従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々

ソラリアル

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第30話 恐怖の正体

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「ここが鉱山かぁ。男の作業場って感じだなぁ。
それに、鉱山なのに綺麗な魔法石がたくさんあるんだな。……奥は深いの?」

「この鉱山は地下2階まである。昔は小型の魔物もいたようだが、今はおらぬ。
ここで採れるのは、単なる鉱石や魔法石だけではない。
稀に“セルリア”と呼ばれる鉱石も採れるようだな。
セルリアは国が指定する特定鉱石で、
一般の作業員が採掘した場合、必ず国へ献上する決まりになっている。
それが、この国の重要な収入源の一つだ」

「へぇ……セルリアって、何?」

「知らんのか? なら、エマに聞いてみろ」

「……エマちゃーん。もしよかったら、セルリアって何か教えてくれませんかー?」

【…………】

「やっぱりダメか。相変わらず一方通行だなぁ」


鉱山の洞窟内には、トロッコに積まれた鉱石や、掘りかけの岩が残されていた。
いかにも作業現場といった雰囲気だ。
ロウキに鉱山について尋ねると、稀に採れるというセルリアの存在を教えてくれた。
だけど、その正体は俺にも分からない。
ダメ元でエマに問いかけてみたものの、反応はない。
……やっぱりか。そう思いながら探索を続けていた。その時だった。


【検索完了:セルリアとは、この世界で採掘される鉱石の一つです。
武具や防具の製作には、銅、鉄、そして鉄を精錬して作られる鋼鉄が一般的に用いられます。
しかし、その上位に位置するのが、青空のような輝きを持つ鉱石——セルリアです。
セルリアは非常に軽量でありながら、強度は鋼鉄をはるかに上回ります。
世界でも極めて希少な鉱石のため、一般住民が使用することはありません。
貴族、王族、あるいはSランク冒険者など、選ばれた者にのみ与えられる鉱石です】

「……どういうタイミングで起動したんだか。
でも、教えてくれてありがとうエマ」


まさか答えてくれるとは思っていなかった。
異世界の知識が皆無な俺にとって、エマは本当にありがたい存在だ。
ふと見ると、ロウキたちがなぜかうんうんと頷いている。


「さすがエマだな。正確な知識だ」

「え?! ……聞こえたの?」

「俺にも聞こえたぜ」

「ワフッ!」

「おそらく、お前との契約によって魂が結びつき、エマの声も共有されるようになったのだろう」

「……時間差でそんなこと起きるんだ。すごすぎない?」

「まぁ、細かいことはいい。鉱石や魔法石を見つけたら、とりあえず鞄に入れておけ」


まさかエマの声が皆にも聞こえるようになるなんて。
俺は驚いていたけど、ロウキたちは至って冷静だった。
……この世界で生きていると、少々のことでは動じなくなるのかもしれない。
心臓には、その方が優しいな。そう思いながら、鉱山の奥へと進んでいった。


「……随分静かだな。魔物も人もいないってなると、逆に落ち着かない」

「この階は何もなさそうだな! 地下2階に行こうぜ!」

「気配は感じるが……ここではない。やはり下だな」

「俺も、下の方から何か感じる……」


地下1階は、怖いほど静まり返っていた。気配はある。
だけど、この場所じゃない。俺たちは、そのまま地下2階へと向かった。
——何だろう。胸の奥が、ぎゅっと締め付けられるような感覚。
地下2階へ降りた瞬間、気配は一気に濃くなった。


ゴゴゴゴゴゴ——
ガタガタガタッ——


「?!」

「地震?!」

「地鳴りだ! 気を付けろ! 奴は地面の下にいる!」

「えええっ?! 地面のなかぁぁぁぁっ?!」


地面が激しく揺れ、足元が不安定になる。
天井から砂や小石が降り注ぎ、洞窟全体が悲鳴を上げている。
ロウキの声に従い視線を落とすと、少し先の地面が、ゆっくりと割れていった。

——次の瞬間。


「グオオオオオォォォォォッ!!!」

「ぎゃあああっ!! なんか出たーーー!!」

「やかましい!」

【警告:暴走した魔獣を感知。注意して下さい】


巨大な顎、鋭い爪。青く輝く鉱石の鱗に覆われた体。金色に光る双眼。
現れたのは、鉱石を纏ったドラゴンだった。


「セルリアドラゴンだ! 注意するのだ! 物理攻撃は通用せん!」


ロウキが前に出て叫ぶ。


「クロ! ユキ! 中級以上の魔法で攻撃しろ!
ただし派手なものは避けろ、洞窟が崩れる!
内部に直接届く魔法だ! ミルはヨシヒロを護れ!」

「はいよっ!」

「ワオオオオンッ!」

「あるじ、さがってて」

「黒雷《ブラックライトニング》!」

「ワオオオオンッ!!(メテオーー!!)」


ガギィィィンッ!!


直撃——だけど、完全には通らない。
それでも一瞬、動きが止まった。その隙を逃さず、ロウキが踏み出す。


「おとなしく地に戻れ! 神槍《ゴッドランス》——!」

「グギャアアアアァツ!!」

「……ちょっと待って、ロウキ」

「何を言っている! 油断するな、喰われるぞ!」

「違う! あいつ……苦しんでる!」

「攻撃を受けたのだ。苦しくて当然だろう!」

「違う! それだけじゃない!
……もう攻撃しないで!」


俺が感じたのは、痛みじゃない。心の叫びだった。
このままじゃ——殺される。
そう思った瞬間、俺はミルの影から飛び出していた。


「待って主! 結界、追加する!」

「ありがとう、クロ!」


俺は、深呼吸をしたあと、ゆっくりとセルリアドラゴンの前に立った。


「……どうすれば、救ってあげられる?」

「グルルル……」


「怖かったよな。急に目覚めて、大勢に囲まれて、攻撃されて……ごめんな」


声を落ち着かせて話しかけると、
殺気に満ちていた尻尾が、ゆっくりと下がっていく。


「俺には分からないことだらけだけど……
苦しい理由、教えてくれ。少し、触れてもいいか?」


俺の問いかけに、セルリアドラゴンは沈黙したまま。
だけど、今ここで引き返すわけにはいかないと思った。
城の記憶を見ることが出来たときのように、そっと触れた、その瞬間。

ズキンッと頭が痛くなり、記憶がゆっくりと流れ込んできた。

はるか昔、守護竜として生まれ、危険な魔物や極悪な人間を排除し、この鉱山を護ってきたこと。
偉大な魔法使い——クロの前の主と契約を交わしたこと。
主が逝去し、長い眠りについたこと。
そして、俺が湖を浄化したことで目覚めてしまい、力が暴走して人々を襲ってしまったこと。


「セルリアドラゴン……お前は、襲いたくて襲っていたわけじゃないんだな。
急に目覚めて、どうすればいいか分からなくなってたんだな……
……俺が癒してみせるよ。
——Angelic Hand(アンジェリックハンド)!」


まだ正しい使い方も分かっていないAngelic Hand。
だけど、これを使うのが一番だと思ったんだ。
掌が熱くなり、光がセルリアドラゴンの体を包み込んでいった。
この力で、少しでもセルリアドラゴンの心と体を癒せるなら、それでいい。
そう、心からそう思っていた。

「もう、大丈夫だよ。大丈夫だから」

【警告解除:セルリアドラゴン、敵対行動を停止。
追撃の必要性を棄却します】


俺が声をかけたあと、エマがセルリアドラゴンが落ち着いたことを報告してくれた。
これで、ひとまず暴れる心配はないかな。
そう思うと同時に肩の力が一気に抜けていった——
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