32 / 74
第四章
31
しおりを挟むジュゼッペ様はギャルツ公爵家の令嬢。
私が知るギャルツ家は公爵家の中でも大きな存在であるということ。
オルティアナ家は公爵家の中でも落ちこぼれ。
それもありあまり他の公爵家とは関わることをしていなかったので、当然ギャルツ家のこともそれくらいしか知らない。
「我がギャルツ家は……誇り高き一族の集まりだと思いますわ。良く言えば品のある、悪く言えばプライドが高すぎる…そんな人の集まりです。」
なるほど。
典型的な公爵家ということなのかな。
「ギャルツ家に生まれたからには、家に貢献しなくてはなりませんの。…そうしなくては、居場所が与えてもらえませんから」
厳しい家…ということだろうか。
「私は……何の才能も無く、あの家では価値のない人間としてずっと居場所を与えてもらえませんでしたわ。家族に家族として扱ってもらえず、ずっと一人だったのです……」
ジュゼッペ様はどこか寂しそうに言う。
「……お父様は家を大きくすることしか考えていませんでした。子供はその道具としか思っていなかったのだと思いますわ。…子は親に似ると言うでしょう?…二人の兄様もお父様に似て、無能な私のことを気にかけることなどはもちろん、無いものとして扱っていました」
「味方は…いなかったのですか……?」
「…お母様は…唯一私のことを守って下さいました。才能など無くても良い
、貴女の居場所はここにある…そう言ってくださいました…。お母様だけが、何も持たない私の家族でいてくださったの」
表情が少し柔らかくなり、落ち着きが見えた。
「あの家にいることも、お父様や兄様達からどんなに罵倒されようと耐えられました。常にお母様が傍にいてくださったから」
「………」
「そんな中、今回このような殿下の婚約者候補になれるという大きな話を聞き、もちろんお父様は受けましたわ。これは兄様達にはできぬ事、ギャルツ家の恥にならぬようにという気持ちももちろんありましたわ。ですがそれ以上に、お母様を安心させたいという気持ちがありました。……お母様が私を庇ってくれたことは数え切れぬほどありましたから。だから今回の件、絶対に婚約者になると決めたのです。礼儀作法など才能が関係無いことで劣ることは無いと思っていましたから。……他に必要なことならいくらでも努力をするつもりでした。王妃は才能だけで選ぶものではないでしょう?…それを信じて頑張ってきました。だから焦りましたのよ?まだお会いしかしていないのに婚約者はアイシア様…貴女に決まったと聞いて」
「だから、あんなに詰め寄って」
「えぇ。……私にはこの件しかありませんでしたから。……幸運なことにも、婚約者候補になれて嬉しかったですわ。それ以上に安心いたしました。第一段階は突破できた、これからはしっかりと努力しなくては。そう思っていましたの」
穏やかだった雰囲気は、一気に暗くなる。
「ねぇ…アイシア様。どうして私が一度家に帰るように言われたときに帰らなかったと思います?」
「どうしてって…」
家族に会いたくない…は違うか。
母には会いたいだろうから。
「もちろん。お母様に直で報告したいと思っていましたわ。一番最初に聞いてほしいと」
「…なら」
「………それはもう、叶わなくなってしまいましたわ」
今にも泣き出しそうなジュゼッペ様。
彼女の涙声からは何も感じられなかった。
瞳には、出会った頃のような光が無かった。
22
あなたにおすすめの小説
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~
ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。
騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。
母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。
そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。
望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。
※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。
※表紙画像はAIで作成したものです
婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました
有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。
魔力が弱い私には、価値がないという現実。
泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。
そこで目覚めた彼は、私を見て言った。
「やっと見つけた。私の番よ」
彼の前でだけ、私の魔力は輝く。
奪われた尊厳、歪められた運命。
すべてを取り戻した先にあるのは……
【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される
えとう蜜夏
恋愛
リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。
お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。
少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。
22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~
白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」
枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。
土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。
「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」
あなた誰!?
やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!
虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる