シューズさんを救うことがっ……できませんでした……ぐすっ……」
「気にするな、所在を突き止めただけでも御の字だ。良くやった、ウテンとですわ騎士は無事か?」
「ぐすっ……はい、今は宿で安静に眠っています。それよりイシハラさん、アクアさんとリィさんはどうされたのですか?」
俺達は情報の共有をするため、適当に酒場に入ることにした。
------------------------------------------
◇<港町 酒場『カツウラコミナト』>
入った飯屋ではこれでもかというほどに海の幸を堪能できた。
しかし、この町もそうだがそろそろこの世界の屋号について考察する時がきたのかもしれない、名称が適当すぎる。
確か俺の場合スマホの技術によりこの世界の言語や各地の名称を俺にもわかるように自動翻訳しているみたいだが飯屋の名前が靴下だったりホテルの名前がバナナだったり色々とおかしい。翻訳機能がバグっているのではないだろうかそもそも異界文化の入り乱れた世界とは言ってもたまに翻訳されるのが英語になったりするのは一体どういうわけかこのオルスも大陸などによって言語に差異がありそれが翻訳に影響されているのだろうかということは骨っ娘だとか地走竜とか偽変態だとかの訛りもただのキャラづけかと思ったが出身や扱う言語によってそれが翻訳に影響しているということなのだろうかだとしたらあいつらと同じ出身のやつらがいたらそいつらは全員同じ言葉遣いで翻訳されてしまうのであってそうしたら誰が誰なのかごちゃごちゃになってわからなくなってしまうのであって
「……ふふ、イシハラさんのその考え事をしている時のよくわからない顔を見ると落ち着きます。いえ、そんな場合ではないんですけど……本当にいつもどんな時でも変わりませんね」
俺は飯をたいらげた後にこっちで起きた出来事をダイジェストにしてムセンに話した。
「…………魔王軍の中にも色々な方がいるのですね……でもみなさん無事で良かったです。いえ……リィさんとアクアさんは現在どうしているのかはわかりませんが……」
「それで? こっちでは何が起きたんだ?」
「……はい、最初からお話しします」
そして、港町で起こった事を聞いた。
----------------------------
--------------
----------
「ーーそして、ツリーさんは植物を使いネットさんを捕縛しました」
ムセンは起きた出来事を詳細に話す、バトルもの漫画よろしく本当にバトルしていたらしい。
ですわ騎士とウテンは戦闘(しょうぶ)では、シューズの姉とお付きの諜報員に勝っていたらしい。
では何故その二人が重症を負う事になったのか、をムセンが話し始める。まぁ大体予想できるけど。
「そして、ネットさんは『そろそろですね』と無表情で言いました……するとーー」
「ウテンが毒に侵されていて倒れた。それを見た一瞬の油断を突かれてですわ騎士は敗れた」
「!! ど……どうしてわかったのですか!? イシハラさん!」
「なんとなく」
勝負に負けながらも余裕綽々の態度であった事や、『彼岸』とかいうコードネームやらから適当に推察したが当たっていたようだ。
つまり連中は初めから真面目に勝負する気はなく、ただこいつらに後を追わせなければそれだけで良かったらしい。
自国にシューズを連れ帰ってしまえばもう本拠地(ホーム)だし手を出すのはより難しくなるであると考えて。
「……そうです……ウテンさんは短刀に塗られていたであろう毒により突然倒れました……そしてその瞬間にネットさんは蔦を燃やして捕縛を逃れ……ツリーさんを凶弾により襲いました」
「ですわ騎士の傷の具合は?」
「幸い……というべきなのか銃弾は全て急所から逸れていました。恐らくツリーさんはあの一瞬で急所を避けたのでしょう……大事には至っていません。しかし、その場はもう立つ事もできずに意識を失い……私も治療に必死でどうする事もできませんでした……」
そして、そいつらは難なく出港していったというわけか。
相手が悪かったな、予想ではあるが船にも何人かの技術者がいただろう。町で戦闘事になっていたにも関らず町民や衛兵が騒ぎ立てなかった事を考えると魔女のような空間隔離技術を持ったやつとかもいたかもしれない。
「ごめんなさい……私……」
「謝らなくていい、命があっただけ良かった。全員無事で何よりだ、少し休め」
「……ぅっ……うわぁぁぁぁんっ! イシハラさぁぁんっ!」
ムセンは店内にも関わらず再度泣きながら抱きついてくる、まぁ怖い思いをしたんだろうから仕方あるまい。
さて、今日は船も出ないだろうし夜も遅い。
ひとまず眠ってから考えるとしよう、おやすみ。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる