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1話 霧夜
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どうやら霧夜という街には、夜は来ないようです。
カラフルなネオンは消えることが無く、ここに住む人達は眠る事を忘れてしまってるみたい。
今日からここで、私の初仕事が始まります。
ルシルさんは煙草の甘い煙を吐きながら、
「グッドラック、いちごちゃん」と、応援してくれたのは嬉しいですが、不幸の象徴である悪魔が幸運を祈るのはなんだか矛盾しているような気がするのです。
私は駅前のペンギンさん像の前に立ち、街行く人達をじっと見つめます。サラリーマンというこの国ではポピュラーな方々が沢山通りすぎて行きます。
女子高生と言う名の女の子達も……彼女達はどちらかというとギャルと呼ばれる人達かも。
胸元の開いたシャツ短いスカートから下着が見え隠れ……。
……あの子達は食べられたいのでしょうか?
それとも、もう……
そう思うと、羨ましいと思ってしまい、すぐに首を振り、思考を消し去ります。
ルシルさんには”食べられる”事を固く禁止されているのです。
それが、あの人と一緒にいられる条件。
気を取り直してお客様を探します。
ルシルさんは悪魔に縋ってでも夢を見たい人はオーラで分かると言っていましたが……どこにもそんな人は見当たりません。
「どうしましょう……」
まだ慣れない景色の中で急に心細くなります。もし私がお客様を見つけられなかったら……彼は意地悪な言葉を吐き、優しい顔で許してくれるのでしょう。
意地悪な言葉は、愛でられ続けた私には刺激が強すぎます。熱いスープを飲み込んだ様に、顔と胸の奥が熱くなるのです。あの感覚はとっても苦手です。だから早く見つけないと。
その時――見つけました!
淡い紫色の光を放つ人を。
その光は小さい頃図鑑で見た、南極のオーロラの様でした。
「きれい……」
私は思わず見とれてしまいます。自分には無い輝き、それは、夢を見る事が出来る人が放つ幻想の輝きなのだと感じました。
「おじさま!」私はオーラを放つ男性に声を掛けます。
男性はビクリと一瞬身体を振るわせ、こちらを見返ります。
「おじさま?……僕?」
「そうです、おじさま」
私は微笑みます。この笑顔は前に練習した男の人を癒す笑い方。
「……何?」
とても虚ろな声でした。ルシルさんが夢は希望でもあり、絶望でもあると言っていましたので、こういう方が"夢”を見る事が出来るんだなと妙に納得してしまいました。私は微笑みを崩さず答えます。
「私と2人で楽しい夢を見ませんか?」
おじさまは一瞬驚きを見せ、すぐに乾いた笑みを浮かべました。
「夢?……夢かぁ……。ッハハ、それはいいや。どうせ僕はもう駄目だ。君みたいな可愛い子と夢を見たって……バチは当たらないだろう」
可愛いと言う言葉に嬉しくなり、同時にホッとします。
やっぱり私は可愛く見えるのね。
ルシルさんの薔薇の棘の様な”可愛い”では無く、普通の”可愛い”。その言葉は、今の私の全てを表してしまう言葉だから。――やっぱり私は安心してしまうのです。
「はい! この仕事は初めてですが、おじさまの為に精一杯頑張ります!」
私の言葉を聞いたおじさまは、疲れた様に笑います。
「君、こういう事初めてなんだ……それはいいね。やるからには、……最低の方がいい」
「ありがとうございます! では早速ご案内しますね」
私はおじさまの手を引きます。彼は私の腰に手を回します。
私はおじさまの手を引きながら、ビルの電子パネルを見つめます。お酒を嗜む女性が映っています。
眠らない街の中で、夢を見たい人がいる。
そんな人達に夢を見せる悪魔がいる。
世の中の歯車は、精巧に精密に上手く回っているのだと私は思い、なんだか感動しました。
その時気分が高まったせいか、ルシルさんが魔法で隠してくれたで見えない、小さな黒い翼がバサリと広がりました。
カラフルなネオンは消えることが無く、ここに住む人達は眠る事を忘れてしまってるみたい。
今日からここで、私の初仕事が始まります。
ルシルさんは煙草の甘い煙を吐きながら、
「グッドラック、いちごちゃん」と、応援してくれたのは嬉しいですが、不幸の象徴である悪魔が幸運を祈るのはなんだか矛盾しているような気がするのです。
私は駅前のペンギンさん像の前に立ち、街行く人達をじっと見つめます。サラリーマンというこの国ではポピュラーな方々が沢山通りすぎて行きます。
女子高生と言う名の女の子達も……彼女達はどちらかというとギャルと呼ばれる人達かも。
胸元の開いたシャツ短いスカートから下着が見え隠れ……。
……あの子達は食べられたいのでしょうか?
それとも、もう……
そう思うと、羨ましいと思ってしまい、すぐに首を振り、思考を消し去ります。
ルシルさんには”食べられる”事を固く禁止されているのです。
それが、あの人と一緒にいられる条件。
気を取り直してお客様を探します。
ルシルさんは悪魔に縋ってでも夢を見たい人はオーラで分かると言っていましたが……どこにもそんな人は見当たりません。
「どうしましょう……」
まだ慣れない景色の中で急に心細くなります。もし私がお客様を見つけられなかったら……彼は意地悪な言葉を吐き、優しい顔で許してくれるのでしょう。
意地悪な言葉は、愛でられ続けた私には刺激が強すぎます。熱いスープを飲み込んだ様に、顔と胸の奥が熱くなるのです。あの感覚はとっても苦手です。だから早く見つけないと。
その時――見つけました!
淡い紫色の光を放つ人を。
その光は小さい頃図鑑で見た、南極のオーロラの様でした。
「きれい……」
私は思わず見とれてしまいます。自分には無い輝き、それは、夢を見る事が出来る人が放つ幻想の輝きなのだと感じました。
「おじさま!」私はオーラを放つ男性に声を掛けます。
男性はビクリと一瞬身体を振るわせ、こちらを見返ります。
「おじさま?……僕?」
「そうです、おじさま」
私は微笑みます。この笑顔は前に練習した男の人を癒す笑い方。
「……何?」
とても虚ろな声でした。ルシルさんが夢は希望でもあり、絶望でもあると言っていましたので、こういう方が"夢”を見る事が出来るんだなと妙に納得してしまいました。私は微笑みを崩さず答えます。
「私と2人で楽しい夢を見ませんか?」
おじさまは一瞬驚きを見せ、すぐに乾いた笑みを浮かべました。
「夢?……夢かぁ……。ッハハ、それはいいや。どうせ僕はもう駄目だ。君みたいな可愛い子と夢を見たって……バチは当たらないだろう」
可愛いと言う言葉に嬉しくなり、同時にホッとします。
やっぱり私は可愛く見えるのね。
ルシルさんの薔薇の棘の様な”可愛い”では無く、普通の”可愛い”。その言葉は、今の私の全てを表してしまう言葉だから。――やっぱり私は安心してしまうのです。
「はい! この仕事は初めてですが、おじさまの為に精一杯頑張ります!」
私の言葉を聞いたおじさまは、疲れた様に笑います。
「君、こういう事初めてなんだ……それはいいね。やるからには、……最低の方がいい」
「ありがとうございます! では早速ご案内しますね」
私はおじさまの手を引きます。彼は私の腰に手を回します。
私はおじさまの手を引きながら、ビルの電子パネルを見つめます。お酒を嗜む女性が映っています。
眠らない街の中で、夢を見たい人がいる。
そんな人達に夢を見せる悪魔がいる。
世の中の歯車は、精巧に精密に上手く回っているのだと私は思い、なんだか感動しました。
その時気分が高まったせいか、ルシルさんが魔法で隠してくれたで見えない、小さな黒い翼がバサリと広がりました。
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