透明な枷をつけたまま

白崎ぼたん

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透明な枷

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「おかえりなさい、兄様」

 扉が開くなり、飛びついた私を、いつもあなたは笑って受け止めてくれた。

「いい子にしていたか?」
「はい」

 私の頭を撫でて、かかえきれないほどの土産を渡してくれた。
 なにも、それだけじゃない。
 文字、本、戦う術。
 あなたは私にいろんなものを与えてくれた。
 何より、あなたは私にあなたを与えてくれた。

 けれども、私の足には、いつも透明な枷があった。

「いいか。お前には私が全てを与えてやる」

 だから、なにも見るんじゃない。
 そう言って、扉はいつも閉まった――。


 ◇

 暗闇の中、ようはひたすらに駆けていた。
 めぼしい追っ手はすべて倒した。
 そう走らずとも、もう追ってはこれまい。わかっているのに、足を止めずにはいられなかった。
 だって、大好きな人を振り切ってきたから。
 追っ手は諦めても、この心が諦めることはないだろう。今止まっては、この心に捕まってしまう。
 涙がとめどなく溢れていた。

あきら兄様……!」

 兄様、兄様。兄様兄様兄様。
 さようなら。
 私の、世界一大切なかた。

 婚礼を許される十八の歳を、目前にしてのことだった。

 
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