従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々

ソラリアル

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第31話 ごめんね…だけど、よろしくね

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「……吾輩を呼んだのは、お主か」

「……ああ。もう、大丈夫か?」

「お主は……あの魔法使いの末裔か?」

「いや、俺はあの人の領地を継いだ、ただの人間だよ。転生者だけどな」

「そうか……空気が、よく似ておるな」


Angelic Handを使用してしばらくすると、
セルリアドラゴンの瞳は、先ほどより澄んだ金色へと変わり、俺に話しかけてきた。
心なしか、セルリアでできた鱗の発色も良くなり、
まるで青空のような美しい色になった気がする。


「長き眠りの中で、どうやら吾輩は己を失っておったようだ。
お主の温もりに触れ、ようやく正気に戻れた。感謝する。
吾輩は、古よりこの鉱山を守護する守護竜として、この地に住んでおった。
眠りから覚めた今、再び守護竜として在ることを望む。……だが」

「何か、困っていることでもあるのか?」

「あの日、あの魔法使いが逝去してから、永い眠りにつく覚悟を決めた。
もう目覚めることはないだろうとな……
しかし、お主のおかげで再び目を覚ますことができた。
再びこの世界を見ることができることに、この上ない喜びを感じておる。
お主には、感謝してもしきれぬ。
だから――お主と契りを交わしたい。
守護の地を離れるわけにはいかぬが、力になれることもあろう。
そして、必要とあらばセルリアも惜しみなく提供しよう」

「セルリアとか、正直よく分かんないけどさ……
……俺と、友達になってくれない?」


正気に戻ったセルリアドラゴンは、目覚めたことを心から喜んでいるようだった。
そして、俺と契約を交わしたいと言ってくれた。
それはつまり、従魔になるということだよな。

……でも、だ。
この地を護る守護竜を、従魔にするわけにはいかない。
だから俺は、少し考えてから、素直な気持ちを口にした。

するとセルリアドラゴンは、とても優しい目で笑い、少し俯きながら静かに言った。


「友達、か……不思議な響きよな。
吾輩のような者と、友達か……」

「え?  ダメ?
でも従魔となる、とは違うよね?
力を貸してくれるドラゴンが友達って、良くない?」

「お前……どこまでも能天気な奴だな……」

「主らしいけどなー!」

「あるじ、いいにんげん」

「ワオンッ!」


「友達」という言葉に、セルリアドラゴンは「不思議な響きだ」と言って、少し微笑んだ。
そんな俺の発言に、ロウキは呆れ、クロやミル、ユキは何だか楽しそうに笑っている。

……俺、変なこと言ったかな?
でも、従魔にするのとは何か違う気がしたんだ。
そうなると、友達以外に何があるんだよ。

それがダメなら……と、ふと思いついて、俺は言葉を続けた。


「え? ダメ?
あ、じゃあ名前! 名前を決めよう!
それなら、良くない?」

「馬鹿め……名を与えるということが、従魔契約だろうが……」

「あ、そうか……
でもさ、セルリアドラゴンって呼びにくいし!
短くして“セドラ”とか、いいじゃん?」

「あ……」
「あ……」
「あ……」
「ワフッ……」

「……え?」

「お前は本当に、どんくさい奴だな……
名を決めて呼ぶなど、有り得んぞ……」

「え?」

「どうやら吾輩は、“セドラ”という名になったようだな。
……気に入ったぞ」

「え、え、嘘……?!
もしかして、今ので契約成立したとか言わないよな?!」

「するだろう、普通……」

「嘘でしょ?!
え、なんか詠唱みたいなのしてないじゃん?!」

「詠唱など不要だ。
その者を想い、名を呼べば契約は成立する。馬鹿者」

「えええっ?!
ど、どうしよう?! 解除! 解除の方法を!」


俺は、本当に何も考えていなかった。
ただ、長い名前を短くしたら呼びやすいかな、と思っただけなのに。
どうやら、それだけでも従魔契約は成立してしまうらしい。

こうして、セルリアドラゴンは“セドラ”という名を得て、俺の従魔となってしまった。
俺の行動に、さすがのロウキも頭を抱えている。

慌てて契約解除の方法を探そうとしていると、
セドラは柔らかな声で、俺に語りかけてきた。


「よい。吾輩は“セドラ”という名を気に入っておる。
それに、元より契りを交わすつもりであっただろう?
気にするでない。
他の者たちのように共に旅はできぬが、
問いかけてくれるなら、それに応えよう。
いつでも吾輩を呼ぶがよい」

「いや……なんか、ごめん……
でも、友達ってのは嘘じゃないから!
こうなったら、よろしくな! セドラ!
俺はヨシヒロだ!」

「ヨシヒロか……良い名だ。
吾輩の名はセドラ。
これより先、お主の力になると誓おう」


この状況は正直マズいと思っていた。
でも、セドラはそれを受け入れ、名前を気に入ったと言ってくれた。

申し訳なさでいっぱいだった俺の頭を、
セドラはその長い尻尾で、優しくポンポンと撫でてくれた。


「ヨシヒロよ。お主は面白いのう。
そういえば、吾輩と従魔契約したことで、能力の一部が継承されたぞ。
存分に使うがよい」

「え?  能力って?」

「“セルリアン・バリア”と言ってな。
自身だけでなく、仲間全体にも展開できる結界じゃ。
多少の攻撃では揺るがぬ。安心して戦闘に立てるぞ。
もう1つ、"セルリアン・ドーム"というのもあるが、
通常はセルリアン・バリアで問題なかろう」

「結界?!  便利ー! それは嬉しいなぁ!
……あ、でも俺、戦闘のないのんびり生活がしたいんだけど」

「馬鹿め。
この従魔の数で、のんびり暮らせると思っておるのか。
その結界があれば、ミルがいたダンジョン以上の場所にも行けるな」

「ダンジョン楽しみだなぁ!
主が死なないなら、それでいいよ!」

「たのしみ!」

「ワフッ!」

「……え、嫌ですけど?」


強力な結界を得られたのは正直ありがたい。
だって俺は素人だからな。確実に死んじゃう。

……だからこそ、のんびりスローライフを送りたいと言ったら、
ロウキに鼻で笑われた。

どうやったら回避できるか。
今のうちに考えておこう。
そう、心に誓った――








冒険者ギルド―


「……というわけで、もう鉱山は安全です。
ちゃんとセドラの住処も作り直しましたし、
よっぽど悪さをする悪党や魔物が来ない限り、
セドラが手を出すことはありません。安心してください!」

「お前……なんつーことを……」

「馬鹿だろう?
だが、あのドラゴンはコイツのそういうところに救われたのだ」

「鉱山に守護竜がいるって話は聞いたことがあったが……
まさか本当に存在して、しかもヨシヒロの従魔になるとはな……
完全に言い伝えだと思ってたぜ」


あれからセドラと少し話をして、
「持って帰れ」と言われたセルリアが、鞄の中に入っていた。

そのまま王都へ戻り、ガーノスさんに今回の出来事を報告すると、
ガーノスさんは大きなため息を吐き、顔を両手で覆った。

結構バカなことをやっちゃった自覚はあったけど、
ここまで呆れられるとは思っていなかった……


「いやぁ……ほんと、俺が軽率に名前を呼んじゃったのが原因なんですけどねぇ……
でもその結果、ドラゴンの友達ができました!
めっちゃカッコいいですよ、セドラ!」

「カッコいいとか、かっこ悪いとかの問題じゃねぇだろ……
これはアーロンにも報告が必要な案件だ。
悪いが、今から一緒に来てくれ。
ロウキたちは、しばらくここで休んでてくれ。
行くぞ、ヨシヒロ!」

「……分かりましたぁ……」

「俺とユキは付いて行くぜ!」

「ワオオンッ!」


このまま報告して帰れると思っていたけど、
どうやらそれは大きな間違いだったらしい。

アーロンさんにも直接報告が必要だと言われ、
俺はクロとユキと共に、再び王城へ向かうことになった。

確かにセルリアの件は報告義務があるから仕方ないとは思うけど……
こういうの、ギルドからまとめて献上してくれてもよくないか?

そんなことを考えながら、
俺はギルド専用の馬車に乗り込み、王城へと向かった。

あそこに行くと変に緊張するし、
他にもたくさん人が出てくるから苦手なんだよなぁ。
やっぱり王家の人たちと関わるのって、
気を使うし、ちょっと大変なんだよな。

そう思いながら、馬車の窓から見えてくる王城を見上げていた――
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