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第五十七話 Dくんがいない
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この話をしてくれたAさんは、あんなことをしたばかりに友人を失うことになり、後悔しているという。
「晩飯食べてからその場のノリで心霊スポットでも行くかって話になって」
酒は入っていなかったため、車を使って遠くまで繰り出せたのだった。
「俺と彼女のH、友達のDとWの4人で、俺が運転、助手席にHだったかな。他は後ろ」
ネットで検索して一番上に出てきたというトンネルに行くことになった。
山道を運転し、30分ほどして目的地まで着いた。
車を停め、ライトを付けっぱなしにして中に入ることにする。
「おお、なんか涼しいな」
季節は夏だというのに、中はひんやりとしていた。
どこからかの水が壁を伝い、地面のそこかしこに水たまりができている。
「足元が危ないな」
Aさんは注意しながら歩く。先頭にライトを持ったAさん、後ろにHさん、Wさん、Dさんの順番で連なってトンネルの出口を目指した。
「心霊スポットとは言いつつも、何もないな。暗いだけだ」
「たいしたことないよね」
軽口を叩きながら進む。歩く靴音だけがコツンコツンと反響する。
「あれ、Dくんいる?」
彼女のHさんが気づいた。Aさんが振り返ると、確かにDさんの姿がない。
すぐ前を歩いていたはずのWさんもDさんがいつの間にいなくなったのか把握できていない。
「え、神隠し?」
「おい、D、いるか?」
トンネル内で呼びかける。
結構歩いたために、出口が間近だった。
そこにAさんは意外なものを見る。
「なあ、あれDじゃねえ?」
「えっ?」
トンネルの出口の前に誰かが立っている。
それはDさんの姿のように思われた。
さらに近づくと、まさしくDさんだ。少しうつむき加減だが、口元にはわずかに笑みを浮かべている。
「おい、いつ俺たちを追い抜いていったんだ?」
「暗いから全然わかんなかったよ、あたし達をびっくりさせようとか思ったの?」
Aさんと彼女のHさんが呼びかけるが、Dさんはそれには答えず、トンネル内を入口の方へ戻っていく。
「なんかあったのかな?」
「驚かす前に俺たちが来ちゃったんで、失敗したとか思ってんだろ」
Dさんの後に続いて他の3人もトンネル内を進む。
最初に来たときの不安感が薄れていた。
そして来たときの入口まで着いた。
「何もなかったな。帰ろうぜ」
皆が車に乗り込み、Aさんが車を発進する。
山道を下っていくが、車内は無言だ。
Aさんがバックミラーで後部座席を見ると、Wさんは外を眺めておりDさんはうつむいているのが見えた。助手席のHさんはスマホをいじっている。
ほどなくして、Aさんは妙な耳鳴りがすると感じ始めた。
キーンという音が鳴り響き、頭が痛くなってくる。
突然、バンという、何かが叩かれたような音がした。
「うわっ」
Aさんが驚いた声を上げる。
フロントガラスに何者かの手形が付いたのだ。
「えっ?」
Hさんもそれを見て怯える。
Aさんは車を停めようかとも思ったが、手形を付けた「何か」が近くにいるとしたら、すぐに離れる必要も感じられた。
後部座席の2人にも伝えたかったが、耳鳴りもひどくなってきている。
一瞬バックミラーに目をやる。
驚きの光景があった。
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
耳鳴りだと思っていた不快な音は、Dさんの口から出ていた。
あまりに高い音で、人間の声だとわからなかったのである 。
白目になり、Oの字に開いた口から奇声を上げ続けるDさん。明らかに尋常ではない。
「黙れよおっ!」
Dさんの隣に座っていたWさんがなんとDさんの首に手をかけ、かなりの力で締め始めたのである。
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
奇声は止まない。
喉を締め付けられるためか声が途切れ途切れにはなるものの、耳障りな高音がAさんをパニックに陥らせる。
彼女のHさんは助手席で前屈みになり、頭を抱えている。
Aさんは夢中で車を走らせた。
何の勝算もないが、山さえ降りればなんとかなると思った。
途中にわずかに出現する信号は全て無視した。
後部座席の喧騒を見て見ぬ振りし、助手席で嗚咽を漏らすHさんにも構わなかった。
そして街の明かりが見えてきたところで、右折してくる対向車に衝突した。
「気づいたら病院だった」
Aさんは当時を思い返して語る。
「対向車の人は幸い軽傷だった。俺は脚を折って入院してたけど」
こちら側の信号無視ということでAさんは加害者側となっていた。
「HとWは軽傷で済んだけど、Dだけは……」
Aさんの声のトーンが下がる。
事故現場にDさんの姿はなかった。
事故の衝撃で横に座っていたWさんも意識を失い、当時のことは覚えていないという。
いつの間にか、姿を消していた。
「トンネルの中からあいつの様子が少しおかしかった。もしかしたら車の手形も関係しているのかもしれない」
Aさんは後悔しながら言う。Dさんの行方は未だにわかっていない。
「あんな心霊スポットになんて、行かなければよかった」
そしてAさんにはもう1つ気になることがあった。
「あと、あのトンネルが心霊スポットとして紹介されてた理由があったはずなんだけど、その理由が思い出せないんだよな」
トンネル自体は確かに存在していた。ナビに入れた履歴からもそれがわかった。
しかし、ネット上でそこが心霊スポットとされていた痕跡だけは、見つからなかったのである。
「晩飯食べてからその場のノリで心霊スポットでも行くかって話になって」
酒は入っていなかったため、車を使って遠くまで繰り出せたのだった。
「俺と彼女のH、友達のDとWの4人で、俺が運転、助手席にHだったかな。他は後ろ」
ネットで検索して一番上に出てきたというトンネルに行くことになった。
山道を運転し、30分ほどして目的地まで着いた。
車を停め、ライトを付けっぱなしにして中に入ることにする。
「おお、なんか涼しいな」
季節は夏だというのに、中はひんやりとしていた。
どこからかの水が壁を伝い、地面のそこかしこに水たまりができている。
「足元が危ないな」
Aさんは注意しながら歩く。先頭にライトを持ったAさん、後ろにHさん、Wさん、Dさんの順番で連なってトンネルの出口を目指した。
「心霊スポットとは言いつつも、何もないな。暗いだけだ」
「たいしたことないよね」
軽口を叩きながら進む。歩く靴音だけがコツンコツンと反響する。
「あれ、Dくんいる?」
彼女のHさんが気づいた。Aさんが振り返ると、確かにDさんの姿がない。
すぐ前を歩いていたはずのWさんもDさんがいつの間にいなくなったのか把握できていない。
「え、神隠し?」
「おい、D、いるか?」
トンネル内で呼びかける。
結構歩いたために、出口が間近だった。
そこにAさんは意外なものを見る。
「なあ、あれDじゃねえ?」
「えっ?」
トンネルの出口の前に誰かが立っている。
それはDさんの姿のように思われた。
さらに近づくと、まさしくDさんだ。少しうつむき加減だが、口元にはわずかに笑みを浮かべている。
「おい、いつ俺たちを追い抜いていったんだ?」
「暗いから全然わかんなかったよ、あたし達をびっくりさせようとか思ったの?」
Aさんと彼女のHさんが呼びかけるが、Dさんはそれには答えず、トンネル内を入口の方へ戻っていく。
「なんかあったのかな?」
「驚かす前に俺たちが来ちゃったんで、失敗したとか思ってんだろ」
Dさんの後に続いて他の3人もトンネル内を進む。
最初に来たときの不安感が薄れていた。
そして来たときの入口まで着いた。
「何もなかったな。帰ろうぜ」
皆が車に乗り込み、Aさんが車を発進する。
山道を下っていくが、車内は無言だ。
Aさんがバックミラーで後部座席を見ると、Wさんは外を眺めておりDさんはうつむいているのが見えた。助手席のHさんはスマホをいじっている。
ほどなくして、Aさんは妙な耳鳴りがすると感じ始めた。
キーンという音が鳴り響き、頭が痛くなってくる。
突然、バンという、何かが叩かれたような音がした。
「うわっ」
Aさんが驚いた声を上げる。
フロントガラスに何者かの手形が付いたのだ。
「えっ?」
Hさんもそれを見て怯える。
Aさんは車を停めようかとも思ったが、手形を付けた「何か」が近くにいるとしたら、すぐに離れる必要も感じられた。
後部座席の2人にも伝えたかったが、耳鳴りもひどくなってきている。
一瞬バックミラーに目をやる。
驚きの光景があった。
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
耳鳴りだと思っていた不快な音は、Dさんの口から出ていた。
あまりに高い音で、人間の声だとわからなかったのである 。
白目になり、Oの字に開いた口から奇声を上げ続けるDさん。明らかに尋常ではない。
「黙れよおっ!」
Dさんの隣に座っていたWさんがなんとDさんの首に手をかけ、かなりの力で締め始めたのである。
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
奇声は止まない。
喉を締め付けられるためか声が途切れ途切れにはなるものの、耳障りな高音がAさんをパニックに陥らせる。
彼女のHさんは助手席で前屈みになり、頭を抱えている。
Aさんは夢中で車を走らせた。
何の勝算もないが、山さえ降りればなんとかなると思った。
途中にわずかに出現する信号は全て無視した。
後部座席の喧騒を見て見ぬ振りし、助手席で嗚咽を漏らすHさんにも構わなかった。
そして街の明かりが見えてきたところで、右折してくる対向車に衝突した。
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Aさんは当時を思い返して語る。
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「HとWは軽傷で済んだけど、Dだけは……」
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事故現場にDさんの姿はなかった。
事故の衝撃で横に座っていたWさんも意識を失い、当時のことは覚えていないという。
いつの間にか、姿を消していた。
「トンネルの中からあいつの様子が少しおかしかった。もしかしたら車の手形も関係しているのかもしれない」
Aさんは後悔しながら言う。Dさんの行方は未だにわかっていない。
「あんな心霊スポットになんて、行かなければよかった」
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