百物語 厄災

嵐山ノキ

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第四話 お辞儀をして回る女

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 大学生であるDさんは一人暮らしをするマンションの向かいにある公園で、夜に友人と酒盛りをしていたという。
 近所のコンビニで酒を買い、公園まで持ってきて他愛もない話をしながら飲む。しばしばこうやって友人との時間を楽しんでいた。

 ちょうど自分の部屋だけでなく他の部屋の入口も一望できる位置で飲んでおり、酔っ払ってもすぐに帰れるのが強みだ。
 このときも徐々に酔いが回ってきていたが、友人があることに気づく。

「なあ、お前の部屋の前だっけあそこ、なんか女がいるんだけど」

 Dさんが自分の部屋に目を向ける。
 黒く長い髪をした女性が、マンションの廊下をゆっくりと歩いているのが見えた。

「いや、俺の部屋は1つ上の階だから……」

 実際にDさんの部屋は階上であった。
 しかしDさんは何か気になり、女の姿を目で追い続けた。
 女はその階の部屋のドアの前に立ち、一軒ずつお辞儀をしてから次の部屋へと移っているのだ。

「え……? 何……」

 友人がつぶやき、Dさんと顔を見合わせた。
 そして2人が再びマンションの方を向くと、女は上の階へと移動していた。

「ちょ、このままだと俺の部屋まで来るんじゃないのか?」

「お、俺たちも行くか」

 動き出しかける友人だが、Dさんはその場で成り行きを見守ることにした。
 女は階段で移動したのか、廊下の端から反対側の端へ向かって、各ドアの前でお辞儀をしながら歩いて行く。Dさんの部屋は向こうの端から2番目だ。

「お、おい、次は俺の部屋……」

 女がDさんの部屋の前で立ち止まり、やはりドアに向かってお辞儀をした。
 そして次の部屋の方へ、廊下の端へ向かって歩いて行くがなぜか最後の部屋の前では立ち止まらず、そのまま階段に達して姿を消した。

「あれ、最後の部屋だけ、何もしなかったよな」

「うん、そのまま行ったように見えた」

 2人は女が次にどこに現れるのかと階段の辺りを凝視していたが、そのまま女は姿を消してしまった。Dさんは身体の震えがしばらく止まらなかったという。

 翌日の晩、Dさんの隣の部屋が騒がしくなり、彼は寝ているところを起こされた。
 救急車が来ていたようだった。

 隣に住んでいたのは同じ大学に通う女子大生だったが、恋人との喧嘩の末に包丁で刺されて自分で救急車を呼んだらしい。
 結局助からず、隣が空き部屋となったことを後ほどDさんは知った。
 謎の女の行動がどう関係しているのか、お辞儀にどういった意味があったのか、Dさんは見当も付かないという。
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