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第42話 ゲートで帰宅。ラピスへの想い
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ギルド別館―
「今日は、そんなことがあったのか。
海岸でよく魔法の練習をしてる連中だろ?」
夕食を囲みながら話を聞いたガーノスさんは、深く息をついた。
「遅咲きで魔法が使えるようになって、浮かれてるのかもしれんな。
だが、無駄に魔法を振り回すだけで制御も下手だ。
的にも当たらねぇし、2人じゃ魔物討伐もできねぇ。
しかも性格が悪くて、誰もパーティを組みたがらない連中だ」
そう言ってから、スライムたちへ視線を向ける。
「……スライムくんたちには、怖い思いをさせて悪かったな。
だがよ、ここにいる限り安心していい。
こいつは――絶対に、お前たちを護ってくれる」
「……」
「ガーノス師匠、ありがとう」
「おお?
ラピス、お前、俺のことを“師匠”って呼んでくれるのか?」
「ギルドの頂点ですから。
師匠みたいに、ちゃんと頂点に立って、みんなを護りたいです」
「そうかそうか!
お前なら大丈夫だ、ラピス!
その気持ちが、何より大事なんだからな!」
ギルド別館で夕食を取りながら、俺たちは今日あった出来事を一通り話した。
ガーノスさんの話から、あの魔導士2人がかなり問題のある存在だということも分かった。
魔法が使えるようになって嬉しい気持ちは、分からなくもない。
でも、だからといって、あんな使い方をしていいわけじゃない。
力を持ったなら――
それを、どう使うかが一番大事なんだ。
そんなことを考えていると、
ガーノスさんはあの二人に代わって、スライムたちに頭を下げてくれた。
ラピスはガーノスさんの事を師匠なんて呼んじゃって。
誰かを護れる存在になりたいと、そう思ったらしい。
……健気だなぁ、本当に。
そう思いながら、穏やかな時間の中で食事を楽しんだ。
ラピスの想い。
どうか、あの子たちにちゃんと届いてほしいな――
◇
「それじゃあ、今日はありがとうございました!
さっそくゲートで帰ります!」
「ああ!
こちらこそ、楽しい食事をありがとな。
また近いうちに会って、飯でも食おうぜ!」
「ありがとうございます!
それじゃあ、おやすみなさい!」
「またな!」
食事を終え、片づけを手伝ってから、帰り支度を整える。
気がつけば、もう二時間ほど経っていた。
そして――
いよいよ、初めての転移ゲートでの帰宅。
完成した時に覗いたことはあったけど、
実際に使うのはこれが初めてだ。
……正直、ちょっと怖い。
ロウキたちが通った時は、何ともなかったよな?
そう自分に言い聞かせながら、意を決してゲートに足を踏み入れた。
「……本当に、帰れた……」
「作った時に、見ただろうが?」
「見たけどさ。実感がわかなくて……
いやぁ、これは本当に便利なもの作ったなぁ」
そう言って、スライムたちに声をかける。
「スライム君たち。
ここが、俺たちの家だよ。
好きな場所で、自由に過ごしてね」
恐る恐る進んだ先にあったのは、
間違いなく、俺たちの家だった。
……もしかして、俺って結構すごいことしてる?
そんなことを思いながら、
四匹のスライムをそっと地面に下ろす。
すると、周囲に散らばっていたスライムたちが次々と姿を現し、
新しい仲間を迎えるように、ぴょんぴょんと跳ねながら集まってきた。
カラフルで、賑やかで――
ただ見ているだけで、心が癒される光景だった。
「やっぱり……一緒がいいよなぁ」
「良かったな! ラピス!」
「全員、無事に戻れて……本当に良かったですね!」
「はい!
クロちゃん、ユキちゃん、ミルくんも、ありがとう!」
「よかったね。ここなら、あるじがいるから……あんしん」
再会を喜ぶスライムたちを見て、
クロたちはラピスに「良かったね」と声をかけた。
魔物同士で、こんなふうに言葉を交わし合える。
それって、すごいことなんじゃないだろうか。
魔物は、本能のままに生きる存在だって思っていたから。
自分が生きるだけで精一杯で、
他者を気遣う余裕なんて、ないのかもしれない。
それでも――
こうして、互いのために動ける。
……素敵じゃないか。
「ヨシヒロ様……
本当に、ありがとうございます。
僕は、このご恩に報いるために、
生涯あなたの側で、微力ながらお力になれたらと思います」
「なんで、そんなにかしこまってるんだよ。
もう家族じゃん、俺たち」
そう言って、肩をすくめる。
「家族が困ってる時は、助け合うのが当たり前だろ?
だからさ、これからは、元気に過ごしてくれたら、それでいい」
「ヨシヒロ様……」
予想もしなかった言葉に、ラピスは俯いて、小さく笑った。
この子たちにとって、人間は、ずっと“脅威”でしかなかったはずだから。
だからこそ――
少しでも、その傷が癒えてくれたらいい。
そのためにも。この子たちは、絶対に護る。
俺は、改めてそう強く決意した――
◇
魔物管理室―
「ひび割れはしてるけど……出てくる気配はないな」
「だが、鼓動はちゃんと聞こえる。
今のところ、問題はないだろう」
「ヨシヒロ様……ごめんなさい。
僕が、あの時飛び跳ねちゃったから……」
「あの時はラピスも大変だったんだ。もう気にしなくていいよ」
その日の夜、俺たちは風呂上がりに魔物管理室へ立ち寄っていた。
ラピスが飛び跳ねた拍子にひびが入ってしまった卵は、
確かに鼓動はしているものの、まだ孵る気配はない。
……本当に、大丈夫なんだろうか。
そんな不安が、じわじわと胸に広がってくる。
ラピスも、自分のせいで卵に影響が出たのではないかと、
悲しそうな表情で何度も謝っていた。
でも――
ラピスにも、そうならざるを得ない事情があった。
責める理由なんて、どこにもない。
「それにしても……
なんで、この卵二つは鑑定できないんだろうな?」
「この卵からは、魔法の力を感じる。
あの魔法使いが、詮索されないように何か細工をしていた可能性もあるな」
「あー……それはありそう。
よっぽど貴重な卵か、どうしても護りたかった卵か……
どっちにしても、もうひび割れちゃったんだからさ。
早く出ておいで? 待ってるから」
ラピスが心配しているのが分かるから、
少しでも安心してほしくて。
いつもなら、何かあったら怖くて触れられなかったけど、
今日は卵に声をかけながら、そっと手をかざし、優しく撫でてみた。
触れなくても、命の鼓動は感じられる。
でも、こうして近づくと――
その鼓動が、よりはっきり伝わってくる気がした。
……大丈夫。
ちゃんと、生きてる。
生きようとしてくれてるんだよな。
「じゃあ、また明日な。卵ちゃん。」
しばらく撫でたあと、俺たちは一階へ戻り、
厨房の冷蔵庫からアイスを取り出して、夜風に当たりながら食べた。
風呂上がりのアイスって、なんでこんなにうまいんだろうな。
ジュースを凍らせただけなんだけど、
氷魔法って、本当に便利だ。
そんなことを考えながら、
これからのことに思いを巡らせていた。
「主……まだ、あの子たちを従魔にしなくてもいいのか?」
「うーん……
今、無理やり従魔になってもらうのは、ちょっと違うかな」
アイスをかじりながら、正直な気持ちを話す。
「今は安全な場所に来て、少しは安心してくれてると思うし。
あとはあの子たちが、“俺を許せる”って思ってくれたら、それでいい」
「そっかー……。主は、ほんと良い奴なのになぁ!」
「そうですね。
あるじさまは命を平等に大切にされる、とても慈悲深いお方です。
きっと、いつか分かってもらえますよ。」
「あるじ、すき。」
「や、やめろやめろ!
急に言うな、恥ずかしいだろ!」
明日からどうするか考えていると、
あの4匹のスライムを従魔にしなくてもいいのかと尋ねてきた。
クロたちからすれば、早く従魔になっていた方が安全だと考えてくれているんだろう。
だからこそ、俺は今の気持ちを正直に話した。
すると、みんなが口々に俺を褒め始める。
……さすがに、これは照れる。
褒め殺しはやめてくれ。
そんな俺の様子を見て、ロウキはフンッと鼻を鳴らし、どこか満足そうにニヤついていた。
俺の隣では、ラピスが周囲をうろちょろするスライムたちを眺めて、
嬉しそうにしている。
……これが、“群れの長”なんだろうか。
体は小さいけど、仲間を護りたいという想いは、とてつもなく大きい。
たとえ自分が危険な目に遭っても、その気持ちは、きっと揺るがない。
そんなラピスを、俺は心から誇りに思う。
だから、たくさんいるスライムたちを護れるように。
弱い俺でも、護れる何かを掴まなきゃいけない。
そんなふうに思っていた――
「今日は、そんなことがあったのか。
海岸でよく魔法の練習をしてる連中だろ?」
夕食を囲みながら話を聞いたガーノスさんは、深く息をついた。
「遅咲きで魔法が使えるようになって、浮かれてるのかもしれんな。
だが、無駄に魔法を振り回すだけで制御も下手だ。
的にも当たらねぇし、2人じゃ魔物討伐もできねぇ。
しかも性格が悪くて、誰もパーティを組みたがらない連中だ」
そう言ってから、スライムたちへ視線を向ける。
「……スライムくんたちには、怖い思いをさせて悪かったな。
だがよ、ここにいる限り安心していい。
こいつは――絶対に、お前たちを護ってくれる」
「……」
「ガーノス師匠、ありがとう」
「おお?
ラピス、お前、俺のことを“師匠”って呼んでくれるのか?」
「ギルドの頂点ですから。
師匠みたいに、ちゃんと頂点に立って、みんなを護りたいです」
「そうかそうか!
お前なら大丈夫だ、ラピス!
その気持ちが、何より大事なんだからな!」
ギルド別館で夕食を取りながら、俺たちは今日あった出来事を一通り話した。
ガーノスさんの話から、あの魔導士2人がかなり問題のある存在だということも分かった。
魔法が使えるようになって嬉しい気持ちは、分からなくもない。
でも、だからといって、あんな使い方をしていいわけじゃない。
力を持ったなら――
それを、どう使うかが一番大事なんだ。
そんなことを考えていると、
ガーノスさんはあの二人に代わって、スライムたちに頭を下げてくれた。
ラピスはガーノスさんの事を師匠なんて呼んじゃって。
誰かを護れる存在になりたいと、そう思ったらしい。
……健気だなぁ、本当に。
そう思いながら、穏やかな時間の中で食事を楽しんだ。
ラピスの想い。
どうか、あの子たちにちゃんと届いてほしいな――
◇
「それじゃあ、今日はありがとうございました!
さっそくゲートで帰ります!」
「ああ!
こちらこそ、楽しい食事をありがとな。
また近いうちに会って、飯でも食おうぜ!」
「ありがとうございます!
それじゃあ、おやすみなさい!」
「またな!」
食事を終え、片づけを手伝ってから、帰り支度を整える。
気がつけば、もう二時間ほど経っていた。
そして――
いよいよ、初めての転移ゲートでの帰宅。
完成した時に覗いたことはあったけど、
実際に使うのはこれが初めてだ。
……正直、ちょっと怖い。
ロウキたちが通った時は、何ともなかったよな?
そう自分に言い聞かせながら、意を決してゲートに足を踏み入れた。
「……本当に、帰れた……」
「作った時に、見ただろうが?」
「見たけどさ。実感がわかなくて……
いやぁ、これは本当に便利なもの作ったなぁ」
そう言って、スライムたちに声をかける。
「スライム君たち。
ここが、俺たちの家だよ。
好きな場所で、自由に過ごしてね」
恐る恐る進んだ先にあったのは、
間違いなく、俺たちの家だった。
……もしかして、俺って結構すごいことしてる?
そんなことを思いながら、
四匹のスライムをそっと地面に下ろす。
すると、周囲に散らばっていたスライムたちが次々と姿を現し、
新しい仲間を迎えるように、ぴょんぴょんと跳ねながら集まってきた。
カラフルで、賑やかで――
ただ見ているだけで、心が癒される光景だった。
「やっぱり……一緒がいいよなぁ」
「良かったな! ラピス!」
「全員、無事に戻れて……本当に良かったですね!」
「はい!
クロちゃん、ユキちゃん、ミルくんも、ありがとう!」
「よかったね。ここなら、あるじがいるから……あんしん」
再会を喜ぶスライムたちを見て、
クロたちはラピスに「良かったね」と声をかけた。
魔物同士で、こんなふうに言葉を交わし合える。
それって、すごいことなんじゃないだろうか。
魔物は、本能のままに生きる存在だって思っていたから。
自分が生きるだけで精一杯で、
他者を気遣う余裕なんて、ないのかもしれない。
それでも――
こうして、互いのために動ける。
……素敵じゃないか。
「ヨシヒロ様……
本当に、ありがとうございます。
僕は、このご恩に報いるために、
生涯あなたの側で、微力ながらお力になれたらと思います」
「なんで、そんなにかしこまってるんだよ。
もう家族じゃん、俺たち」
そう言って、肩をすくめる。
「家族が困ってる時は、助け合うのが当たり前だろ?
だからさ、これからは、元気に過ごしてくれたら、それでいい」
「ヨシヒロ様……」
予想もしなかった言葉に、ラピスは俯いて、小さく笑った。
この子たちにとって、人間は、ずっと“脅威”でしかなかったはずだから。
だからこそ――
少しでも、その傷が癒えてくれたらいい。
そのためにも。この子たちは、絶対に護る。
俺は、改めてそう強く決意した――
◇
魔物管理室―
「ひび割れはしてるけど……出てくる気配はないな」
「だが、鼓動はちゃんと聞こえる。
今のところ、問題はないだろう」
「ヨシヒロ様……ごめんなさい。
僕が、あの時飛び跳ねちゃったから……」
「あの時はラピスも大変だったんだ。もう気にしなくていいよ」
その日の夜、俺たちは風呂上がりに魔物管理室へ立ち寄っていた。
ラピスが飛び跳ねた拍子にひびが入ってしまった卵は、
確かに鼓動はしているものの、まだ孵る気配はない。
……本当に、大丈夫なんだろうか。
そんな不安が、じわじわと胸に広がってくる。
ラピスも、自分のせいで卵に影響が出たのではないかと、
悲しそうな表情で何度も謝っていた。
でも――
ラピスにも、そうならざるを得ない事情があった。
責める理由なんて、どこにもない。
「それにしても……
なんで、この卵二つは鑑定できないんだろうな?」
「この卵からは、魔法の力を感じる。
あの魔法使いが、詮索されないように何か細工をしていた可能性もあるな」
「あー……それはありそう。
よっぽど貴重な卵か、どうしても護りたかった卵か……
どっちにしても、もうひび割れちゃったんだからさ。
早く出ておいで? 待ってるから」
ラピスが心配しているのが分かるから、
少しでも安心してほしくて。
いつもなら、何かあったら怖くて触れられなかったけど、
今日は卵に声をかけながら、そっと手をかざし、優しく撫でてみた。
触れなくても、命の鼓動は感じられる。
でも、こうして近づくと――
その鼓動が、よりはっきり伝わってくる気がした。
……大丈夫。
ちゃんと、生きてる。
生きようとしてくれてるんだよな。
「じゃあ、また明日な。卵ちゃん。」
しばらく撫でたあと、俺たちは一階へ戻り、
厨房の冷蔵庫からアイスを取り出して、夜風に当たりながら食べた。
風呂上がりのアイスって、なんでこんなにうまいんだろうな。
ジュースを凍らせただけなんだけど、
氷魔法って、本当に便利だ。
そんなことを考えながら、
これからのことに思いを巡らせていた。
「主……まだ、あの子たちを従魔にしなくてもいいのか?」
「うーん……
今、無理やり従魔になってもらうのは、ちょっと違うかな」
アイスをかじりながら、正直な気持ちを話す。
「今は安全な場所に来て、少しは安心してくれてると思うし。
あとはあの子たちが、“俺を許せる”って思ってくれたら、それでいい」
「そっかー……。主は、ほんと良い奴なのになぁ!」
「そうですね。
あるじさまは命を平等に大切にされる、とても慈悲深いお方です。
きっと、いつか分かってもらえますよ。」
「あるじ、すき。」
「や、やめろやめろ!
急に言うな、恥ずかしいだろ!」
明日からどうするか考えていると、
あの4匹のスライムを従魔にしなくてもいいのかと尋ねてきた。
クロたちからすれば、早く従魔になっていた方が安全だと考えてくれているんだろう。
だからこそ、俺は今の気持ちを正直に話した。
すると、みんなが口々に俺を褒め始める。
……さすがに、これは照れる。
褒め殺しはやめてくれ。
そんな俺の様子を見て、ロウキはフンッと鼻を鳴らし、どこか満足そうにニヤついていた。
俺の隣では、ラピスが周囲をうろちょろするスライムたちを眺めて、
嬉しそうにしている。
……これが、“群れの長”なんだろうか。
体は小さいけど、仲間を護りたいという想いは、とてつもなく大きい。
たとえ自分が危険な目に遭っても、その気持ちは、きっと揺るがない。
そんなラピスを、俺は心から誇りに思う。
だから、たくさんいるスライムたちを護れるように。
弱い俺でも、護れる何かを掴まなきゃいけない。
そんなふうに思っていた――
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