72 / 74
第八章
最終話
────結婚式当日。
人生で最大のイベントと言っても過言ではないこの日が遂にやってきてしまった。
「はぁ………」
誰もいない控え室で待機をしていた。
化粧を施し、1つ目のドレスを纏った私はただ何も考えずぼーっとしていた。
部屋の扉を叩く音が聞こえる。
「どうぞ」
「…………シア、とても綺麗です」
「ルディも。いつも以上に素敵ね」
「シアには敵いません…」
現れたルディは王族の正装に身を包んでいた。ちなみに私の1つ目のドレスと言うのはルディの正装に合わせて作ったものだ。
「シア、こちらを」
そう言うとルディは私の首にきらびやかなネックレスをつけた。
「……これは?」
「王家代々に伝わるネックレスですよ。花嫁が身につける伝統的なものです」
「通りで豪華ね……少し気が引けるわ」
「ですが、とても似合っています」
「……ありがとう」
少しネックレスが重く感じる。
「今日は大変だと思いますが、頑張りましょう。……ですがくれぐれも無理はしないように」
「でも頑張るわ」
少し意気込んだ。普段だらけている分しっかりしなければぼろが出そうだ。
「…では、行きましょうか」
「ええ、そうね」
「お手をどうぞ」
差し出された手を取り、私達は待ってくれる人達の元へ向かった。
午前中は国民への挨拶の後、貴族への挨拶。
国民への挨拶は城から姿を見せた。ルディは優秀な王子として民からの絶大な支持を得ていた為に多くの人に祝われる事となった。
貴族への挨拶は本当に簡易的なパーティーを行った。本来なら上位貴族がルディと私に挨拶をするものだが数が多いのでルディが省略させた。反感を買うかと思ったが、ルディにすり寄ることや貴族が自分を売り出すことが無駄なのは周知な事だったのでそんな事は無かった。
そして午後。
王家とオルティアナ公爵家のみ教会へ集まり、しっかりとした結婚式が行われた。
ここで、ドレスが変わる。
もう一つのドレス、それはウエディングドレスである。この世界にウエディングドレスというものは存在しないけれど、無いのなら作りましょうとルディのゴリ押しで制作された美しい純白のドレス。始めて見たときに見た目に圧倒されたのもあったが、1つ目のドレスに負けないくらいお金がかかっていそうで少し胃が痛かった。
「……シア、とても似合ってるよ。さすがだ」
「ありがとうございます父様」
「殿下に申し訳ないな…先に目にしてしまって」
「かなり揉めましたよね」
「うん…」
そう。私のドレス姿を一番に見れぬと悟ったルディは何とかならないか画策しだした。しかし、兄様に諭されすっぱりと諦めたのであった。………兄様、さすがです。
「緊張している…?」
「えぇ、まぁ」
「…父様も緊張してる」
「え…」
「というか…寂しいよ。だって……シアが巣立って行くなんて。ミラより後か…それか無いとさえ思っていたのに。奇跡は起こるんだね」
どこか寂しそうに笑う父様の姿に今までの感謝が込み上げてきた。
「………父様、今までありがとうございます」
「…その言い方は嫌だよ。これらは無いみたいで。…シア、僕たちはいつまでも君の親だからね」
その言葉以上に暖かいものなんてないくらい胸に染み込んだ。
「………そろそろ行こうか」
「そうですね」
「…あ、どうしよう。泣きそう」
「え、早いですよ」
「うん。…まだ駄目だよね」
「はい」
そうしてバージンロードを歩き始めた。
中で待つのは国王陛下と王妃様。そして母様と兄様と義姉様とミラ。ガイさんは護衛を兼任しながら出席。
皆が暖かく優しい目で見守ってくれた。
「じゃあ、シア」
そう言うと、私は父様からルディの元へ。
「………シア」
何度この手を取ったことだろうか。それでも今回はいつもと違い特別なことになる。
「…ルディ」
目の前にいるルディは、真っ白なタキシードを纏っている。
「…美し過ぎて息が止まるかと思いました」
「大袈裟よ」
「いえ、とても綺麗です」
「………………………ありがとう」
褒め言葉はいくら言われてもやはり慣れない。
優しい誓いのキスから始まり、父様と母様が号泣。更にミラと義姉様まで。その後披露宴へなると国王様がお酒を飲み過ぎルディにうざ絡み。王妃様は優しく笑うだけだった。ルディだけなら良かったものの、兄様まで被害に。それなのに対応できる兄様……本当に変わられたななんて感じた私がいた。
もっともっとたくさんの事があったのにあっという間に感じた。
…そして、お開きになった。
「……シア、お疲れ様です」
「ルディこそ。お疲れ様………国王陛下は?」
「寝ていると思いますよ」
心なしか少しルディはやつれている気がした。
「…………ねぇ、ルディ」
「…どうかされましたか?」
「…今、私凄く幸せだよ」
「……いきなりどうしたんですか」
「いや…伝えておかないといけないかなって思って」
「そう…ですか」
「ルディのお陰でのんびり過ごせそうだし」
「それは…シアが前世頑張った貯金があるからですよ。前に約束した通り、シアの負担は最大限減らしますから」
「……だからといって無理はしないでね」
「………」
「しないでね」
「…わかりました」
「……もう夫婦なのだから、支え合うのが普通でしょ?…私は確かにのんびり暮らすのは理想だけどルディばかりに負担がいくことは望んでいないからね」
「……シア」
「ルディ。愛してるからね」
「………シア、どうしてそう反則な事ばかりするんですか」
「あら、なに?女性から想いを伝えては駄目なの?」
「……いえ」
私が想いを逐一伝えなければ、ルディは不安になりやすいから変な思い込みを始めてしまう。それもあって伝えている。
「……シア」
「何?」
「私も貴女を……貴女だけを愛しています。私の手を取って頂いたからには私の全てをかけて貴女を幸せにしますから」
「………ありがとう」
少し重い気もするが、そんなの今更である。
「…………シア、貴女は私だけのものですよ」
そう告げると、ルディは深い口づけを落とした。
────ルディ、いつまでもずっと貴方だけを。
こうしてアイシア・オルティアナ……いや、アイシア・グリティスは念願ののんびり生活を手にし最愛の人と結ばれ、それはそれは幸せに過ごしたのであった。
あなたにおすすめの小説
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
噂の悪女が妻になりました
はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。
国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。
その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。
今宵、薔薇の園で
天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。
しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。
彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。
キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。
そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。
彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。
逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。
みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。
ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。
失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。
ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。
こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。
二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
モブ令嬢、当て馬の恋を応援する
みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?