一級警備員の俺が異世界転生したら一流警備兵になったけど色々と勧誘されて鬱陶しい

司真 緋水銀

文字の大きさ
194 / 207
二章第三節.イシハラナツイ、〈続〉〈続〉借金返済の旅

百三十九.事故ったら必ず病院へ

しおりを挟む

 日本国内では珍しい『環状交差点』。
 ドーナツ型になっており、そこでは時計回りにクルマがゆっくりと走る。中心部は走行不可能空間であり、進入したクルマはドーナツの上下左右ーー東西南北に接した道路のいずれかに周(まわ)って出ればいい。信号機も標識もないために初見で走るには中々難易度の高い道路だ。

 ファンタジー世界で何の説明をさせてんだこの野郎。

 日本国内には数えるほどしか無いために、ここに行った警備員も少ないだろう。かくいう俺も一度しか行った事はない。環状交差点が出来上がった当初の試験運用に伴い、間違って反時計回りで進入するクルマを防ぐ為だ。つまりは右折をさせないため。日本は左側通行なので反時計回りだと逆走になって大惨事になってしまうのだ。

「なっ……なっ……何これぇっ!? そ……某の『漢花道舞台』がっ……強制的に閉じられたぁっ!?」

 棒役者はあたふたしてキャラを失っている、てっきり侍口調のキャラかと思っていたが本来は役者であるためになりきっていただけのようだ。

「……信じられねぇ……いとも簡単に職業展開しやがった……普通なら5~6年……才ある奴でも修得に1年以上はかかる筈だってぇのに……ば……ばっはっはっ!!!」
「……はは、もう笑うしかないねぇ……なんだってこんな奴が今まで隠れてたんだぃ………イシハラなら魔王だってどうにかできるだろぅに……」
「……イシハラさんをもう少し知ればわかるはずです。どうにかする気がゼロなんですあの人は……」

プップー

「ひぃっ!!? 何だこの面妖な鉄の塊はっ!? 奇怪な音を出したっ!?」

 俺はドーナツの外側の歩道にいたが、棒役者は道路のど真ん中に配置されていた為に走ってくるクルマにクラクションを鳴らされている。
 まるで本物のようだが、この職場(テリトリー)ではクルマは相手にどのように作用するんだろうか。
 初めて出したのでわからない事だらけだけど、安全を喫するためクルマを止めて棒役者を歩道に誘導しなければなるまい。
 いや、しかしよく考えれば仕事でもないのに何で俺がそんな事しなくちゃならんのだ。警察の仕事だろう。別にただの領域であって仕事してるわけじゃないんだから、と考えを改めて放っておくことにした。
 俺は警備の職業に矜持(きょうじ)を持ってるわけじゃないし、プライベートで仕事する正義感を持ってるわけでもない。それに今どきのなろう系は敵を助けたりしないんだからな。

キキーッドンッ

「ぶへぇっ!?」
「あ」

 棒役者が轢かれた。
 実際に衝突されるのかよこの空間、やはり幻術の類いじゃないわけだ。クルマがゆっくり走っていたから良かったものの高速道路なんかだったら死んでたな棒役者。だが、喩えゆっくりだろうと後遺症が出る事もあるからクルマに衝突したらちゃんと病院に行くんだぞ。

 と、いうわけで俺達は無事にレジスタンス入りを果たした。

------------------------------------------

〈レジスタンスのアジト 医務室〉

 棒役者のケガは職業展開を解くとみるみる回復した。どうやらフィールド内のギミックはフィールド内だけで作用するらしい。気絶したままだったので一応医務室でムセンが看病したが体に異常はないようだった。
 医務室には主要人物が全員わらわらと集まっている。

「あんた治癒技術が使えるのかぃ、助かるよ。うちには神官や医者なんて上級職は当然いないからね」
「お役に立てたなら良かったです、イシハラさん。大会の件を聞かなくてよろしいのですか?」
「その件ならミチュリんから聞いたぜ、あいつの説明だと今いち要領を得なかったが……要は友達の不当な処遇を取り消させたいんだろ? 確かに大会で優勝さえすりゃあその職業は王への謁見、意見陳述も可能になる。だが願いが聞き届けられるかは別だ」
「え?! ニャんでニャ?」
「王や教皇ってのぁ何にも左右されない【特別職】って地位にいるからだ、優勝してもなれるのは【上級職】って1ランク下の地位のみだからな」

 それはそうだろう、優勝した奴が『王の地位をよこせ』なんて言ってもそれが叶うわけがない。あくまで意見する地位を得るだけだ、王がNOと言ってしまえばそれまで。
 要はこの大会は【特別職】とかいう奴等が下々の職業者たちが必死に地位を獲得せんとする様を眺めて遊んでいるだけの余興だ。真剣に相手をするわけない。

「そんな……」
「しかも、だ。喩えばそのお友達が『取るに足らない一般人』であれば処刑を取り消すのも容易だろうが、相手はあの守護貴族。仮に優勝してもその願いを王が叶えるだろう割合は一割もねぇだろう、守護貴族は【特別職】だから当然面子の方を優先させる」
「じゃ……じゃあ大会に出る意味なんかまるでニャいじゃニャいかよぅ……」
「いや、そうでもねぇ。大会の本選は『ストレア王都』の上級区にある闘技場で開かれる、その日だけは勝ち抜いたどんな職業の奴等にも門戸が開かれるのさ」
「成程、狙いはそこなわけか」
「そうさ、だからイシハラ。お前さんは大会に出場して勝ち抜け、大会本選はあらゆる【特別職】が観覧に顔を出す。つまり警護も割かれる、手薄になった牢にいるであろう友達は俺達が助けてやる」
「お前らレジスタンスの目的のついでにか?」
「ばっはっはっ!!! 構わねえだろ? 互いに利用しつつ利用されてやるんだからよ」

 まぁ確かに。
 つまり俺は囮であり陽動、できるだけ大会を勝ち抜いて目を引いてシューズ救出が為されたら帰っていいわけだ。城に侵入するとか面倒だしそっちの方が楽そうだ。俺が周囲の目を引いていればレジスタンス達の目的も達成しやすくなる、Win-Winなわけだな。

「細かい作戦や役割はこれから練る、大会予選は今から10日後ーー場所は王都隣接のオルベルク地方にある【風天の魔女ビューラーの塔】だ。エントリーは俺らに任せとけ。お前らはここで英気を養っときな」
「10日ですか……確かストレア王都まで普通に行軍すると5日ほど……シューズさんの処刑がいつ実行されてしまうかわからないのが不安ですが……」
「その点については心配いらねぇ、大会日時と被ってりゃあ処刑よりもまず間違いなく大会が優先される。裁判をしている暇もねぇくらいにこのイベントにお偉方は御執心だ、大会が終わってからになるだろうよ」

 ふむ、まぁ裁判や処刑にも段取りや人手が必要だからな。ましてや元とはいえ貴族のシューズだ、着いてすぐ処刑なんて事にはならないだろう。どちらにせよ、正面突破が出来ないのならばこの裏道攻略に賭けるしか無さそうだ。

「イシハラさん、お話があります」
「ん?」

 色々と考えているとムセンが話しかけてきた、ムセンだけじゃなくーー警備兵一行が全員キリッとした顔をしている。何の用だ?

「私達全員に残り10日間で【職業展開】を使えるように指導してください」

 ムセン達は事前に話し合っていたようで全員同じ意見のようだ。
 あれが出来るようになれば戦力が大幅にアップするからな、俺も同じ事を考えていた。
 仕方あるまい、見込み的には確率0に等しいーーだが、1か8かの賭けは嫌いだが100か0かの賭けは嫌いじゃない。
 こいつらが【職業展開】を修得できれば作戦成功率が上がり、できなければ時間が全て無駄になる。

「いいだろう、警備指導を始めよう」
 
 
 
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...