従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々

ソラリアル

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第14話 家族になるために

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「この世界の野菜って、何があるんだ?」


クレオを唱える前に、まずどんな野菜が存在しているのか確認しておこうと思った。
クロやロウキに聞いてみたものの、返ってきた答えは——

「野菜は食べない」

……という、身も蓋もないものだった。


「じゃあ、こういう食べ物は見たことあるか?」


仕方なく、雑な絵を描いて二人に見せる。すると、今度は次々と答えが返ってきた。


「キャベツ! 人参! トマト!」


「それは玉ねぎだな。こっちは……きゅうり、というやつだ」

「なるほど……名前は俺のいた世界と同じなんだな。
意外すぎてちょっとビックリだな」


この世界でも、食べ物の名称が前世と変わらないことに、思わず安心してしまう。
そんな中、クロが「好きな野菜がある」と言い出した。


「ルビートマトってのが甘くてさ、果実みたいで美味しいんだぜ!」

「ああ。あれは我も好む。
ごく稀に実の中にルビーが入っていたことから、そう呼ばれるようになったそうだ」

「へぇ……ルビートマトか。
今度、この森を出て街で種を買ってみようかな」


異世界ならではの食べ物に、少し驚かされる。
実はトマトが苦手な俺だけど、ルビートマトなら食べられるかもしれない。

何はともあれ、まずは基本的な野菜からだ。
そう思い、頭の中でイメージしながら何度か「クレオ」と唱える。
すると、数種類の種が生成された。

さっそく植えてみると——
ものの5分ほどで、土を押しのけてニョキッと芽が出てきた。


「……は? 芽が出るの、早すぎない?」


これは異世界だから起こるものだろうか? 何でこんなに早いわけ?
なんて思いながら腕組みをしていると、横にいたロウキが教えてくれた。


「魔法で生成された種は、少々特殊な性質を持っていてな。
その種と完全浄化された土壌との相性は、極めて良いのだ。丸1日あれば実ると思うぞ」

「へぇ。なるほど。やっぱり異世界だな。
しかも明日には収穫できるのか……農家が泣くな、これ」


ロウキの説明を聞いて、思わず感心する。
魔法のある世界って、本当に反則みたいなことばかりだ。
でも——正直、楽しい。


「お前のような転生者の魔法は、通常の魔法より“純度”が高いと聞く。
威力がなくとも、基礎性能そのものが違うのだ」

「……初耳だぞ、それ。じゃあ、それも影響してるってことなのかな」

「かもしれんな」


ロウキは物知りだ。長く生きている分、世界の仕組みにも詳しいらしい。
そう思っていると、ロウキは口角を上げて、どこか得意げに言った。

「我がいた方が、今後の生活に役立つのではないか?」

「どういう流れだよ」

「それに、我が息子もお前たちの側にいたいと言っておる」

「……子供出すのはずるくない?」


ここに来て、再び従魔契約の話題。
しかも、子供を盾にしてくるという高度な交渉術だ。


「今、お前が抱えているものの扱いも、お前とクロより、我の方が適任だぞ?」

「……え」

「どうだ? 契約する気になっただろう?」

「ぬぐぅ……お前なぁ……」


卵にドラゴン、そしてクロ。確かに、ロウキの言葉は的を射ている。
——気づけば、心が少しずつ折れていた。
クロも、ユキから離れようとしない。引き離すのが可哀想だと思ってしまう自分もいる。


「ああ……こうやって俺は流されていくんだな……」


そう呟き、深く息を吐く。


「はぁ……何が何でも、従魔になる気なんだな?」

「そう言っておる」

「フェンリルだぞ?」

「くどい! 覚悟を決めて名を決めんか!」

「……分かったよ。じゃあ名前考えるから、ちょっと待ってくれ。
子供の分も、だよな?」

「当然だ。息子だからな。良い名を頼むぞ」

「期待しないでほしい……」


こうして、俺は名前を考えることになった。
名前を付けるのは、昔から苦手だ。
犬……いや、狼系の名前は食べ物由来が多いけど——
今回は、そんな軽い理由じゃ付けたくない。

ふと、呪いに縛られていたフェンリルの姿が頭をよぎる。
世界を滅ぼす魔獣? そんなの知らないね。幸せになったって、いいじゃないか。
そう思った瞬間、名前が浮かんだ。不思議と、迷いはなかった。


「契約って、どうするんだ?」

「我と息子に向かい、名を与えればよい」

「……分かった。俺の前世、日本語で名を付けようと思ってる」

「ほう。ならば呼べ。
我が眷属となりし者よ、この名を与える。そう言ってから名を呼べ」

「……分かった。
——我が眷属となりし者よ、この名を与える。狼輝(ロウキ)。そして……幸(ユキ)」

「ロウキ……ユキ……」


願いを込めた名前だ。疎まれる存在ではなく、輝いてほしい。
そして、その子には幸せを見つけてほしい。


「……その名に意味はあるのか?」

「狼輝は、俺のいた世界の文字でこう書くんだ。
“狼”として、“輝いてほしい”って意味だ。
ユキはこう書くよ。“幸せ”になってほしいって願いを込めた」

「……悪くないな」


そう言って、ロウキは頷いた。苦手な名づけ、無事に終わってホッとした瞬間だった。


「あ……そういえば俺の名前まだ言ってなかったな。俺はヨシヒロ。よろしくな」

「ヨシヒロよ。その命尽きるまで、我は側に在り、守護すると誓おう」

「……ありがとう」

「おー! よろしくなー! ユキー!」

「アオウウン!」


こうして、少し奇妙な家族が増えた。
先のことは分からない。でも——悪くない未来な気がする。


【通知:新たに従魔2匹の登録を完了しました。
個体名:ロウキ(フェンリル) 個体名:ユキ(フェンリル幼体)】


「お、ちゃんとエマもロウキとユキを登録してくれたみたいだな。
……さ、この森、少しずつ開拓していくか」

無事に(?)契約が終わりホッとした俺。
大きく背伸びをしながら、新しい生活について考えていた——









「主! 俺のクロって、どういう意味で付けてくれたんだ?」

「えっ!? えーと……
そのままなんだけど、“黒色”のクロ。
静かで落ち着いてて、でも神秘的な色なんだ。
だから、クロはクロなんだよ」

「よく分かんないけど、主が付けてくれた名前だから好きだ!」

「そっか。それなら良かった」
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